ALSと運動ニューロンの関係を深く理解しよう
看護師国家試験 第111回 午後 第29問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
上位運動ニューロン徴候および下位運動ニューロン徴候の有無について表に示す。 筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉(amyotrophic lateral sclerosis)において正しいのはどれか。
- 1.a
- 2.b
- 3.c
- 4.d
対話形式の解説
博士
今日は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の問題じゃ。ALSは神経難病の代表で、国家試験でもよく出題されるぞ。
サクラ
博士、ALSはどのような疾患なのですか?
博士
ALSは大脳皮質から脊髄前角、そして末梢神経までの運動ニューロンが進行性に変性・消失する原因不明の神経変性疾患じゃ。身体を動かす神経が徐々に失われていくのじゃ。
サクラ
上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの違いは何ですか?
博士
上位運動ニューロンは大脳皮質の運動野から脊髄前角細胞までを結ぶ神経じゃ。下位運動ニューロンは脊髄前角細胞から末梢の筋肉までを結ぶ神経じゃな。
サクラ
ALSではどちらが障害されるのですか?
博士
正解は1のaじゃ。ALSは上位・下位運動ニューロンの両方が変性する疾患で、両方の徴候が現れるのが特徴じゃ。
サクラ
上位運動ニューロン徴候にはどんなものがありますか?
博士
痙縮、腱反射亢進、バビンスキー徴候陽性などの病的反射じゃ。筋緊張が高まって動かしにくくなる。
サクラ
下位運動ニューロン徴候はどうですか?
博士
筋萎縮、線維束性収縮、筋力低下、腱反射消失などじゃ。筋肉そのものが痩せて力が入らなくなる。
サクラ
bのパターンはどの疾患ですか?
博士
上位運動ニューロン徴候のみなら原発性側索硬化症、脊髄損傷、脳血管障害などが該当する。ALSとは区別される。
サクラ
cのパターンはどうですか?
博士
下位運動ニューロン徴候のみなら脊髄性筋萎縮症(SMA)やポリオ後症候群などが該当する。これもALSではない。
サクラ
ALSで特徴的な症状はありますか?
博士
四大陰性徴候といって、眼球運動障害・膀胱直腸障害・感覚障害・認知機能障害は起こりにくいのが特徴じゃ。意識は保たれたまま徐々に筋力が失われるため、精神的苦痛が大きい。
サクラ
治療法はありますか?
博士
リルゾールやエダラボンが進行抑制薬として使われる。根治療法はまだなく、呼吸筋麻痺が進行すると人工呼吸管理が必要になる。看護では多職種連携で意思疎通手段の確保(文字盤・視線入力装置)や緩和ケアが重要じゃぞ。
POINT
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方が進行性に変性する神経難病です。両方の徴候(痙縮・腱反射亢進と筋萎縮・線維束性収縮など)が共存するのが特徴で、眼球運動・感覚・膀胱直腸機能・認知機能は比較的保たれます。リルゾール・エダラボンが進行抑制薬として使用され、看護では意思疎通手段の確保や呼吸管理、緩和ケアを多職種で担います。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:上位運動ニューロン徴候および下位運動ニューロン徴候の有無について表に示す。 筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉(amyotrophic lateral sclerosis)において正しいのはどれか。
解説:正解は 1 です。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は大脳皮質運動野から脊髄前角細胞に至る上位運動ニューロンと、脊髄前角細胞から末梢の筋肉に至る下位運動ニューロンの両方が変性・消失する進行性の神経変性疾患です。そのため上位・下位運動ニューロン徴候の両方が認められるのが特徴で、「a」が正解となります。
選択肢考察
-
○ 1. a
上位・下位運動ニューロン徴候の両方が認められるパターン。ALSは両方の運動ニューロンが変性する疾患で、これが特徴的な臨床像。
-
× 2. b
上位運動ニューロン徴候のみのパターン。原発性側索硬化症や脊髄損傷、脳血管障害などが該当するがALSではない。
-
× 3. c
下位運動ニューロン徴候のみのパターン。脊髄性筋萎縮症やポリオ後症候群などが該当するがALSではない。
-
× 4. d
運動ニューロン徴候がいずれも認められないパターン。これは運動ニューロン疾患ではない。
上位運動ニューロン徴候には痙縮・腱反射亢進・病的反射(バビンスキー徴候)陽性などが、下位運動ニューロン徴候には筋萎縮・線維束性収縮・筋力低下・腱反射消失などがあります。ALSは発症後数年で呼吸筋麻痺に至る予後不良の疾患で、眼球運動・膀胱直腸機能・感覚・知能は比較的保たれる「四大陰性徴候」が特徴です。治療にはリルゾールやエダラボンがあり、進行抑制効果が期待されています。
ALSが上位・下位運動ニューロンの両方を侵す疾患であることを問う問題。運動ニューロン疾患の病変部位と臨床徴候の関連理解がポイント。
「脳・神経系」の関連記事
-
高次脳機能障害——「失行」って結局なに?
高次脳機能障害の症状の中から「失行」に該当する行動を見分ける問題。記憶障害・遂行機能障害・地誌的障害との違い…
114回
-
額のしわで見抜く!末梢性顔面神経麻痺の正体
末梢性顔面神経麻痺の特徴は患側顔面の表情筋全体の麻痺。額のしわ寄せ不能と口角下垂を選び、眼瞼下垂(動眼神経)…
114回
-
JCSをスッキリ整理—「大声で開眼してすぐ閉眼」は何点?
JCSの3桁分類と各段階の判定基準を正確に理解し、症例の表現から該当レベルを選ぶ問題。
114回
-
くも膜下出血クリッピング術後3時間の頭痛—鎮痛は治療の一部
くも膜下出血術後早期の頭痛に対し、バイタルとドレーン所見から鎮痛薬投与の適応と判断できるかを問う問題。
114回
-
退院1か月後の「歩行・認知・失禁」三徴候—見逃せない正常圧水頭症
くも膜下出血の遅発合併症として正常圧水頭症の三徴候を理解し、パーキンソン病との鑑別点(書字の保持)を押さえる…
114回