肥厚性幽門狭窄症と酸塩基平衡
看護師国家試験 第103回 午後 第100問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aちゃん(生後1か月、男児)は、2日前から嘔吐があり、昨日は噴水様嘔吐が5回あったため外来を受診し入院した。Aちゃんは体重4,200g、体温36.8℃、呼吸数36/分、心拍数120/分である。眼球結膜に黄染を認めない。上腹部に腫瘤を触知する。Aちゃんの血液検査データは、赤血球540万/μl、Ht45%、白血球10,100/μl、血小板58.6万/μl、アルブミン4.4g/dl、Na140mEq/l、K3.5mEq/l、Cl92mEq/l、動脈血pH7.48であった。 Aちゃんは入院時にも胃液様の嘔吐がみられた。 Aちゃんの現在の状態で考えられるのはどれか。
- 1.代謝性アシドーシス
- 2.呼吸性アシドーシス
- 3.代謝性アルカローシス
- 4.呼吸性アルカローシス
対話形式の解説
博士
Aちゃんは生後1か月で噴水様嘔吐、上腹部に腫瘤を触知しておるんじゃ。何という疾患を疑うかのう?
アユム
肥厚性幽門狭窄症ですね。
博士
正解じゃ。生後2〜8週の男児に好発し、幽門筋肥厚で胃内容が通過できなくなるんじゃ。三徴は噴水様嘔吐・体重減少・オリーブ徴候じゃ。
アユム
繰り返す嘔吐で何が起きますか?
博士
胃液には塩酸(HCl)が含まれておる。それが大量に体外に出ると、体内の酸が減ってアルカリ側に傾くんじゃ。
アユム
それで酸塩基平衡が崩れるんですね。
博士
Aちゃんの検査値を見ると、Cl92mEq/lで低下、pH7.48で上昇しておる。これは代謝性アルカローシスじゃ。よって正解は3じゃ。
アユム
pHの基準値は?
博士
7.35〜7.45じゃ。それより上がアルカローシス、下がアシドーシスじゃ。
アユム
呼吸性と代謝性の見分け方は?
博士
呼吸性はCO2の異常で起こり肺疾患が原因、代謝性はそれ以外の代謝・消化液・腎機能による異常じゃ。
アユム
選択肢1の代謝性アシドーシスは?
博士
下痢や腎不全、糖尿病性ケトアシドーシスで起こる。pH7.35未満になるからAちゃんは該当せんのう。
アユム
選択肢2の呼吸性アシドーシスは?
博士
肺胞低換気でCO2貯留する状態じゃ。Aちゃんの呼吸数36/分は生後1か月としては正常で、CO2貯留もないのう。
アユム
選択肢4の呼吸性アルカローシスは?
博士
過換気でCO2が出すぎる状態じゃ。Aちゃんは呼吸正常で原因が嘔吐じゃから違うんじゃのう。
アユム
治療はどうするんですか?
博士
輸液で電解質と酸塩基平衡を補正してから、Ramstedt手術(粘膜外幽門筋切開術)を行うんじゃ。
アユム
看護では何が大事ですか?
博士
脱水と低Kにも注意じゃ。哺乳量と尿量、体重、嘔吐回数をしっかり観察するんじゃ。
アユム
病態と検査値が結びつくと理解しやすいですね。
博士
その通り、嘔吐=胃酸喪失=代謝性アルカローシス、と覚えるとよいぞ。
POINT
肥厚性幽門狭窄症は生後2〜8週の男児に好発し、噴水様嘔吐・体重減少・上腹部腫瘤を三徴とします。繰り返す胃酸喪失により低Cl血症と代謝性アルカローシス(pH7.48)が生じ、Aちゃんの検査値はこれを示しています。輸液による電解質・酸塩基補正後にRamstedt手術が行われ、看護では脱水・電解質異常の観察が重要となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aちゃん(生後1か月、男児)は、2日前から嘔吐があり、昨日は噴水様嘔吐が5回あったため外来を受診し入院した。Aちゃんは体重4,200g、体温36.8℃、呼吸数36/分、心拍数120/分である。眼球結膜に黄染を認めない。上腹部に腫瘤を触知する。Aちゃんの血液検査データは、赤血球540万/μl、Ht45%、白血球10,100/μl、血小板58.6万/μl、アルブミン4.4g/dl、Na140mEq/l、K3.5mEq/l、Cl92mEq/l、動脈血pH7.48であった。 Aちゃんは入院時にも胃液様の嘔吐がみられた。 Aちゃんの現在の状態で考えられるのはどれか。
解説:正解は3です。Aちゃんは噴水様嘔吐と上腹部腫瘤触知から肥厚性幽門狭窄症が疑われ、繰り返す胃液嘔吐により胃酸(HCl)が大量に喪失しています。胃酸喪失により体内の塩酸が減少し、血液はアルカリ性に傾き、低Cl血症(Cl92mEq/l:基準98〜108mEq/l)と動脈血pH7.48(基準7.35〜7.45)の上昇を示しています。呼吸状態は安定しており、これらの所見は代謝性アルカローシスを示しています。
選択肢考察
-
× 1. 代謝性アシドーシス
誤りです。代謝性アシドーシスは下痢や腎不全、糖尿病性ケトアシドーシスなどで重炭酸イオンが喪失または酸が蓄積した状態で、pHは7.35未満となります。AちゃんはpH7.48でアルカリ側に傾いており該当しません。
-
× 2. 呼吸性アシドーシス
誤りです。呼吸性アシドーシスは肺胞低換気でCO2が貯留する状態です。Aちゃんは呼吸数36/分で生後1か月の児としては正常範囲、呼吸状態に異常なくCO2貯留を示唆する所見もありません。
-
○ 3. 代謝性アルカローシス
正しい状態です。噴水様嘔吐の反復による胃酸(HCl)喪失で体内の酸が減少し、血液はアルカリ性に傾きます。低Cl血症(92mEq/l)とpH7.48の上昇は代謝性アルカローシスの典型所見です。
-
× 4. 呼吸性アルカローシス
誤りです。呼吸性アルカローシスは過換気でCO2が排出されすぎる状態です。Aちゃんは呼吸数正常で過換気の所見はなく、原因も呼吸ではなく胃液喪失によるものです。
肥厚性幽門狭窄症は生後2〜8週の男児に好発する疾患で、幽門筋の肥厚により胃内容が十二指腸へ通過障害をきたし、噴水様嘔吐・体重減少・上腹部腫瘤(オリーブ徴候)が三徴です。胃酸の喪失で代謝性アルカローシス(低Cl血症性)を呈し、輸液で補正後にRamstedt手術(粘膜外幽門筋切開術)が行われます。
嘔吐に伴う胃酸喪失で生じる酸塩基平衡異常を、検査値と病態から判断できるかが問われています。
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