胎児循環の秘密 〜臍静脈が最も酸素豊富〜
看護師国家試験 第108回 午前 第6問 / 必修問題 / 人体の構造と機能
国試問題にチャレンジ
胎児循環で酸素を最も多く含む血液が流れているのはどれか。
- 1.肺動脈
- 2.肺静脈
- 3.臍動脈
- 4.臍静脈
対話形式の解説
博士
今日は胎児循環について学ぶぞ。成人の循環とは大きく異なる特殊な仕組みじゃ。
アユム
胎児はお腹の中で肺呼吸してないですよね?
博士
その通り。胎児の肺は水で満たされていて機能しておらず、酸素と栄養は全て胎盤から供給される。そのために胎児特有の3つの短絡(シャント)があるんじゃ。
アユム
3つの短絡って?
博士
静脈管(アランチウス管)、卵円孔、動脈管(ボタロー管)の3つじゃ。これらは胎児期にだけ存在し、出生後に閉鎖する。
アユム
詳しく教えてください!
博士
まず胎盤で酸素化された血液が臍静脈を通って胎児に入る。臍静脈→静脈管→下大静脈→右心房という流れじゃ。
アユム
右心房から先は?
博士
右心房に入った血液の大部分は卵円孔を通って左心房へ行き、左心室から上行大動脈へ。これが脳や上肢を優先的に栄養する。
アユム
右心室からは?
博士
右心室からは肺動脈へ出るが、肺が機能していないから大部分は動脈管を通って下行大動脈へバイパスされる。これで下半身を灌流するんじゃ。
アユム
使い終わった血液はどうなるんですか?
博士
下半身を灌流した後、内腸骨動脈から分岐した2本の臍動脈を通って胎盤へ戻る。胎盤で二酸化炭素と老廃物を排出し、再び酸素化されるという循環じゃ。
アユム
つまり臍静脈が最も酸素豊富で、臍動脈が最も酸素少ないんですね!
博士
正解!選択肢4の臍静脈が正解じゃ。臍静脈の酸素飽和度は約80%と胎児循環で最も高い。
アユム
名前がややこしいですね。臍「動脈」なのに静脈血、臍「静脈」なのに動脈血…
博士
ここは国試でもよく引っかけになる。動脈・静脈の定義は「心臓からの方向」であって、中を流れる血液の種類ではないんじゃ。心臓から出ていくのが動脈、戻るのが静脈。肺動脈も肺へ向かうから動脈じゃが中身は静脈血、肺静脈は心臓に戻るから静脈じゃが中身は動脈血というのと同じ原理じゃ。
アユム
出生後はどうなるんですか?
博士
産声を上げて肺呼吸が始まると、肺血管抵抗が下がり肺血流が増える。これに伴い動脈管は48〜72時間で機能的閉鎖、卵円孔も同時期に閉鎖する。静脈管も閉鎖して肝円索になる。
アユム
閉鎖しないとどうなるんですか?
博士
動脈管開存症(PDA)や卵円孔開存(PFO)という先天性心疾患になる。PDAは未熟児に多く、インドメタシンやイブプロフェンで薬理学的閉鎖を図る治療があるんじゃ。
アユム
他の選択肢も確認させてください。1の肺動脈は右心室からの静脈血ですね。
博士
その通り。2の肺静脈は胎児期にはほとんど血液が流れておらず、ガス交換もされていないから酸素は少ない。3の臍動脈は最も酸素飽和度が低い血管じゃ。
アユム
胎児循環の仕組み、完璧に理解できました!ありがとうございました。
POINT
胎児循環では肺呼吸がないため、酸素は胎盤から臍静脈を通じて胎児に供給されます。臍静脈は胎児循環で最も酸素飽和度の高い血液(約80%)が流れる血管で、静脈管・卵円孔を経由して脳や上肢を優先的に灌流します。使い終わった血液は臍動脈(最も酸素が少ない)から胎盤へ戻る構造になっており、動脈管・卵円孔・静脈管の3つの短絡は出生後に閉鎖して成人循環へ移行します。名前の「動脈」「静脈」は心臓からの方向を指し、中を流れる血液の種類とは独立した概念である点に注意が必要です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:胎児循環で酸素を最も多く含む血液が流れているのはどれか。
解説:正解は4です。胎児は肺呼吸をしていないため、酸素と栄養は母体の胎盤から臍帯を通じて供給されます。臍帯には臍静脈1本と臍動脈2本が含まれ、臍静脈は胎盤で酸素化された動脈血を胎児に運ぶ血管で、胎児循環の中で最も酸素飽和度の高い血液(約80%)が流れています。この酸素化血は臍静脈→静脈管(アランチウス管)→下大静脈→右心房へ流入し、その大部分が卵円孔を通って左心房→左心室→上行大動脈へと送られ、脳や上肢を優先的に灌流します。一方、右心室からの血液は肺動脈へ送られますが、肺が機能していないため大部分は動脈管(ボタロー管)を通って下行大動脈へバイパスされ、下半身を灌流した後、臍動脈を経て胎盤へ戻ります。つまり臍動脈は胎児が使い終わった静脈血(老廃物と二酸化炭素を含む低酸素血)を運ぶ血管で、名前の「動脈」とは裏腹に最も酸素飽和度が低い点に注意が必要です。出生後は肺呼吸開始により卵円孔・動脈管・静脈管が閉鎖し、成人循環へ移行します。
選択肢考察
-
× 1. 肺動脈
胎児の肺動脈には右心室からの静脈血が流れていますが、肺が機能していないため大部分は動脈管を経て下行大動脈へバイパスされます。酸素飽和度は低めです。
-
× 2. 肺静脈
胎児期は肺呼吸をしていないため、肺静脈の血流はごくわずかで、しかも肺でのガス交換が行われていないため酸素化はほとんど行われていません。
-
× 3. 臍動脈
臍動脈は胎児から胎盤へ静脈血(使い終わった低酸素血)を運ぶ血管で、名前と役割が逆転しています。胎児循環で最も酸素飽和度が低い血管です。
-
○ 4. 臍静脈
臍静脈は胎盤で酸素化された動脈血を胎児へ運ぶ血管で、胎児循環で最も酸素飽和度が高い(約80%)血液が流れます。静脈という名前でも役割は動脈血の運搬です。
胎児循環の三大短絡(シャント):静脈管(アランチウス管、臍静脈→下大静脈)、卵円孔(右心房→左心房)、動脈管(ボタロー管、肺動脈→下行大動脈)。動脈管は出生後48〜72時間で機能的閉鎖、卵円孔も同時期に閉鎖し、2〜3か月で解剖学的閉鎖します。動脈管が開存したままの状態が動脈管開存症(PDA)で、インドメタシンで閉鎖を促す治療があります。名前の紛らわしさ:動脈=心臓から出る血管、静脈=心臓に戻る血管という定義で、動脈血・静脈血の酸素含量とは別概念です。肺動脈は静脈血、肺静脈は動脈血、臍動脈は静脈血、臍静脈は動脈血が流れる代表例です。
胎児循環の特殊性を理解し、臍静脈に最も酸素飽和度の高い血液が流れることを判別できるかを問うています。
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