開頭術後の看護—頭蓋内圧を上げないためのケア
看護師国家試験 第111回 午後 第94問 / 成人看護学 / 脳・神経系
国試問題にチャレンジ
次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部MRI検査で、脳腫瘍(brain tumor)と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。 帰室後の看護として適切なのはどれか。
- 1.発熱時の冷罨法は禁忌である。
- 2.徐脈時は経過観察とする。
- 3.ベッドの頭側を挙上する。
- 4.頸部を前屈させる。
対話形式の解説
博士
Aさんは38歳女性で、突然の頭痛で倒れて脳腫瘍と診断され、開頭術を受けて帰室した場面だよ。
アユム
開頭術後の主な合併症は何ですか?
博士
術後出血、脳浮腫、脳血管攣縮、痙攣、髄液漏・髄膜炎、深部静脈血栓症などが挙げられるよ。特に脳浮腫は24〜72時間後にピークを迎えるから注意が必要だね。
アユム
では、看護ではどんな観察と予防が重要になりますか?
博士
最も大切なのは頭蓋内圧亢進の予防と早期発見だね。では選択肢を見ていこう。
アユム
1の「発熱時の冷罨法は禁忌」は正しいですか?
博士
いや、逆なんだ。発熱は脳代謝を亢進させて頭蓋内圧上昇を招くから、冷罨法や解熱薬で体温管理を積極的に行う必要がある。
アユム
2の「徐脈時は経過観察」はどうでしょう。
博士
これは危険だよ。血圧上昇と徐脈、不規則呼吸の組み合わせはクッシング現象と呼ばれ、頭蓋内圧亢進による脳ヘルニア切迫を示すサインなんだ。即座に医師へ報告が必要だよ。
アユム
3の「ベッドの頭側を挙上する」は?
博士
これが正解。15〜30度の頭側挙上で脳の静脈還流が促進されて頭蓋内圧亢進と脳浮腫を予防できる。誤嚥予防にも有効だよ。
アユム
4の「頸部を前屈させる」はどうでしょう?
博士
頸部の過度な屈曲や回旋は頸静脈を圧迫し静脈還流を妨げるから、頭蓋内圧を上昇させてしまうんだ。頸部は正中位を保つのが原則だね。
アユム
体位一つでも根拠があるのですね。他に注意することは?
博士
静穏な環境を保ち、便秘による怒責を避ける、気管吸引は短時間でまとめる、痙攣予防薬の確実な投与、といった点も重要だよ。瞳孔所見や意識レベルは頻回に観察しよう。
アユム
帰室後は観察項目がとても多いですね。しっかり覚えます。
POINT
開頭術後は脳浮腫や術後出血による頭蓋内圧亢進が最も警戒すべき合併症であり、ベッドの頭側を15〜30度挙上することで脳からの静脈還流を促進し頭蓋内圧を抑えます。発熱は脳代謝を亢進させるため冷罨法は禁忌ではなく積極的な体温管理が必要で、徐脈・血圧上昇・不規則呼吸のクッシング現象は脳ヘルニア切迫のサインで即時報告が原則です。頸部の過度な屈曲・回旋は頸静脈還流を妨げるため避け、正中位を保つことが重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み以下の問いに答えよ。 Aさん(38歳、会社員、女性)は夫と2人暮らし。通勤中に突然の頭痛を訴えて倒れ、救急搬送された。入院後に行った頭部CT検査および頭部MRI検査で、脳腫瘍(brain tumor)と診断された。Aさんは脳腫瘍摘出のために開頭術を受けた。 帰室後の看護として適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。開頭術後は脳浮腫や術後出血による頭蓋内圧亢進が主要な合併症で、予防のためにはベッドの頭側を15〜30度挙上することが推奨されます。頭部挙上は脳からの静脈還流を促進し、頭蓋内圧の上昇を抑える効果があります。同時に頸部の過度な屈曲・回旋を避け、静脈還流を妨げないよう体位を調整します。
選択肢考察
-
× 1. 発熱時の冷罨法は禁忌である。
発熱は脳代謝を亢進させ脳酸素需要が増えるため頭蓋内圧亢進を助長します。開頭術後の発熱時は冷罨法や解熱薬を用いて体温管理を行うことが推奨され、冷罨法は禁忌ではありません。
-
× 2. 徐脈時は経過観察とする。
開頭術後の徐脈は頭蓋内圧亢進によるクッシング現象(血圧上昇・徐脈・不規則呼吸)の可能性があり、脳ヘルニア進行の危険サインです。経過観察ではなく即座に医師へ報告・対応する必要があります。
-
○ 3. ベッドの頭側を挙上する。
頭側を15〜30度挙上することで脳の静脈還流が促進され、頭蓋内圧亢進と脳浮腫を予防できます。開頭術後の標準的体位であり、誤嚥予防にも有効です。
-
× 4. 頸部を前屈させる。
頸部の前屈・過伸展・回旋は頸静脈を圧迫し静脈還流を障害するため、頭蓋内圧が上昇する危険があります。開頭術後は頸部を正中位に保つことが原則です。
開頭術後の主要合併症は①術後出血(24時間以内に好発)、②脳浮腫(24〜72時間でピーク)、③脳血管攣縮、④髄液漏・髄膜炎、⑤痙攣発作、⑥深部静脈血栓症など。看護では意識レベル(GCS/JCS)・瞳孔所見・運動麻痺・バイタルサインを頻回に観察し、クッシング現象や瞳孔不同が出現したら直ちに報告します。頭側挙上・頸部中間位・静穏な環境・便通管理(怒責回避)も頭蓋内圧コントロールに重要です。
開頭術後の頭蓋内圧亢進予防における適切な体位管理を問うている。
「脳・神経系」の関連記事
-
高次脳機能障害——「失行」って結局なに?
高次脳機能障害の症状の中から「失行」に該当する行動を見分ける問題。記憶障害・遂行機能障害・地誌的障害との違い…
114回
-
額のしわで見抜く!末梢性顔面神経麻痺の正体
末梢性顔面神経麻痺の特徴は患側顔面の表情筋全体の麻痺。額のしわ寄せ不能と口角下垂を選び、眼瞼下垂(動眼神経)…
114回
-
JCSをスッキリ整理—「大声で開眼してすぐ閉眼」は何点?
JCSの3桁分類と各段階の判定基準を正確に理解し、症例の表現から該当レベルを選ぶ問題。
114回
-
くも膜下出血クリッピング術後3時間の頭痛—鎮痛は治療の一部
くも膜下出血術後早期の頭痛に対し、バイタルとドレーン所見から鎮痛薬投与の適応と判断できるかを問う問題。
114回
-
退院1か月後の「歩行・認知・失禁」三徴候—見逃せない正常圧水頭症
くも膜下出血の遅発合併症として正常圧水頭症の三徴候を理解し、パーキンソン病との鑑別点(書字の保持)を押さえる…
114回