高齢者と薬:肝血流が落ちるとなぜ薬が効きすぎるのか
看護師国家試験 第109回 午前 第52問 / 老年看護学 / 高齢者の健康
国試問題にチャレンジ
老化による身体機能の変化と薬物動態への影響との組合せで正しいのはどれか。
- 1.血中蛋白の低下 -------- 薬効の減少
- 2.腎血流量の低下 -------- 薬効の減少
- 3.肝血流量の低下 -------- 薬効の増大
- 4.消化機能の低下 -------- 薬効の増大
対話形式の解説
博士
今回は高齢者の薬物動態を学ぶぞ。国試でも臨床でも超頻出テーマじゃ。
アユム
薬物動態って、ADMEのことですよね。吸収・分布・代謝・排泄。
博士
その通り。まずは基本の整理から始めよう。薬は体内に入り、吸収されて血中に入り、全身に分布し、肝で代謝され、腎から排泄される。
アユム
加齢でそれぞれどう変わるんでしょうか。
博士
吸収は消化管運動・血流の低下でTmaxが遅くなる。分布はアルブミン低下で遊離型が増え、体脂肪増加で脂溶性薬物の作用が遷延する。
アユム
代謝と排泄は?
博士
代謝は肝血流量・肝細胞数・酵素活性の低下でクリアランスが落ちる。排泄は腎血流量・GFRの低下で腎排泄型薬物がたまりやすくなる。
アユム
つまり肝機能も腎機能も下がると、薬がたまって効きすぎるということですね。
博士
その通り!では選択肢を検討しよう。1の「血中蛋白低下=薬効減少」はどうじゃ。
アユム
えっと、アルブミンが減ると結合型が減って遊離型が増える…遊離型だけが作用するから、薬効は増えるはずです。
博士
完璧な理解じゃ。ワルファリンやフェニトインのような蛋白結合率の高い薬物で特に問題になる。
アユム
2の「腎血流量低下=薬効減少」も逆ですね。排泄が遅れるから血中濃度は上がって薬効増大。
博士
その通り。ジゴキシン・アミノグリコシド系・NOACなどは腎機能でしっかり用量調整するのじゃ。
アユム
3の「肝血流量低下=薬効増大」が正解ですね。
博士
うむ。特に肝抽出率の高い薬物は初回通過効果が弱まり、血中濃度が跳ね上がる。プロプラノロールやリドカインなどが該当する。
アユム
4の消化機能低下はどうですか?
博士
吸収速度は落ちるがトータルの吸収量はさほど変わらないことが多い。「薬効増大」という結びつきは適切でない。
アユム
なるほど、高齢者ではポリファーマシーも問題ですよね。
博士
日本老年医学会が『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』を出しておる。ベンゾジアゼピン・抗コリン薬・NSAIDsなどは慎重投与の代表例じゃ。看護師も副作用モニタリングを丁寧に行う必要がある。
POINT
高齢者の薬物動態はADME(吸収・分布・代謝・排泄)の各段階で変化します。加齢に伴う肝血流量・肝細胞数・肝酵素活性の低下は肝クリアランスを下げ、肝代謝型薬物の血中濃度を上昇させて薬効および副作用を増大させます。同様にアルブミン低下は遊離型薬物を増やし、腎血流量・GFR低下は腎排泄型薬物の蓄積を招き、いずれも薬効増大方向に働きます。一方、消化機能低下は吸収速度を遅らせTmaxを延長させますが、吸収総量は大きく変わらないことが多い点が特徴です。高齢者ではポリファーマシー(多剤併用)による有害事象も多く、『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』を踏まえた慎重な投与と看護師による副作用モニタリングが臨床上きわめて重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:老化による身体機能の変化と薬物動態への影響との組合せで正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。薬物動態は吸収(Absorption)・分布(Distribution)・代謝(Metabolism)・排泄(Excretion)のADMEで整理される。肝血流量が低下すると肝での代謝(特に肝抽出率の高い薬物の初回通過効果)が低下し、血中濃度が上昇しやすくなるため薬効は増大する。高齢者では肝重量・肝細胞数・肝血流量すべてが低下し、薬物の分解が遅れることで副作用のリスクが高まる。
選択肢考察
-
× 1. 血中蛋白の低下 -------- 薬効の減少
高齢者では血清アルブミンが低下しやすい。薬物はアルブミンと結合した結合型は不活性で、遊離型(非結合型)のみが作用部位に到達する。アルブミンが低下すると遊離型が増加し、薬効はむしろ増大する。
-
× 2. 腎血流量の低下 -------- 薬効の減少
腎血流量・糸球体濾過量(GFR)の低下により腎排泄型薬物の排泄が遅れ、血中濃度が上昇して薬効・副作用が増大する。ジゴキシンやアミノグリコシド系などは特に要注意。
-
○ 3. 肝血流量の低下 -------- 薬効の増大
肝血流量の低下と肝代謝酵素活性の低下により、肝クリアランスが下がり血中濃度が上昇する。その結果として薬効および副作用が増大する。
-
× 4. 消化機能の低下 -------- 薬効の増大
消化管運動・血流・胃酸分泌の低下により吸収速度は遅くなり、最高血中濃度到達時間(Tmax)が延長する。吸収量自体は大きく変わらないことが多いが、効果発現は遅くなりやすい。
高齢者では複数の慢性疾患により多剤併用(ポリファーマシー)となりやすく、薬物有害事象のリスクが高い。日本老年医学会の『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』には「特に慎重な投与を要する薬物リスト」(ベンゾジアゼピン系、三環系抗うつ薬、NSAIDs、抗コリン薬など)が示されている。加えて、体脂肪率の増加により脂溶性薬物(ジアゼパムなど)の分布容積が増え作用が遷延する点も重要である。
加齢に伴う各臓器機能の変化が薬物動態(ADME)に及ぼす影響を正確に対応づける問題。肝・腎機能低下は薬効増大につながる点がポイント。
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