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医療者と患者は「ともに作る」仲間。共同創造(コプロダクション)とは何か

看護師国家試験 第114回 午後 第69問 / 精神看護学 / 精神看護の対象理解と支援

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第69問

精神疾患の治療を受けている人との共同創造(コプロダクション)で正しいのはどれか。

  1. 1.患者が医療者の指示に従って治療を受ける。
  2. 2.患者が医療者から病気や治療について十分な説明を受ける。
  3. 3.治療やケアの計画から提供まで医療者と患者がともに関わる。
  4. 4.自ら助けを求めることが難しい人に対して、積極的に働きかけ支援を提供する。

対話形式の解説

博士 博士

リカバリーとセットで覚えてほしいキーワードが共同創造、英語ではコプロダクションじゃ。

サクラ サクラ

共同創造って言葉、最近よく耳にしますがイメージが湧きません。

博士 博士

もとは行政サービス論の用語で、行政と住民がサービスを共に作るという考え方じゃ。これが精神保健福祉に応用されて、医療者と当事者が対等なパートナーとしてケアを共に作る、という概念になったのじゃ。

サクラ サクラ

対等なパートナーって、医療者が指導するのとは違うんですね。

博士 博士

全然違う。選択肢1「指示に従って治療を受ける」はパターナリズム、つまり「父権主義」の構図じゃ。

サクラ サクラ

父親が子に教えるように上下関係がある関わりですね。

博士 博士

その通り。安全な医療を保つ場面では一定の意義もあるが、長期的な精神医療や慢性疾患のケアでは患者の主体性を奪い、リカバリーを阻むことが多いと指摘されておる。

サクラ サクラ

選択肢2の「十分な説明を受ける」はインフォームド・コンセントですよね?これも共同創造の一部に思えますが…。

博士 博士

鋭い視点じゃ。インフォームド・コンセントは説明と同意、いわば共同創造の前提条件にはなる。だが説明を受けただけで終わるなら、依然として情報の流れは医療者→患者の一方向じゃ。コプロダクションは「計画から提供、評価まで共に関わる」という双方向の協働まで含む点が違うのじゃ。

サクラ サクラ

選択肢4の「自ら助けを求めにくい人に積極的に支援を届ける」はアウトリーチですね。

博士 博士

その通り。ACTや訪問看護などで重要な実践じゃが、これも医療者から当事者への一方向の働きかけが基本構造じゃ。共同創造とはまた別の概念じゃな。

サクラ サクラ

選択肢3「計画から提供まで医療者と患者がともに関わる」が定義そのものなんですね。

博士 博士

そう。具体例を挙げると、退院支援計画を当事者と一緒に作る、ピアサポーターを支援チームに迎える、サービス評価に当事者の声を組み込む、研修のプログラムを当事者と一緒に企画する、などじゃ。

サクラ サクラ

当事者の経験そのものが価値ある知識になる、ということですか?

博士 博士

お見事じゃ。「経験専門知(experiential expertise)」という言い方をする。専門職の知と当事者の知は質が異なるが対等に価値があるという考え方じゃ。

サクラ サクラ

共同意思決定(SDM)とは違うんですか?

博士 博士

近い概念じゃ。SDMは「治療方針を決めるとき」に焦点があるが、コプロダクションはサービス全体・計画・運営・評価まで広く含む。SDMはコプロダクションの一形態とも言えるな。

サクラ サクラ

看護師にできることは何ですか?

博士 博士

まず「あなたはどうしたい?」と本人の声をきちんと聴くこと。退院後生活、服薬、再発時の対応、希望する暮らし方を本人の言葉で聞いてケア計画に反映する。看護師の専門性は「奪う」ためでなく「ともに作る」ために使うのじゃ。

サクラ サクラ

リカバリーと共同創造、両輪で動くんですね。

POINT

共同創造(コプロダクション)とは、患者と医療者が対等なパートナーとして治療やケアの計画から提供、評価までのあらゆる段階に共に関わる考え方で、リカバリー志向の精神医療における中核理念です。一方向的に指示を受けるパターナリズム、説明を受けるインフォームド・コンセント、医療者主導で支援を届けるアウトリーチとは構造が異なり、双方向の協働が特徴です。当事者の経験そのものを「経験専門知」として尊重し、ピアサポーターの参画や当事者参加型サービス評価などで具体化されます。共同意思決定(SDM)はコプロダクションの一部として位置づけられ、治療方針決定の場面で実践されます。看護師は本人の声を聴き、ケア計画にともに反映させる伴走者として、共同創造を日常実践に落とし込む役割を担います。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:精神疾患の治療を受けている人との共同創造(コプロダクション)で正しいのはどれか。

解説:正解は 3 です。共同創造(コプロダクション)とは、サービス利用者である患者と、サービス提供者である医療者・支援者が対等なパートナーとして、ケアや治療、サービス、政策の計画・実施・評価のあらゆる段階に共に関与する考え方である。患者を「サービスを受ける受動的存在」ではなく「ともに作り上げる主体」と位置づける点が特徴で、リカバリー志向の精神医療における中核理念となっている。

選択肢考察

  1. × 1.  患者が医療者の指示に従って治療を受ける。

    医療者主導で患者は受け身という構図はパターナリズムであり、対等な関係を前提とする共同創造とは正反対の考え方である。

  2. × 2.  患者が医療者から病気や治療について十分な説明を受ける。

    これはインフォームド・コンセントの説明であり、共同創造の基盤にはなるが、計画から実施まで「ともに関わる」というコプロダクションの本質ではない。

  3. 3.  治療やケアの計画から提供まで医療者と患者がともに関わる。

    計画立案、実施、評価のすべての段階で患者と医療者が対等に協働する点が共同創造の中核であり、本選択肢が定義そのものを表している。

  4. × 4.  自ら助けを求めることが難しい人に対して、積極的に働きかけ支援を提供する。

    これは医療者主導で支援を届けるアウトリーチの説明であり、共同創造とは目的・主体構造が異なる。

共同創造の関連概念として、患者の経験や知識を「経験専門知(experiential expertise)」として価値づける考え方、SDM(Shared Decision Making:共同意思決定)、ピアサポート、ピアスタッフ採用、サービス評価への当事者参加などがある。日本では精神保健医療福祉のあり方検討で「当事者・家族の参画」が政策レベルで強調されており、ピアサポーター養成研修や当事者参画型のWRAP実践が広がっている。

共同創造(コプロダクション)の定義と、パターナリズム・インフォームド・コンセント・アウトリーチとの違いを区別できるかを問う問題である。