思春期の医療的ケア児に寄り添う!本人の声を聴くトランジションケア
看護師国家試験 第114回 午後 第108問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 A君(5歳6か月、男児)は、二分脊椎(spina bifida)のため、繰り返し使用できるカテーテルによる間欠的自己導尿を両親が実施している。現在、間欠的自己導尿は、保育所での実施を含めて1日6回行うよう医師が指示しており、自宅では両親が導尿している。A君は下肢の運動機能障害があるが、自分で車椅子からトイレに移動でき、指先の微細な動きもできる。 外来受診の際に母親から「地元の小学校に入学予定です。小学生になったら自分で導尿できたほうが良いと聞きました。Aも間欠的自己導尿をやってみたい、と言っています。どのように進めたらよいか分からず、焦っています」と看護師に相談があった。 11歳になったA君は間欠的自己導尿を自分で実施している。本日の定期受診時の尿検査で、尿蛋白+、赤血球(−)、白血球2+、尿の混濁+の所見がみられた。 受診に付き添った父親から「最近、Aは親の言うことを聞かないし、あまり口をきいてくれません。家では自立して間欠的自己導尿を行っていますが、学校でもやっているのか心配です」と発言があった。A君の水分摂取や運動の状況は以前と変わらない。 外来看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 1.導尿の必要性をA君に説明する。
- 2.学校での導尿の状況についてA君と話す。
- 3.父親に、親が学校に行って導尿を実施するよう伝える。
- 4.導尿の手順が書かれた表を渡し、できたところにA君にシールを貼ってもらう。
対話形式の解説
博士
A君も11歳。尿検査で白血球2+、尿混濁+、蛋白+じゃ。何を考える?
アユム
白血球と混濁があるってことは尿路感染ですよね。赤血球は陰性なので結石や腫瘍ではなさそう。
博士
鋭いのう。水分摂取や運動量は変わらないとあるから、原因は導尿の頻度や手技に何か問題がある可能性が高い。
アユム
父親も『学校でやっているか心配』と言ってますね。
博士
そう、ここがポイントじゃ。思春期に入ったA君は親に反抗的で口数も少ない。家では自立して導尿できているのに学校ではどうなのか…。
アユム
じゃあ、まずは本人に状況を聞くのが大事ですか?
博士
その通りじゃ。事実確認をしないと支援の方向が定まらない。本人に直接話を聞くのが第一歩じゃよ。
アユム
『導尿の必要性を説明する』はダメなんですか?
博士
A君は5歳から導尿を続けておる。必要性は十分理解しておるはず。再説明は課題の本質を外してしまうのう。
アユム
父親に学校に行って実施してもらうのは?
博士
それは絶対にダメじゃ。11歳の自立心を後退させ、本人のプライバシーも侵害する。せっかく積み上げた自己管理を壊してしまう。
アユム
シール表で動機づけは?
博士
あれは幼児期〜学童前期向けじゃ。11歳には幼すぎて自尊心を傷つけかねない。
アユム
思春期の子に向き合うときって、難しいですね。
博士
じゃろう?でも本人の気持ちを尊重して『何か困っていない?』と聞ける関係を作れば、子どもは案外話してくれる。
アユム
学校で導尿しにくい理由って、どんなのが考えられますか?
博士
時間割が合わない、トイレが汚い、友人にからかわれる、養護教諭との関係、自分で時間を作れない…色々あるのじゃ。
アユム
それぞれに対策が違いますね。だから現状把握が大事なんですね。
博士
その通りじゃ。学校・家庭・医療が連携して、本人主体で解決策を考える。これをトランジションケアと言うのじゃ。
アユム
看護師は本人の代弁者でもあるんですね。
博士
うむ。思春期は親離れの時期。看護師が中立的に関われる相手になることで、自立を支えられるのじゃよ。
POINT
11歳のA君に見られた白血球2+、尿混濁+、尿蛋白+という尿所見は、尿路感染を強く示唆する。水分摂取や運動状況に変化がないことから、学校での導尿の実施状況に問題がある可能性が高い。思春期は自立心と羞恥心が強まる時期で、親の指示や幼児向けの動機づけはかえって反発や自尊心の低下を招く。看護師はまずA君自身から学校での導尿の実態と困りごとを聴き取り、その情報をもとに学校・家族と連携しながら環境調整や手技支援を行う必要がある。これは小児期から成人期への医療移行を支える「トランジションケア」の中心的な姿勢であり、感染予防と本人の自立の両立を実現する最も適切な看護対応である。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 A君(5歳6か月、男児)は、二分脊椎(spina bifida)のため、繰り返し使用できるカテーテルによる間欠的自己導尿を両親が実施している。現在、間欠的自己導尿は、保育所での実施を含めて1日6回行うよう医師が指示しており、自宅では両親が導尿している。A君は下肢の運動機能障害があるが、自分で車椅子からトイレに移動でき、指先の微細な動きもできる。 外来受診の際に母親から「地元の小学校に入学予定です。小学生になったら自分で導尿できたほうが良いと聞きました。Aも間欠的自己導尿をやってみたい、と言っています。どのように進めたらよいか分からず、焦っています」と看護師に相談があった。 11歳になったA君は間欠的自己導尿を自分で実施している。本日の定期受診時の尿検査で、尿蛋白+、赤血球(−)、白血球2+、尿の混濁+の所見がみられた。 受診に付き添った父親から「最近、Aは親の言うことを聞かないし、あまり口をきいてくれません。家では自立して間欠的自己導尿を行っていますが、学校でもやっているのか心配です」と発言があった。A君の水分摂取や運動の状況は以前と変わらない。 外来看護師の対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。尿検査で白血球2+、尿混濁+、尿蛋白+(赤血球は陰性)という所見は、尿路感染の存在を強く示唆する。水分摂取や運動量に変化がないことから、感染の背景として「学校での導尿が回数や手技の面で適切に行えていない」可能性が最も考えられる。11歳は思春期に差しかかり自立心や羞恥心が強くなる時期で、親に話したがらない様子もそれに合致する。父親や本人に頭ごなしに指示するのではなく、まずA君自身から学校での導尿の実際(時間・場所・困りごと)を聞き取り、必要な支援を一緒に考える対応が、思春期の自尊心を尊重しつつ感染管理にもつながる最も適切な看護対応である。
選択肢考察
-
× 1. 導尿の必要性をA君に説明する。
5歳から導尿を続けて自宅では自立しているA君は、必要性を十分理解していると考えられる。ここで再説明することは課題の本質ではなく、まず実施状況の把握が先である。
-
○ 2. 学校での導尿の状況についてA君と話す。
尿路感染を疑う所見の背景を明らかにし、思春期の本人の気持ちを尊重しながら困りごとを共有する第一歩。事実確認の上で具体的な支援策を検討できる。
-
× 3. 父親に、親が学校に行って導尿を実施するよう伝える。
11歳の自立心を損ない、5歳から積み上げてきた自己管理を後退させる。プライバシーの観点でも適切でなく、まず本人主体の対応を優先する。
-
× 4. 導尿の手順が書かれた表を渡し、できたところにA君にシールを貼ってもらう。
シール表は幼児期〜学童前期向けの動機づけツール。11歳には幼く受け入れがたく、自尊心を損ねる可能性がある。現状把握が先決。
二分脊椎による神経因性膀胱では、間欠的自己導尿が不十分だと残尿増加→細菌増殖→尿路感染→膀胱尿管逆流→腎盂腎炎→腎機能障害の悪循環に陥る。学童期から思春期への移行期は、自分で管理する責任が重くなる一方、友人の目や時間割の制約で導尿を後回しにしがち。学校では保健室や個室トイレの利用、養護教諭・担任との連携、医療的ケア児支援員の配置など環境整備が重要。トランジションケアの視点で、本人主体の意思決定支援を行うことが看護師の重要な役割となる。
思春期の医療的ケア児に尿路感染を疑う所見が出た場面で、自尊心を尊重しつつ実施状況を確認する対応を選ぶ問題。トランジションケアの視点が問われる。
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