ダイバーシティとは何か―個別性のある看護に欠かせない視点
看護師国家試験 第114回 午前 第34問 / 基礎看護学 / 看護の基本となる概念
国試問題にチャレンジ
患者の個別性を理解するために必要な概念はどれか。
- 1.ダイバーシティ
- 2.パターナリズム
- 3.プライマリヘルスケア
- 4.ソーシャルインクルージョン
対話形式の解説
博士
今日は紛らわしいカタカナ用語の整理じゃ。看護の場面で「個別性を尊重」とよく言うが、その根っこにある概念は何か知っておるかの?
アユム
個別性…一人ひとり違うという意味ですよね。それを表す言葉はダイバーシティでしょうか。
博士
正解じゃ。ダイバーシティは「多様性」と訳され、年齢・性別・人種・宗教・性的指向・障害の有無・文化的背景など、人の違いを認め尊重する考え方じゃ。
アユム
最近、企業でもダイバーシティ&インクルージョンって聞きますね。
博士
医療現場でも同じく重要な視点じゃ。例えば外国人患者の宗教的な食事制限、LGBTQ+の方への性別配慮、聴覚障害者への手話や筆談の用意…どれもダイバーシティの実践じゃよ。
アユム
対する選択肢のパターナリズムは何でしょう?
博士
父権主義と訳される。専門職が「あなたのためですよ」と本人の意思を確認せずに方針を決めてしまう姿勢のことじゃ。
アユム
それって、医師や看護師が良かれと思ってやることもありますよね。
博士
そうじゃ。だが現代医療ではインフォームド・コンセントや共同意思決定が重視され、パターナリズムは避けるべきとされる。患者の自己決定権を奪うことになるからな。
アユム
プライマリヘルスケアはどう違うんですか?
博士
これは1978年のアルマ・アタ宣言でWHOが提唱した、地域住民の主体的参加で健康を達成する世界戦略じゃ。「すべての人に健康を」というスローガンで、地域包括ケアの源流ともいえる。
アユム
ソーシャルインクルージョンも似た言葉ですね。
博士
社会的包摂、誰も排除しない社会づくりの理念じゃ。ダイバーシティと近いが、こちらは「社会の中でどう包み込むか」という社会全体の視点。個別の患者理解に直結する概念ではダイバーシティの方が適切じゃ。
アユム
意味を整理すると、ダイバーシティは「違いを認める」、インクルージョンは「違いを受け入れて包む」、と一対で覚えると分かりやすいですね。
博士
その通り。看護師は患者一人ひとりに合わせたケアを提供する専門職。ダイバーシティの視点を持つことが、質の高い個別性のある看護につながるんじゃ。
POINT
ダイバーシティとは多様性を意味し、年齢・性別・国籍・宗教・性的指向・障害の有無・文化的背景など人の持つあらゆる違いを認め尊重する考え方で、患者の個別性理解の基盤となる概念です。これに対しパターナリズムは専門職が患者の意思を確認せず一方的に決定する父権主義的姿勢を指し、現代医療では避けるべきとされます。プライマリヘルスケアはWHOがアルマ・アタ宣言で提唱した地域住民主体の包括的健康戦略、ソーシャルインクルージョンは誰も排除しない社会的包摂の理念で、いずれも保健医療の基本理念ですが個別性理解の概念とは焦点が異なります。看護師は患者一人ひとりの背景や価値観を尊重したケアを提供する専門職であり、ダイバーシティの視点を持つことが「その人らしさ」を支える看護実践の出発点となります。これらカタカナ用語は意味の混同が起きやすいため、定義と具体例をセットで整理しておくことが学習のコツです。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:患者の個別性を理解するために必要な概念はどれか。
解説:正解は 1 のダイバーシティである。ダイバーシティ(diversity)は「多様性」を意味し、年齢・性別・人種・宗教・性的指向・障害の有無・文化的背景・価値観など、人の持つさまざまな違いを認め合い尊重する考え方を指す。看護では、目の前の患者をひとくくりに「同じ疾患を持つ患者」として扱うのではなく、その人固有の生活歴や価値観・文化的背景を理解した上でケアを提供することが求められる。これが「個別性のある看護」の基盤となる概念である。
選択肢考察
-
○ 1. ダイバーシティ
多様性を意味し、個々の違いを尊重して受け入れる概念。患者の個別性を理解する基盤となる。
-
× 2. パターナリズム
父権主義のことで、専門職が患者の意思を確認せず「本人のため」と判断して一方的に方針を決める姿勢を指す。インフォームド・コンセントの理念とは対立する考え方で、現代医療では避けるべきとされる。
-
× 3. プライマリヘルスケア
1978年のアルマ・アタ宣言で提唱された、すべての人々の健康を地域住民の主体的参加によって達成しようとするWHOの戦略。健康権・地域包括的アプローチを基盤とする概念である。
-
× 4. ソーシャルインクルージョン
社会的包摂を意味し、誰も排除されることなく社会の一員として支え合うという理念。多様性を社会の中でどう包摂するかという視点で、ダイバーシティと近接するが、個人の個別性理解に直結する概念ではない。
現代の看護では、個別性のあるケア提供のためにダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の視点が重視されている。例えば外国人患者への通訳者の手配、宗教的食事制限への配慮、LGBTQ+の患者への性別に配慮した対応、聴覚障害者へのコミュニケーション支援などが具体例である。一方、対立概念としてのパターナリズムは医療不信の温床となるため、現代では患者中心のケア(patient-centered care)や共同意思決定(shared decision making)が重視されている。これらのカタカナ用語は意味が混同しやすいため、定義と具体例をセットで覚えると整理しやすい。
看護におけるカタカナ用語の定義理解を問う問題。多様性を尊重するダイバーシティが個別性理解の基盤概念であることを押さえる。
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