薬物依存症の初回アセスメント
看護師国家試験 第107回 午後 第104問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 32歳、男性 )。自宅の部屋で多量の鎮咳薬を見つけた母親に心配され、自宅近くの病院を受診した。「5年前、仕事が忙しくなって風邪がなかなか治らないことがあった。そのときに処方された咳止めの薬を飲むと、頭がボーッとして気持ちが良かったのがきっかけで、近所の薬局で咳止めを買うようになった。3年前から飲む量が増えるようになり、やめられなくなっている。仕事もうまくいかなくなり、退職した」と言う。Aさんは紹介を受けた精神科を受診した。 このときにAさんから収集する情報として優先度が高いのはどれか。
- 1.排尿回数
- 2.咳嗽の有無
- 3.鎮咳薬の使用状況
- 4.生活上のストレス要因
対話形式の解説
博士
博士じゃ。Aさんは市販の咳止めを陶酔目的で5年使い続けておるのう。
アユム
依存症の典型的な経過ですね。どの情報を真っ先に集めるべきでしょうか。
博士
依存症のアセスメントの鉄則は、まず薬剤の使用状況を詳細に聴取することじゃ。
アユム
具体的にはどんな項目ですか。
博士
種類、1日の服用量、服用開始時期、最終使用時刻、そして離脱症状の有無じゃ。
アユム
最終使用時刻まで聞く必要があるのですね。
博士
そうじゃ、離脱症状が出るタイミングや急性中毒の危険を見極めるためじゃよ。
アユム
排尿回数の聴取はどうでしょう。
博士
今の緊急課題からは外れるのう。泌尿器症状より薬剤情報が先じゃ。
アユム
咳嗽の有無はどうですか。
博士
Aさんは咳を止めるために使っているのではなく、多幸感を得るために使っておる。咳の有無は本質から外れるぞ。
アユム
ストレス要因はいかがですか。
博士
依存の背景として後で必ず掘り下げるが、急性期にまず把握すべきは薬剤の使い方じゃ。
アユム
市販薬にもコデインやエフェドリンなどが入っていて依存性があるのですね。
博士
その通りじゃ。本人が過少申告する場合もあるから、残薬や購入履歴も確認するのが賢いのう。
POINT
薬物依存症の初回評価では、薬剤の種類、1日量、使用頻度、最終使用時刻、離脱症状の有無を確認することが最優先です。これらは急性中毒や退薬症状による身体的リスクを判断し、治療導入の安全性を担保するために欠かせません。ストレス要因や家族背景といった再発予防に関わる情報は次の段階で深めていきます。市販鎮咳薬は薬局で容易に入手できるため依存が見落とされやすく、客観的な残薬確認も有用な評価手法となります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん( 32歳、男性 )。自宅の部屋で多量の鎮咳薬を見つけた母親に心配され、自宅近くの病院を受診した。「5年前、仕事が忙しくなって風邪がなかなか治らないことがあった。そのときに処方された咳止めの薬を飲むと、頭がボーッとして気持ちが良かったのがきっかけで、近所の薬局で咳止めを買うようになった。3年前から飲む量が増えるようになり、やめられなくなっている。仕事もうまくいかなくなり、退職した」と言う。Aさんは紹介を受けた精神科を受診した。 このときにAさんから収集する情報として優先度が高いのはどれか。
解説:正解は3の鎮咳薬の使用状況です。Aさんは咳止めを「頭がボーッとして気持ちが良い」という目的で使用しており、薬物依存の典型的な経過を示しています。依存症のアセスメントでは、使用薬剤の種類、1日量、使用開始時期、使用頻度、最終使用日時、離脱症状の有無などを正確に把握することが治療方針決定の出発点です。これらの情報から退薬症状の危険性や急性中毒の可能性を評価し、安全な治療環境を設計していきます。
選択肢考察
-
× 1. 排尿回数
排尿回数は体液バランスや泌尿器疾患の評価指標ですが、薬物依存症の初期評価において最優先で聴取すべき情報ではありません。
-
× 2. 咳嗽の有無
現在の鎮咳薬使用は呼吸器症状の治療ではなく精神作用目的の乱用です。咳嗽の有無は本疾患の本質的評価項目にはなりません。
-
○ 3. 鎮咳薬の使用状況
依存症治療の出発点は薬剤の種類・量・頻度・最終使用時刻・離脱症状の有無の把握です。退薬症状や急性中毒のリスク評価にも直結するため最優先で聴取する項目です。
-
× 4. 生活上のストレス要因
ストレス要因は依存形成の背景や再発予防の観点で重要ですが、急性期の安全確保のためにはまず薬剤使用状況を把握することが先です。優先度では薬剤情報が上位にきます。
市販鎮咳薬にはジヒドロコデインやメチルエフェドリンなどが含まれ、乱用により多幸感・眠気・陶酔感を生じます。コデインはオピオイド受容体を刺激し依存性があり、エフェドリンは覚醒作用をもたらします。依存症では本人が過少申告することも多いため、薬局での購入履歴や残薬の確認など客観的情報も組み合わせます。
薬物依存症の初回評価では使用薬剤の種類・量・頻度・離脱症状の把握が最優先です。安全管理と治療計画の土台となります。
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