骨をむしばむ抗体工場〜多発性骨髄腫の細胞像
看護師国家試験 第112回 午前 第29問 / 成人看護学 / 血液・免疫系
国試問題にチャレンジ
多発性骨髄腫(multiple myeloma)で腫瘍化しているのはどれか。
- 1.B細胞
- 2.T細胞
- 3.形質細胞
- 4.造血幹細胞
対話形式の解説
博士
今日は多発性骨髄腫を学ぶぞ。名前は聞いたことあるかのう?
サクラ
高齢者に多い血液のがんと聞きました。でも、どの細胞が悪くなるんでしたっけ?
博士
答えは『形質細胞』じゃ。B細胞が抗原刺激を受けて最終分化した、抗体を作る専門工場のような細胞じゃな。
サクラ
B細胞そのものががんになるんじゃないんですね。
博士
そこが紛らわしいポイント。B細胞ががん化すれば慢性リンパ性白血病やB細胞リンパ腫。形質細胞ががん化すれば多発性骨髄腫。分化段階で疾患名が変わるのじゃ。
サクラ
形質細胞が暴走すると何が起こるんですか?
博士
単一クローンの免疫グロブリン(M蛋白)を過剰に作りまくる。これが血液や尿に出てきて、骨・腎・血液にさまざまな障害を起こす。
サクラ
覚え方はありますか?
博士
『CRAB』じゃ。C:Calcium高値(高Ca血症)、R:Renal腎障害、A:Anemia貧血、B:Bone lesion骨病変。カニの手のように身体を攻撃するイメージじゃな。
サクラ
骨病変はどんな特徴がありますか?
博士
破骨細胞活性亢進で溶骨性病変ができ、X線で『打ち抜き像(punched-out lesion)』が見える。病的骨折や圧迫骨折、背部痛の原因になる。
サクラ
腎障害はなぜ起こるんですか?
博士
過剰に産生された軽鎖(Bence Jones蛋白)が尿細管を閉塞し、骨髄腫腎を生じる。高Ca血症や脱水、NSAIDs使用も腎障害を助長する。
サクラ
検査のポイントは?
博士
血清・尿中のM蛋白検出、血清免疫電気泳動、遊離軽鎖(FLC)測定、骨髄穿刺で形質細胞の割合評価、骨X線やMRI、PET。
サクラ
治療はどうなっていますか?
博士
近年進歩著しく、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ)、免疫調節薬(レナリドミド)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、自家造血幹細胞移植などを組み合わせる。予後は大きく改善したのう。
サクラ
看護のポイントは?
博士
骨折予防の生活指導、感染予防、腎保護のための十分な水分摂取、疼痛管理、高Ca血症の症状観察。移植期は感染管理が最重要じゃ。
サクラ
細胞の種類と疾患の結びつきが見えてきました。
POINT
多発性骨髄腫は、B細胞から最終分化した形質細胞が骨髄で腫瘍化し、モノクローナルな免疫グロブリン(M蛋白)を過剰産生する血液がんです。特徴的なCRABサイン(高Ca血症・腎障害・貧血・骨病変)として全身に多彩な症状を呈し、骨X線での打ち抜き像や尿中Bence Jones蛋白などが診断の手がかりとなります。近年はプロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗CD38抗体、自家造血幹細胞移植などの治療進歩により予後が改善しています。看護師は骨折予防、感染管理、腎保護のための水分管理、疼痛コントロールを含めた全身的ケアを通じて患者のQOLを支える役割を担います。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:多発性骨髄腫(multiple myeloma)で腫瘍化しているのはどれか。
解説:正解は 3 です。多発性骨髄腫はB細胞から最終分化した形質細胞が腫瘍化し、骨髄内でモノクローナルに増殖する血液がんである。腫瘍化した形質細胞(骨髄腫細胞)は単一クローンの免疫グロブリン(M蛋白)を過剰産生し、骨溶解性病変、腎障害、貧血、高Ca血症など多彩な症状(CRABサイン)を引き起こす。
選択肢考察
-
× 1. B細胞
B細胞は抗原刺激を受けると形質細胞へ分化する前段階の細胞。B細胞が腫瘍化する疾患は慢性リンパ性白血病や多くのB細胞性リンパ腫などで、多発性骨髄腫とは異なる。
-
× 2. T細胞
T細胞の腫瘍化は成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)やT細胞性リンパ腫などで、多発性骨髄腫は含まない。
-
○ 3. 形質細胞
多発性骨髄腫で腫瘍化するのは形質細胞(plasma cell)。骨髄で増殖しM蛋白を大量に産生する点が特徴。
-
× 4. 造血幹細胞
造血幹細胞レベルの腫瘍化は慢性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群などで見られるが、多発性骨髄腫は最終分化段階の形質細胞の疾患である。
多発性骨髄腫の典型所見はCRAB:C(Calcium上昇・高Ca血症)、R(Renal insufficiency・腎障害)、A(Anemia・貧血)、B(Bone lesion・溶骨性病変)。検査では血清または尿中にM蛋白(単クローン性グロブリン)、尿中Bence Jones蛋白(遊離軽鎖)、骨髄中形質細胞の増加、骨X線で打ち抜き像(punched-out lesion)が認められる。治療はプロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ)、免疫調節薬(レナリドミド)、抗CD38抗体(ダラツムマブ)、自家造血幹細胞移植などが組み合わされ、近年予後が大きく改善している。
造血細胞の分化系譜を理解し、多発性骨髄腫=形質細胞腫瘍=M蛋白産生という連関を押さえる問題。
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