膵頭十二指腸切除術のドレーン留置部位 〜ウインスロー孔を制す者は術後管理を制す〜
看護師国家試験 第114回 午前 第52問 / 成人看護学 / 周術期看護
国試問題にチャレンジ
膵頭十二指腸切除術においてドレーンを留置する場所で正しいのはどれか。
- 1.Magendie<マジャンディー>孔
- 2.Winslow<ウインスロー>孔
- 3.Luschka<ルシュカ>孔
- 4.Monro<モンロー>孔
対話形式の解説
博士
今日は膵頭十二指腸切除術、いわゆるPDのドレーンについて学ぶぞ。
アユム
PDってかなり大きな手術ですよね。何を切除するんでしたっけ?
博士
膵頭部・十二指腸・胆嚢・遠位胆管・所属リンパ節を一括して切除する手術じゃ。再建では空腸を使って三吻合する。
アユム
三吻合とは?
博士
膵腸吻合、胆管空腸吻合、そして胃空腸または十二指腸空腸吻合の3つじゃ。それぞれが術後の弱点になり得る。
アユム
なるほど、その吻合部から液体が漏れたら大変ですね。
博士
その通り。膵液瘻・胆汁瘻・後出血がPDの三大合併症と言われておる。だからこそ漏れを早期に検知するためにドレーンを置くのじゃ。
アユム
選択肢にはマジャンディー孔、ウインスロー孔、ルシュカ孔、モンロー孔が並んでいますね。
博士
ふむ、よく見ると「ウインスロー孔」以外はすべて脳の解剖構造じゃ。
アユム
マジャンディー孔とルシュカ孔は脳室から脳脊髄液を出す孔ですよね。モンロー孔は側脳室と第3脳室の間?
博士
その通り。腹部のドレーン留置とは無関係じゃ。
アユム
ウインスロー孔ってどこにあるんですか?
博士
肝十二指腸間膜の背側、網嚢と腹腔をつなぐ唯一の孔じゃ。網嚢孔とも呼ばれる。膵腸吻合部や胆管空腸吻合部の背側に位置するから、ここにドレーンを置けば膵液漏や胆汁漏、後出血を早期に捉えられるのじゃ。
アユム
ドレーンの観察ポイントはありますか?
博士
排液の色・性状・量・においじゃな。乳白色〜淡黄色なら膵液漏、緑〜茶褐色なら胆汁漏、暗赤色や鮮血なら後出血の疑いがある。
アユム
アミラーゼも測るんでしたっけ?
博士
そう。ISGPFの基準では術後3日目以降の排液アミラーゼが血清の3倍を超えれば膵液瘻と判定する。これは国試でも臨床でも頻出じゃよ。
アユム
看護師としては排液の変化に最初に気付ける位置にいるってことですね。
博士
その通り。早期発見が患者の命を救うからこそ、解剖学的なドレーン留置部位を正確に理解することが重要なのじゃ。
POINT
膵頭十二指腸切除術は膵頭部癌や下部胆管癌に対して行われる高度侵襲手術であり、膵腸吻合・胆管空腸吻合・胃空腸吻合の三吻合再建を行います。術後は膵液瘻・胆汁瘻・後出血が重大な合併症となるため、これらが貯留しやすい肝十二指腸間膜背側のウインスロー孔(網嚢孔)にドレーンを留置するのが標準です。マジャンディー孔・ルシュカ孔・モンロー孔はいずれも脳の解剖構造であり、腹腔内のドレーン留置部位ではありません。看護師は排液の量・色・性状の変化やアミラーゼ値の推移を観察し、合併症を早期に発見・報告する役割を担います。解剖と病態を結びつけて理解することが、術後管理の質を高める第一歩と言えるでしょう。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:膵頭十二指腸切除術においてドレーンを留置する場所で正しいのはどれか。
解説:正解は 2 です。膵頭十二指腸切除術(PD・SSPPD・PPPD)は、膵頭部・十二指腸・胆嚢・遠位胆管・所属リンパ節を一塊として切除し、空腸を用いて膵腸吻合・胆管空腸吻合・胃空腸(または十二指腸空腸)吻合の三吻合再建を行う高度侵襲手術である。術後は膵液瘻・胆汁瘻・出血が重大合併症となるため、これらが貯留しやすい部位にドレーンを留置する。Winslow(ウインスロー)孔は肝十二指腸間膜の背側、大網嚢と腹腔をつなぐ孔で、肝門部や膵腸吻合部の背側に位置するため、術後合併症の早期発見に最適な留置部位とされる。
選択肢考察
-
× 1. Magendie<マジャンディー>孔
第4脳室と脳脊髄液腔(くも膜下腔)をつなぐ正中の孔。脳脊髄液の循環経路にかかわる解剖構造であり、腹腔内のドレーン留置部位ではない。
-
○ 2. Winslow<ウインスロー>孔
肝十二指腸間膜の背側にあり、網嚢(大網嚢)と腹腔をつなぐ孔。膵腸吻合部や胆管空腸吻合部に近く、膵液漏・胆汁漏・術後出血が貯留しやすいため、膵頭十二指腸切除術ではここに情報ドレーンを留置するのが標準である。
-
× 3. Luschka<ルシュカ>孔
第4脳室の左右両側にある外側口で、脳脊髄液をくも膜下腔へ流出させる孔。中枢神経系の解剖構造であり、腹部手術のドレーン留置部位ではない。
-
× 4. Monro<モンロー>孔
側脳室と第3脳室をつなぐ室間孔。脳室ドレナージ時の頭蓋内圧の基準点として使われるが、腹部のドレーン留置部位とは無関係である。
膵頭十二指腸切除術後のドレーンは、ウインスロー孔のほか、膵腸吻合部前面・胆管空腸吻合部付近に複数本留置することが多い。膵液瘻の早期発見にはドレーン排液の性状観察と、排液中アミラーゼ値の測定(術後3日目で正常血清の3倍以上が膵液瘻判定の目安:ISGPF基準)が重要である。排液が赤色〜暗赤色に変化する場合は仮性動脈瘤破裂による後出血の可能性があり、迅速な対応が必要となる。
膵頭十二指腸切除術の解剖学的位置関係を理解し、術後合併症(膵液瘻・胆汁瘻・出血)の貯留しやすい部位=ウインスロー孔を選べるかが問われている。
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