紫斑病性腎炎を疑うA君の確定診断
看護師国家試験 第107回 午後 第102問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
A君( 13歳、男子 )。2週前から下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現し、近くのクリニックを受診した。血尿および蛋白尿も認められたため、病院を紹介され受診した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。 身体所見:体温36.7℃、血圧110/66mmHg。意識清明。腹痛、浮腫なし。両膝関節の軽度の疼痛があるが、腫脹および発赤なし。両下腿に紫斑が散在している。 検査所見:血液所見:赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。 プロトロンビン活性< PT活性 >105%( 基準値80~120% )、活性化部分トロンボプラスチン時間< APTT >32.0秒( 基準対照31.2秒 )。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP0.1mg/dL。補体価( CH50 )41IU/mL( 基準値30~45IU/mL )、抗核抗体陰性。尿所見:蛋白3袷、潜血2袷、赤血球50~99/1視野。 その後6か月間、A君は外来で経過観察となった。関節症状および紫斑は自然に消失したが、尿の異常と低蛋白血症は変わらず、その他の所見も変化がなかった。 A君の尿の異常の確定診断をするために最も重要な検査はどれか。
- 1.腎生検
- 2.咽頭培養
- 3.腹部MRI
- 4.クレアチニンクリアランスの測定
対話形式の解説
博士
博士じゃ。A君は紫斑と関節痛のあとに血尿と蛋白尿が残っておるの。
アユム
IgA血管炎による紫斑病性腎炎を疑う所見ですよね。
博士
そうじゃ。皮膚・関節症状は治まったのに尿異常と低アルブミン血症が半年続いておる。これは糸球体に炎症が残っておる証拠じゃ。
アユム
ということは腎臓そのものの組織を確認する必要があるのですね。
博士
その通り、腎生検で糸球体の病変の種類と半月体の有無を直接見るのじゃ。
アユム
咽頭培養ではダメなのですか。
博士
咽頭培養は溶連菌の感染を調べるもので、A君の病態はそれとは違う機序じゃからの。
アユム
腹部MRIはどうでしょう。
博士
MRIは腫瘍や結石のような形態異常を見る検査で、顕微鏡レベルの糸球体病変は映らぬ。
アユム
クレアチニンクリアランスは糸球体濾過量を測るものですね。
博士
うむ、しかしA君のクレアチニンは正常範囲じゃ。量を測るだけでは原因は分からぬ。
アユム
病理組織を見ないと治療強度が決められないというわけですね。
博士
その通りじゃ。腎生検の結果次第で免疫抑制薬を足すかどうかが変わってくるのじゃよ。
POINT
紫斑病性腎炎では皮膚症状が消えても尿異常が続くことが多く、この場合は腎組織診断が治療方針決定の要になります。腎生検はISKDC分類に従って半月体形成率を評価でき、重症度に応じた治療選択が可能になります。画像検査や血液生化学だけでは糸球体レベルの炎症像を捉えきれないため、持続する蛋白尿・血尿を呈する小児では腎生検が第一選択となります。国試でも紫斑病性腎炎の確定診断はほぼ必ず腎生検が正解になる王道パターンです。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:A君( 13歳、男子 )。2週前から下腿の紫斑、腹痛、膝関節の疼痛が出現し、近くのクリニックを受診した。血尿および蛋白尿も認められたため、病院を紹介され受診した。既往歴および家族歴に特記すべきことはない。 身体所見:体温36.7℃、血圧110/66mmHg。意識清明。腹痛、浮腫なし。両膝関節の軽度の疼痛があるが、腫脹および発赤なし。両下腿に紫斑が散在している。 検査所見:血液所見:赤血球470万/μL、白血球5,600/μL、血小板21万/μL。 プロトロンビン活性< PT活性 >105%( 基準値80~120% )、活性化部分トロンボプラスチン時間< APTT >32.0秒( 基準対照31.2秒 )。クレアチニン0.56mg/dL、アルブミン3.7g/dL、CRP0.1mg/dL。補体価( CH50 )41IU/mL( 基準値30~45IU/mL )、抗核抗体陰性。尿所見:蛋白3袷、潜血2袷、赤血球50~99/1視野。 その後6か月間、A君は外来で経過観察となった。関節症状および紫斑は自然に消失したが、尿の異常と低蛋白血症は変わらず、その他の所見も変化がなかった。 A君の尿の異常の確定診断をするために最も重要な検査はどれか。
解説:正解は1の腎生検です。A君の臨床像は下腿の紫斑、関節痛、腹痛、血尿・蛋白尿を呈し、IgA血管炎(Henoch-Schönlein紫斑病)による紫斑病性腎炎が強く疑われます。紫斑と関節症状は自然軽快したものの、6か月にわたり持続する蛋白尿・血尿・低アルブミン血症は糸球体病変の慢性化を示唆しており、組織学的に糸球体の病変の型(メサンギウム増殖の程度、半月体形成の有無など)を確認しなければ重症度評価と治療方針の決定ができません。腎生検こそが尿異常の原因と病理診断を確定させる唯一の検査です。
選択肢考察
-
○ 1. 腎生検
持続する血尿・蛋白尿を呈する糸球体疾患では、組織診断によって病型分類・活動性評価・予後推定・治療選択が可能になります。紫斑病性腎炎が疑われる本症例で最も優先される確定診断検査です。
-
× 2. 咽頭培養
咽頭培養はA群β溶血性レンサ球菌などの咽頭感染症の原因菌同定を目的とする検査です。感染後急性糸球体腎炎の診断補助にはなり得ますが、A君には先行感染の記載がなく、CH50も正常で補体低下もないため適応ではありません。
-
× 3. 腹部MRI
腹部MRIは腎腫瘍・水腎症・血管病変などの形態的異常を評価する画像検査です。糸球体レベルの炎症や沈着物を描出する能力はなく、尿異常の原因確定には役立ちません。
-
× 4. クレアチニンクリアランスの測定
クレアチニンクリアランスは糸球体濾過量の定量評価です。A君は血清クレアチニン0.56mg/dLと腎機能は保たれており、糸球体機能の総量評価では尿異常の原因は特定できません。
IgA血管炎は小児の血管炎の中で最も多く、皮膚・消化管・関節・腎に症状が出る全身性疾患です。紫斑病性腎炎の予後は腎組織像で大きく左右され、国際小児腎臓病研究班(ISKDC)分類に基づく半月体形成の割合が治療強度の判断材料となります。ステロイド単独で不十分な場合は免疫抑制薬併用療法が選択されます。
持続する血尿・蛋白尿を伴う糸球体疾患の確定診断には腎生検が必須です。紫斑病性腎炎では組織所見が治療強度を決定します。
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