6歳児の骨折牽引、看護師は何をする?フォルクマン拘縮を防げ!
看護師国家試験 第106回 午前 第80問 / 小児看護学 / 急性期・特別な状況下の看護
国試問題にチャレンジ
Aちゃん(6歳、女児)は、左上腕骨顆上骨折( left supracondylar fracture of humerus )と診断され、牽引治療のために入院した。医師からAちゃんと家族に対し、牽引と安静臥床の必要性を説明した後、弾性包帯を用いて左上肢の介達牽引を開始した。 Aちゃんに対する看護で適切なのはどれか。
- 1.食事を全介助する。
- 2.左手指の熱感を観察する。
- 3.抑制ジャケットを装着する。
- 4.1日1回は弾性包帯を巻き直す。
- 5.痛みに応じて牽引の重錘の重さを変更する。
対話形式の解説
博士
今回は小児整形外科の状況設定問題じゃ。Aちゃん6歳、左上腕骨顆上骨折で介達牽引中。適切な看護は?
アユム
上腕骨顆上骨折って、肘のすぐ上の骨折ですよね?
博士
その通り。小児、特に3〜8歳に多い骨折で、転倒時に手をついて力が肘に伝わることで起こる。
アユム
介達牽引って何ですか?
博士
皮膚に弾性包帯やスポンジを巻いて、その上から牽引力を加える方法じゃ。骨に直接ピンを刺す『直達牽引』と違って、侵襲が少ない。
アユム
でも皮膚を引っ張るなら、皮膚トラブルが起きそうですね。
博士
鋭い!まさにそこが看護のポイントじゃ。選択肢4の『1日1回は弾性包帯を巻き直す』が正解の理由もそこにある。
アユム
どんなトラブルが起きるんですか?
博士
締め付けによる循環障害・神経障害・皮膚損傷。最悪の合併症は『フォルクマン拘縮』じゃ。
アユム
フォルクマン拘縮?
博士
前腕屈筋群が虚血で壊死して、鷲手変形という永続的な後遺症を残す。コンパートメント症候群の一種で、早期発見が命じゃ。
アユム
どう観察するんですか?
博士
『5P』じゃ。Pain(疼痛)、Pallor(蒼白)、Pulselessness(脈拍消失)、Paresthesia(感覚異常)、Paralysis(運動麻痺)。これを定期的にチェックする。
アユム
だから選択肢2の『熱感を観察』は間違いなんですね。末梢は冷感の方が重要。
博士
その通り。熱感は骨折部周囲の炎症所見じゃ。末梢の観察は冷感・蒼白・チアノーゼが主。
アユム
選択肢1の『食事全介助』は?
博士
6歳は学童期じゃ。本来食事は自立しているし、左手骨折でも右手で食べられる。利き手情報がない時も、自助具や配膳の工夫で自力摂取を促すのが原則。過剰介助は発達を阻害する。
アユム
選択肢3の『抑制ジャケット』は?
博士
安易な抑制は子どもの尊厳と発達を損なう。6歳なら説明で理解できる発達段階じゃから、まず説明と支援。抑制は最後の手段じゃ。
アユム
選択肢5の『痛みに応じて重錘を変更』は?
博士
絶対にダメじゃ。重錘の重さは骨折整復に必要な力として医師が計算しておる。看護師の独断で変えれば再転位や過牽引の危険がある。
アユム
疼痛があったらどうするんですか?
博士
医師に報告して、鎮痛薬の指示を受けるか、姿勢調整や体位変換、環境調整で緩和を図る。牽引の重さを変えるのは医師の判断じゃ。
アユム
牽引中の他の観察点は?
博士
牽引装置自体の確認も重要じゃ。重錘が床に触れていないか、紐がよじれていないか、方向は正しいか。
アユム
入院が長引きそうですが、心理面のケアは?
博士
学童期は学校生活が大事な時期。院内学級の活用、プレイセラピー、家族面会の調整など、入院環境を整えることも看護じゃ。
アユム
家族への支援も重要ですね。
博士
その通り。家族の不安、仕事や他の子どもの世話との両立、経済的負担など、家族全体を支えるのが小児看護じゃ。
POINT
本問は小児の上腕骨顆上骨折に対する介達牽引中の看護を問う状況設定問題で、正解は『1日1回は弾性包帯を巻き直す』です。弾性包帯による締め付けは循環障害・神経障害・皮膚損傷の原因となり、最悪の場合フォルクマン拘縮(前腕屈筋群の虚血性壊死)を生じる危険があります。5P(疼痛・蒼白・脈拍消失・感覚異常・運動麻痺)の定期観察と巻き直しによる皮膚・循環の確認が必須です。6歳児では過剰介助や安易な抑制は発達を損ねるため避け、説明と環境調整で安静を保ちます。牽引の重錘は医師指示であり看護師が独断で変更してはいけません。合併症予防と発達に応じた関わり、家族支援の総合的な小児看護が問われる問題です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aちゃん(6歳、女児)は、左上腕骨顆上骨折( left supracondylar fracture of humerus )と診断され、牽引治療のために入院した。医師からAちゃんと家族に対し、牽引と安静臥床の必要性を説明した後、弾性包帯を用いて左上肢の介達牽引を開始した。 Aちゃんに対する看護で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 の『1日1回は弾性包帯を巻き直す』です。上腕骨顆上骨折は小児(特に3〜8歳)に多い肘関節付近の骨折で、転倒時に手をついた際の外力が肘に伝わって起こります。介達牽引(skin traction)は皮膚に弾性包帯やスポンジを巻いて牽引力を加える方法で、骨折部の整復位保持と疼痛軽減に用いられます。弾性包帯は締め付けによる循環障害・神経障害・皮膚損傷のリスクがあるため、1日1回以上は巻き直して皮膚と末梢循環を観察することが必要です。観察項目は『5P』:Pain(疼痛)、Pallor(蒼白)、Pulselessness(脈拍消失)、Paresthesia(感覚異常)、Paralysis(運動麻痺)で、フォルクマン拘縮(前腕屈筋群の虚血性壊死による永続的な機能障害)の早期発見が重要です。
選択肢考察
-
× 1. 食事を全介助する。
誤り。Aちゃんは6歳の学童期で、本来食事は自立している年齢。骨折したのは左手であり、利き手の記載はないが、食器の配置や自助具で工夫すれば自力摂取が可能。不必要な全介助は自立心と発達を阻害するため避ける。
-
× 2. 左手指の熱感を観察する。
誤り。末梢観察で重要なのは熱感ではなく『冷感』『蒼白』『チアノーゼ』『感覚低下』『運動障害』など循環障害・神経障害の徴候。熱感は骨折部周囲の炎症所見であり、牽引部より末梢の観察とは目的が異なる。
-
× 3. 抑制ジャケットを装着する。
誤り。6歳児は説明を理解できる発達段階であり、まずは安静の必要性を分かりやすく伝える。安易な抑制は子どもの尊厳と精神発達を損ない、身体拘束は最小限・必要最小限の原則に反する。
-
○ 4. 1日1回は弾性包帯を巻き直す。
正しい。弾性包帯による締め付けで循環障害・神経障害・皮膚トラブルが起こり得るため、1日1回以上は巻き直して皮膚・末梢循環(5P)を観察し、フォルクマン拘縮を予防する。
-
× 5. 痛みに応じて牽引の重錘の重さを変更する。
誤り。牽引の重錘(おもり)の重さは骨折部の整復に必要な力として医師が指示する。看護師が独断で変更することは医師法・保助看法上も不適切であり、再転位や過牽引の原因となる。
上腕骨顆上骨折の合併症として特に注意すべきなのが【フォルクマン拘縮】である。これは骨折直後や不適切な固定による前腕屈筋群の虚血性壊死で、鷲手変形(手関節屈曲・手指屈曲)を残す永続的後遺症を生む。コンパートメント症候群の一種で、早期発見の鍵は5P徴候。また神経損傷では正中神経・橈骨神経・尺骨神経が障害を受けやすく、母指対立運動や感覚の評価も重要。牽引中の看護は、①5Pの定期観察、②弾性包帯の巻き直し、③牽引装置の正常動作確認(重錘が床に触れていないか、紐がよじれていないか)、④体位保持と安楽、⑤学童期の発達に応じたプレイセラピー・教育支援(長期入院に対応)、⑥家族支援など多岐にわたる。
小児の上腕骨顆上骨折と介達牽引における看護を問う問題。弾性包帯の巻き直しによる観察とフォルクマン拘縮の予防、不要な全介助や抑制を避ける発達配慮がポイント。
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