統合失調症の社会復帰を支える!就労移行支援とは
看護師国家試験 第106回 午後 第106問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん(28歳、女性)は、両親と3人で暮らしている。24歳のときに統合失調症( schizophrenia )を発症し治療を開始している。Aさんは大学卒業後に一度就職したが、発症後に退職し、現在も無職である。2週前から元気がなく、自室に引きこもって独り言を言っているのが目立つようになったため、両親同伴で外来を受診した。両親からは、1年前から便秘が続き、Aさんが薬の副作用(有害事象)を気にするようになったという話があった。 さらに3か月後、家事の手伝いができるようになり、家庭内で落ち着いた日常生活を送れるようになった。Aさんは「自分のことは自分でできるようになって、将来はまた働きたい」と話すようになり、社会復帰に向けて社会資源の利用を検討することになった。 この時点でAさんに紹介する社会資源で適切なのはどれか。
- 1.就労移行支援
- 2.地域活動支援センター
- 3.居宅介護〈ホームヘルプ〉
- 4.短期入所〈ショートステイ〉
- 5.共同生活援助〈グループホーム〉
対話形式の解説
博士
Aさんシリーズの最終問題じゃ。症状が安定し『将来はまた働きたい』と語り始めた段階で、どの社会資源を紹介するかがテーマじゃ。
アユム
5つも選択肢があって迷いますね。まず障害者総合支援法の全体像を教えてください。
博士
障害者総合支援法のサービスは大きく2つじゃ。『介護給付』と『訓練等給付』に分かれる。
アユム
どう違うんですか?
博士
介護給付は居宅介護・短期入所・生活介護など生活介護中心。訓練等給付は自立訓練・就労移行支援・就労継続支援・グループホームなど自立を目指す訓練系じゃ。
アユム
就労移行支援って具体的にはどんなサービスですか?
博士
一般企業への就職を希望する65歳未満の障害者に、職業訓練・職場実習・求職活動支援・就職後の定着支援を原則2年間提供するサービスじゃ。
アユム
Aさんは『また働きたい』と明確に意思表示していて、生活も安定していますよね。
博士
その通り。就労意欲があり生活が整っている段階こそ就労移行支援の適応じゃ。これが正解。
アユム
似たものに就労継続支援というのもありますね。
博士
よい質問じゃ。就労継続支援はA型とB型があってな、A型は雇用契約を結んで働く、B型は雇用契約なしで軽作業中心じゃ。一般就労が難しい人向けじゃな。
アユム
Aさんの場合は一般就労を目指せる状態なので移行支援がぴったりなんですね。
博士
その通り。他の選択肢も確認しよう。『地域活動支援センター』はどうじゃ?
アユム
創作活動や交流の場ですよね。就労を目指すというより地域の居場所というイメージです。
博士
正解じゃ。Ⅰ型〜Ⅲ型があって、地域交流や日中活動が中心。Aさんのように明確に就労を目標とする段階では就労移行支援が優先される。
アユム
『居宅介護』は家事援助が必要な人向けですよね?
博士
そう、入浴・排泄・食事・家事の介護を提供する。Aさんは家事手伝いができておるから対象外じゃ。
アユム
『短期入所』は?
博士
介護者が病気などで介護できない時に短期間施設入所するサービスじゃ。家族の介護負担軽減が目的で、社会復帰支援とは方向性が違う。
アユム
『共同生活援助(グループホーム)』は?
博士
夜間中心に共同生活の場を提供するサービスじゃ。現在Aさんは家庭で落ち着いた生活ができておるから現時点では必要性が低い。
アユム
回復段階に応じて社会資源を使い分けることが大切なんですね。
博士
その通りじゃ。急性期→退院後の地域生活→社会交流→就労訓練→就労と段階が上がるにつれ、利用する資源も変わっていく。看護師はどの段階に必要な資源を紹介できるかが重要じゃな。
POINT
統合失調症の社会復帰支援では障害者総合支援法に基づく多様なサービスを回復段階に応じて使い分けます。就労移行支援は一般就労を希望する65歳未満の障害者に職業訓練と求職支援、定着支援を原則2年間提供するサービスで、就労意欲があり生活が安定した段階の利用が適します。Aさんは『また働きたい』と明確に意思表示し日常生活も落ち着いており、まさに就労移行支援の対象段階です。地域活動支援センターは社会交流、居宅介護・短期入所・グループホームはより介護や住まいの支援が必要な段階に用いられ、目的と段階に応じた資源選択が看護師の役割となります。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん(28歳、女性)は、両親と3人で暮らしている。24歳のときに統合失調症( schizophrenia )を発症し治療を開始している。Aさんは大学卒業後に一度就職したが、発症後に退職し、現在も無職である。2週前から元気がなく、自室に引きこもって独り言を言っているのが目立つようになったため、両親同伴で外来を受診した。両親からは、1年前から便秘が続き、Aさんが薬の副作用(有害事象)を気にするようになったという話があった。 さらに3か月後、家事の手伝いができるようになり、家庭内で落ち着いた日常生活を送れるようになった。Aさんは「自分のことは自分でできるようになって、将来はまた働きたい」と話すようになり、社会復帰に向けて社会資源の利用を検討することになった。 この時点でAさんに紹介する社会資源で適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。就労移行支援は障害者総合支援法に規定される訓練等給付の一つで、一般企業への就職を希望する65歳未満の障害者に対し、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練、職場実習、求職活動支援、就職後の定着支援を原則2年間提供する。Aさんは『将来はまた働きたい』と明確に就労を希望し、日常生活も落ち着いており就労訓練段階に適した状態であるため、就労移行支援が最も適切である。
選択肢考察
-
○ 1. 就労移行支援
一般企業への就労を希望する65歳未満の障害者を対象に、職業訓練・求職支援・職場定着支援を行うサービス。就労意欲を示し生活が安定しているAさんに最も適している。
-
× 2. 地域活動支援センター
障害者の創作活動や生産活動、社会交流の機会を提供する地域の通所施設。就労を明確に目指す段階よりも、地域社会との交流・日中の居場所を求める段階に適する。Aさんは就労を目標としているためより目的に合致する就労移行支援が優先される。
-
× 3. 居宅介護〈ホームヘルプ〉
自宅で入浴・排泄・食事・家事等の介護を行うサービス。Aさんは家事の手伝いができ自立した生活を送れているため対象外。
-
× 4. 短期入所〈ショートステイ〉
介護者が疾病等で介護できない場合に障害者を短期間施設に入所させるサービス。家族の介護負担軽減が目的で、Aさんの社会復帰支援には合わない。
-
× 5. 共同生活援助〈グループホーム〉
障害者が主に夜間に共同生活を営む住居で相談・日常生活援助を受けるサービス。Aさんは家庭内で落ち着いた生活ができているため現時点で必要性が低い。
障害者総合支援法に基づくサービスは『介護給付(居宅介護・短期入所・生活介護など)』と『訓練等給付(自立訓練・就労移行支援・就労継続支援A型/B型・共同生活援助など)』に大別される。就労関連では、一般就労を目指すのが『就労移行支援(原則2年)』、雇用契約を結び就労する『就労継続支援A型』、雇用契約なしで軽作業中心の『就労継続支援B型』、就労後の職場定着を支援する『就労定着支援』がある。地域活動支援センターはⅠ型〜Ⅲ型があり、地域の交流拠点として利用される。
統合失調症患者の回復段階に応じた社会資源の選択、特に就労希望者への就労移行支援の位置づけを問う問題。
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