死前喘鳴のゴロゴロ音にどう向き合うか
看護師国家試験 第112回 午後 第46問 / 成人看護学 / 終末期看護
国試問題にチャレンジ
臨死期にある患者の家族から「のどがゴロゴロと鳴っていて苦しんでいます。この苦痛をとってあげたい」と相談された。看護師が、呼吸音を聴取すると咽頭に雑音を認めた。 患者の苦痛を緩和するための対応で適切なのはどれか。
- 1.顔を横に向ける。
- 2.気管支拡張薬を用いる。
- 3.口腔内をガーゼで拭く。
- 4.雑音が消失するまで吸引する。
対話形式の解説
博士
今回は臨死期のケアに関する問題じゃ。家族が『のどがゴロゴロ鳴って苦しそう』と訴えた場面じゃな。
アユム
臨死期でそういう音が出ることがあるんですか?
博士
ある。これを『死前喘鳴(しぜんぜんめい、death rattle)』と呼ぶ。臨死期の患者さんの40〜90%に見られるといわれておる非常に頻度の高い現象じゃ。
アユム
何が原因でゴロゴロ鳴るんですか?
博士
意識レベルが低下すると嚥下反射や咳嗽反射が弱まり、唾液や気道分泌物が咽頭部に貯留する。呼吸のたびに空気がその貯留物を振動させるからゴロゴロ音が生じるのじゃ。
アユム
ということは患者さんは苦しくないんですか?
博士
ここが大事なポイントじゃ。患者さん本人は意識レベルが低下しているため、苦痛はほとんど感じていないと考えられておる。ただ家族にとっては『喉が詰まって苦しんでいる』ように見えて強い心理的苦痛となる。
アユム
じゃあ家族への説明が大切なんですね。
博士
そうじゃ。まず『この音は呼吸の最終段階のサインであり、ご本人は苦しんで音を出しているわけではないこと』を丁寧に伝える。そのうえで侵襲の少ない対応をとる。
アユム
選択肢では『顔を横に向ける』が正解とのこと。どうして効くんですか?
博士
重力を利用するのじゃ。顔を横に向けたり軽度の側臥位にすると、咽頭の貯留物が口腔側や頬側に流れて振動部位から移動する。結果として音が軽減する。
アユム
吸引ではだめなんですか?雑音が消えるまで吸えば解決する気がするんですが。
博士
これがひっかけじゃ。吸引はカテーテルを挿入するだけで大きな刺激になる。臨死期の衰弱した患者さんに頻回・持続的に吸引すると、粘膜損傷・嘔吐・血圧変動を招き、むしろ苦痛を増大させる。やる場合も最小限・短時間に抑える。
アユム
気管支拡張薬はどうですか?
博士
死前喘鳴は気管支の狭窄ではなく咽喉頭の貯留物が原因じゃから、気管支拡張薬は効果がない。むしろ分泌物が気管奥へ入り誤嚥性肺炎のリスクを上げる可能性すらある。
アユム
口腔ケアは?
博士
口腔ケア自体は有用じゃが、死前喘鳴の原因部位は口腔より奥の咽頭じゃから根本解決にはならん。加えて開口困難な状態で無理に拭くと苦痛を与える場合もある。
アユム
薬物療法はないんですか?
博士
ブチルスコポラミンなどの抗コリン薬で分泌を抑制する方法が使われることがある。ただし既に貯留した分泌物自体は減らせないから、体位管理と併用するのが基本じゃ。
アユム
臨死期のケアって、治療というより看取りの質が問われるんですね。
博士
その通り。家族が『手を握って声をかける』など最後の時間を大切に過ごせるよう支えるのも看護師の重要な役割じゃ。
POINT
臨死期の咽頭ゴロゴロ音は死前喘鳴と呼ばれ、嚥下・咳嗽反射の低下により唾液や気道分泌物が咽喉頭に貯留し振動することで生じます。患者本人は意識レベル低下のため苦痛は少ないとされますが、家族の心理的負担は大きく、対応の原則は侵襲を最小限にしつつ家族の不安を和らげることです。顔を横に向ける・軽度側臥位をとるといった体位の工夫で重力により貯留物を移動させ、雑音を軽減するのが第一選択となります。気管支拡張薬は適応外、雑音消失までの吸引は過剰侵襲となり不適切です。看護師は『この音は苦しんで発しているものではない』と家族に説明しつつ、手を握る・声をかけるなどの関わりを促し、看取りの質を高めるケアを提供することが求められます。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:臨死期にある患者の家族から「のどがゴロゴロと鳴っていて苦しんでいます。この苦痛をとってあげたい」と相談された。看護師が、呼吸音を聴取すると咽頭に雑音を認めた。 患者の苦痛を緩和するための対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。臨死期の咽頭でのゴロゴロ音は『死前喘鳴(death rattle)』と呼ばれ、唾液や気道分泌物が咳嗽反射・嚥下反射の低下により咽喉頭に貯留して呼吸とともに振動することで生じる。患者本人の苦痛は少ないと考えられているが、家族にとっては苦しそうに見えるため心理的負担が大きい。対応の基本は侵襲の少ないケアで分泌物を排出・移動させることで、顔を横に向ける、または軽度の側臥位をとることで重力により咽頭貯留物が口腔側へ流れ、雑音が軽減しやすくなる。
選択肢考察
-
○ 1. 顔を横に向ける。
顔を横に向けることで重力により咽頭の貯留物が口腔側へ流れ、振動によるゴロゴロ音が軽減する。侵襲が少なく、患者に負担をかけずに家族の安心にもつながる適切な対応である。
-
× 2. 気管支拡張薬を用いる。
死前喘鳴は気管支の狭窄によるものではなく、咽喉頭の貯留分泌物の振動によるものなので、気管支拡張薬は効果がない。むしろ貯留物が気管深くへ移動し誤嚥性肺炎のリスクを高める可能性もある。
-
× 3. 口腔内をガーゼで拭く。
口腔ケア自体は有用だが、死前喘鳴の原因は口腔より奥の咽頭部貯留物であるため、ガーゼによる口腔清拭では根本的な解決にならない。また開口困難時に無理に行うと苦痛を与える恐れもある。
-
× 4. 雑音が消失するまで吸引する。
吸引は刺激が強く、臨死期の衰弱した患者に大きな侵襲を与える。頻回・持続的な吸引は粘膜損傷、嘔吐、血圧変動、呼吸パターン変化を招き、むしろ苦痛を増大させる。適応がある場合も短時間・最小限に留める。
死前喘鳴はtype 1(真性:主に唾液が原因)とtype 2(偽性:下気道分泌物の貯留)に分けられ、発生頻度は臨死期の患者の40〜90%に及ぶとされる。患者自身の意識レベルはすでに低下しており、本人の苦痛は少ないとされているが、家族の心理的苦痛が大きいため、家族への説明とケアが重要となる。薬物療法として抗コリン薬(ブチルスコポラミン、スコポラミン、グリコピロレート等)が分泌抑制に用いられることがあるが、一度貯留した分泌物自体は減らせないため体位管理と併用される。家族には『この音は患者さんの呼吸機能の最終段階のサインであり、苦しんで発しているものではないこと』を丁寧に説明し、手を握る・声をかけるなどの関わりを促すことが重要である。
臨死期に特有の死前喘鳴の病態と緩和ケアの原則を問う問題。侵襲を最小限にしつつ家族の心理的支援を含めた対応を選ぶことがポイント。
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