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ろれつが回らないのはなぜ?構音障害と失語症の決定的な違い

看護師国家試験 第114回 午前 第81問 / 人体の構造・機能 / 神経系

国試問題にチャレンジ

114回 午前 第81問

伝えたいことがあるにも関わらず、ろれつが回らず正しく発音することが困難になるのはどれか。

  1. 1.喚語困難
  2. 2.構音障害
  3. 3.吃音
  4. 4.錯語
  5. 5.嗄声

対話形式の解説

博士 博士

今日は言語に関する障害の整理じゃ。「ろれつが回らない」というのは医学的に何を指すか分かるかの?

サクラ サクラ

えっと、お酒を飲んだときみたいに、口が回らない感じですよね。脳の障害ですか?

博士 博士

鋭いところを突いてきたな。実は言葉の障害は大きく二つに分けられるのじゃ。脳の言語野そのものの障害である「失語症」と、口や舌、声帯といった発声器官・支配神経の障害である「構音障害・音声障害」じゃ。

サクラ サクラ

じゃあ「ろれつが回らない」のはどちらですか?

博士 博士

これは構音障害じゃよ。本人は何を言いたいか頭の中ではっきり分かっているのに、唇や舌をうまく動かせないから音が崩れる。脳幹梗塞やパーキンソン病、ALS、舌下神経麻痺などで起こるのじゃ。

サクラ サクラ

なるほど。じゃあ失語症で出てくる「喚語困難」はどう違うんですか?

博士 博士

喚語困難は「あの…えっと、赤くて丸い果物…」と物の名前が出てこない状態じゃ。発音そのものは正常で、語を引き出す中枢機能が落ちておる。

サクラ サクラ

じゃあ「錯語」は?

博士 博士

錯語は言い間違いじゃな。「りんご」と言いたいのに「みかん」と出てしまう意味性錯語、「めがね」が「めげね」になる音韻性錯語があり、ウェルニッケ失語でよく見られる。流暢に話せるが内容がおかしいのが特徴じゃ。

サクラ サクラ

吃音と嗄声はどうですか?

博士 博士

吃音は「ぼ、ぼ、ぼくは」のように同じ音を繰り返したり、最初の音が詰まる発話の流暢性障害じゃ。嗄声は声帯のトラブルによる声がれで、声質の異常を指す。どちらも「ろれつが回らない」とは別物じゃな。

サクラ サクラ

整理すると、構音障害は末梢の機械的な問題、失語症は中枢の言葉処理の問題、ということですね。

博士 博士

その通りじゃ。臨床では脳血管障害後の患者で構音障害がよく見られる。看護では発音しやすい姿勢を保ち、五十音表や筆談を併用したコミュニケーション工夫、そして誤嚥リスクの評価が大切になるぞ。

サクラ サクラ

同じ脳卒中でも、損傷部位で症状の出方が全然違うんですね。患者さんに合わせた支援が必要だと分かりました。

POINT

「ろれつが回らない」状態は構音障害と表現され、口唇・舌・軟口蓋・喉頭といった構音器官や、それらを支配する神経・筋の障害により正しい音を作り出せなくなった状態を指します。言語野の機能は保たれているため伝えたい内容は明確である一方、末梢の発音機能が破綻しているのが特徴で、失語症(喚語困難・錯語など)や吃音、嗄声とは原因が異なります。脳血管障害、パーキンソン病、ALS、脳幹病変などで生じ、しばしば嚥下障害を伴うため、看護では誤嚥予防とコミュニケーション手段の工夫が重要になります。言語障害を見極める際は、発音そのものに問題があるのか、語の選択や理解に問題があるのかを切り分ける視点が、看護アセスメントの第一歩となります。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:伝えたいことがあるにも関わらず、ろれつが回らず正しく発音することが困難になるのはどれか。

解説:正解は 2 の構音障害です。「ろれつが回らない」とは、唇・舌・軟口蓋・喉頭などの構音器官や、それらを支配する神経・筋に障害が生じ、音の作り出しがうまくいかない状態を指します。言葉を選び出す中枢機能(言語野)は保たれているため、何を伝えたいかは本人の中で明確である一方、口を動かす末梢の機能が損なわれて発音が不明瞭になります。これは脳血管障害、パーキンソン病、ALS、脳幹病変、舌下神経麻痺などで生じ、典型的な症状として「ろれつが回らない」「発音が不明瞭」「鼻に抜ける声」などが挙げられます。

選択肢考察

  1. × 1.  喚語困難

    頭の中で対象のイメージは思い浮かんでいるのに、その物の名前や言葉が口から出てこない状態。失語症の代表的症状であり、発音そのものは保たれているため「ろれつが回らない」現象とは異なる。

  2. 2.  構音障害

    口唇・舌・咽頭などの構音器官や支配神経・筋の障害により、言葉を正しく発音できなくなる状態。ろれつが回らない、発音が不明瞭になるのは典型症状であり、本問の記述に合致する。

  3. × 3.  吃音

    発話の流暢性が障害される疾患で、同じ音の繰り返し(連発)、音の引き伸ばし(伸発)、最初の音が出ない(難発)などを特徴とする。ろれつが回らないわけではなく、リズムの乱れである。

  4. × 4.  錯語

    言いたい言葉とは別の言葉が出てしまう失語症の症状。発音自体は流暢に行われるが、音や意味の置き換え(音韻性錯語・意味性錯語)が起こる。発音困難ではない。

  5. × 5.  嗄声

    声帯の異常により声がかすれる、ガラガラするなど声質が変化する状態。声帯ポリープや反回神経麻痺、喉頭炎などで起こる。発音そのものはできるため、ろれつが回らない症状とは別の概念。

言語に関する障害は大きく「失語症(中枢性、言葉を扱う脳領域の障害)」と「構音障害・音声障害(末梢性、発声・発音器官の障害)」に分けられる。失語症ではブローカ失語(運動性、発話困難+理解保持)、ウェルニッケ失語(感覚性、流暢だが理解低下+錯語)が代表的。構音障害は脳血管障害後の片麻痺患者でしばしば併発するため、看護では誤嚥のリスク評価とコミュニケーション手段の工夫(書字、五十音表、ジェスチャー)が重要となる。

「ろれつが回らない」というキーワードから、中枢性の言語障害(失語症)ではなく、末梢の構音器官や神経筋の障害である構音障害を選ぶ問題。