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ASDの方の混乱にどう応えるか、視覚で伝える看護の力

看護師国家試験 第109回 午前 第113問 / 精神看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第113問

次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん(男性、26 歳、会社員)は、高校時代に自閉症スペクトラム( autism spectrum disorder )障害の診断を受け、外来通院をしながら仕事を続けていた。これまでの職場ではストレスが少なく、規則正しい生活ができていた。しかし、1 か月前に新しい職場に異動になってから生活が不規則となり、数日前より無断欠勤が続いている。同居している家族に対してAさんは「家にいると仕事のことばかり考えてしまい眠れない。食欲もないし、環境を変えてゆっくり休みたい」と話したため、Aさんは家族とともに精神科外来を受診し、休養目的で任意入院することになった。 入院中のAさんは、面会や検査等の予定が急に変更になると混乱し、看護師に対して予定を繰り返し確認することがあった。 このときのAさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

  1. 1.文字や図を用いて説明する。
  2. 2.確認を繰り返す理由を尋ねる。
  3. 3.複数の情報を同時に提供する。
  4. 4.状況を考えて行動するよう説明する。

対話形式の解説

博士 博士

Aさんは予定変更のたびに混乱して何度も確認してくるそうじゃ。なぜこのような行動が起きるか分かるかのう?

サクラ サクラ

自閉スペクトラム症の方は決まった流れを大切にするというか…同じであることへのこだわりが強いと聞いたことがあります。

博士 博士

正解じゃ。これを『同一性への固執』と呼ぶ。予定が変わると強い不安を感じて何度も確認する行動が現れるのじゃ。

サクラ サクラ

口頭で説明するだけでは足りないのでしょうか?

博士 博士

そこが重要なポイントじゃ。ASDの方は一般に聴覚情報より視覚情報の処理が得意で、これを『視覚優位性』という。文字や図で示すと情報が残り続けるので安心できる。

サクラ サクラ

なるほど、紙に書いて渡せば何度でも見返せますね。

博士 博士

その通り。ホワイトボードに『14時 血液検査』『15時 面会』と書き、時間になったら印を付けるなど、スケジュールを見える化するのじゃよ。

サクラ サクラ

選択肢2の『確認を繰り返す理由を尋ねる』はどうして不適切なのでしょう?

博士 博士

ASDの方は自分の感情や行動の背景を言語化するのが苦手で、理由を問われると答えに窮して、かえって混乱が深まる。

サクラ サクラ

選択肢3の複数情報を同時に提供するのもよくなさそうですね。

博士 博士

複数の情報処理は苦手な特性じゃ。情報は一つずつ、順序立てて伝える。それが鉄則じゃよ。

サクラ サクラ

選択肢4の『状況を考えて行動する』は、抽象的過ぎるから不適切ということですか?

博士 博士

その通り。ASDの方は臨機応変な対応が苦手なので、具体的にどう動けばいいかを示すことが必要じゃ。『状況を考えて』のような曖昧な指示は混乱を招くだけじゃ。

サクラ サクラ

視覚的に、具体的に、一つずつ、が三原則ですね。

博士 博士

うむ。これを構造化と呼び、TEACCHプログラムなどで体系化されておる。時間・空間・視覚の構造化を組み合わせて支援するのじゃ。

サクラ サクラ

一般病棟でも使える考え方ですね。入院オリエンテーションや術前説明でも応用できそうです。

博士 博士

そうじゃ。ASDに限らず、認知症や小児、言語が違う患者にも役立つ普遍的なアプローチなのじゃよ。

POINT

自閉スペクトラム症(ASD)の特性には、同一性への固執・視覚優位性・抽象的な表現の理解困難・複数情報の同時処理の苦手さなどがあります。予定変更で混乱し確認を繰り返すAさんには、文字や図、スケジュール表など視覚媒体を用いて予定を提示することが最も適切で、情報が残り続けることで本人が繰り返し確認でき安心感が得られます。口頭のみの説明、理由を問う、複数情報の同時提示、抽象的な指示はいずれも混乱を助長します。TEACCHプログラムに代表される『構造化』の考え方は、医療現場でも検査予定の視覚化や絵カード使用として応用され、ASDの人のみならず認知症高齢者や小児、多言語話者への看護にも活かせる普遍的な技法として重要です。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん(男性、26 歳、会社員)は、高校時代に自閉症スペクトラム( autism spectrum disorder )障害の診断を受け、外来通院をしながら仕事を続けていた。これまでの職場ではストレスが少なく、規則正しい生活ができていた。しかし、1 か月前に新しい職場に異動になってから生活が不規則となり、数日前より無断欠勤が続いている。同居している家族に対してAさんは「家にいると仕事のことばかり考えてしまい眠れない。食欲もないし、環境を変えてゆっくり休みたい」と話したため、Aさんは家族とともに精神科外来を受診し、休養目的で任意入院することになった。 入院中のAさんは、面会や検査等の予定が急に変更になると混乱し、看護師に対して予定を繰り返し確認することがあった。 このときのAさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 1 です。自閉スペクトラム症の人は、言語による耳からの情報処理よりも視覚情報の処理が得意とされ、見通しが立たない状況では強い不安と混乱を生じやすい特性があります。予定変更への混乱に対しては、時刻・場所・内容を文字やイラスト、スケジュール表などの視覚媒体で明確に提示することで、情報が残り続け、繰り返し確認できるようになり安心感が得られます。逆に口頭のみの説明や、感情に訴えかける働きかけは、情報が流れていくため不安を助長しやすく適切ではありません。

選択肢考察

  1. 1.  文字や図を用いて説明する。

    視覚優位性という特性に合致した支援方法。予定を紙に書いたりホワイトボードで示したりすれば、Aさんは自分で何度でも確認でき、繰り返し質問する必要が減る。環境調整の基本対応である。

  2. × 2.  確認を繰り返す理由を尋ねる。

    ASDの人は自分の感情や行動の理由を言語化することが難しく、理由を問われると答えられずにさらに混乱したり、詰問されていると感じる恐れがある。原因追及よりも安心できる情報提供が優先される。

  3. × 3.  複数の情報を同時に提供する。

    同時並行の情報処理は苦手な特性であり、複数情報を一度に伝えると整理できず混乱を増す。情報は一つずつ、順を追って提示することが原則である。

  4. × 4.  状況を考えて行動するよう説明する。

    臨機応変に状況を判断する能力に困難を抱える特性があるため、抽象的な指示はかえって混乱を招く。具体的にどう動けばよいかを提示することが必要である。

ASDの支援に用いられる『構造化』という考え方では、時間の構造化(スケジュール表の提示)、空間の構造化(場所と役割を明確化)、視覚的構造化(写真・絵カード・文字)を組み合わせる。代表的なプログラムとしてTEACCHが知られ、医療現場でも検査予定表の視覚化、個別の予定カード、タイマーの使用などに応用されている。急な予定変更が避けられない場合も、変更内容を早めに書面で示し、本人が心の準備をする時間を確保することが有効である。

ASDの視覚優位性と同一性への固執という特性を踏まえた看護対応を問う問題。予定変更への混乱には視覚的な情報提示が基本となる。