血液ガスを3ステップで読もう
看護師国家試験 第110回 午後 第44問 / 成人看護学 / 呼吸器系
国試問題にチャレンジ
Aさん( 34歳、女性)は、気管支喘息( bronchial asthma )で定期的に通院をしている。朝から喘息発作があり呼吸困難が生じたため、救急外来を受診した。 経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >95%、動脈血液ガス分析( room air )で動脈血酸素分圧<PaO 2 >90Torr、動脈血二酸化炭素分圧<PaCO 2 >55Torr、pH7.30、HCO 3 - 25mEq/Lであった。 Aさんの状態で考えられるのはどれか。
- 1.呼吸性アシドーシス
- 2.呼吸性アルカローシス
- 3.代謝性アシドーシス
- 4.代謝性アルカローシス
対話形式の解説
博士
今日は血液ガス分析の読み方じゃ。まずpHの基準値は覚えておるかの?
アユム
はい、7.35〜7.45です。7.35未満がアシデミア、7.45より上がアルカレミアですね。
博士
うむ。この症例ではpH7.30じゃから、アシデミアで確定じゃ。
アユム
次はPaCO2とHCO3-のどちらが原因かを調べるのですね。
博士
そうじゃ。PaCO2の基準は35〜45Torr、HCO3-は22〜26mEq/Lじゃ。
アユム
PaCO2が55Torrで上昇、HCO3-は25で正常ですね。
博士
では、pHと同じ向きに動いている因子はどちらじゃ?
アユム
PaCO2が上がると酸性に傾きます。pHは低下しているので、方向が一致しますね。
博士
その通り、呼吸性アシドーシスじゃ。Aさんは喘息発作で気道が狭くなってCO2を吐き出せなくなっておる。
アユム
SpO2が95%、PaO2が90Torrと酸素化は保たれていますが、換気が悪いのですね。
博士
うむ、酸素化と換気は別物じゃ。喘息発作で換気障害が進むとCO2貯留が先に現れるのじゃ。
アユム
もし過換気症候群だったら逆で、呼吸性アルカローシスになるのですね。
博士
その通り。CO2がどんどん吐き出されてPaCO2低下、pH上昇となるぞい。
アユム
代謝性の異常はHCO3-が動くのが特徴ですね。
博士
うむ。3ステップで解けば迷わん。pH→主因→原因疾患、この順で読み解くのじゃ。
POINT
本症例はpH7.30と酸性側、PaCO2 55Torrと上昇、HCO3- 25mEq/Lと正常のため、CO2貯留が主因の呼吸性アシドーシスと判断します。喘息発作による気道狭窄で換気量が低下しCO2が排出できない状態です。血液ガス解釈はpH→PaCO2/HCO3-の異常項目→pHと同方向の因子が原因という3ステップで読むと正確です。酸素化と換気が別物であること、SpO2が保たれていても換気不全は進行しうることを押さえておきましょう。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:Aさん( 34歳、女性)は、気管支喘息( bronchial asthma )で定期的に通院をしている。朝から喘息発作があり呼吸困難が生じたため、救急外来を受診した。 経皮的動脈血酸素飽和度<SpO 2 >95%、動脈血液ガス分析( room air )で動脈血酸素分圧<PaO 2 >90Torr、動脈血二酸化炭素分圧<PaCO 2 >55Torr、pH7.30、HCO 3 - 25mEq/Lであった。 Aさんの状態で考えられるのはどれか。
解説:正解は 1 です。AさんはpH7.30とアシデミア(酸性側)に傾き、PaCO2が55Torrと基準値(35〜45Torr)を超えて上昇、HCO3-は25mEq/Lとほぼ正常です。二酸化炭素の蓄積がpH低下の主因であり、喘息発作による換気障害に伴う呼吸性アシドーシスと判断できます。
選択肢考察
-
○ 1. 呼吸性アシドーシス
喘息発作で気道が狭窄すると換気量が低下しCO2が排出できず蓄積します。PaCO2上昇によりpHが低下する病態で、本症例のpH7.30・PaCO2 55Torr・HCO3-正常という所見に一致します。
-
× 2. 呼吸性アルカローシス
過換気などでCO2が過剰排出されPaCO2が低下し、pHが7.45を超えて上昇する状態です。本症例はpHが低下しPaCO2が上昇しているため当てはまりません。
-
× 3. 代謝性アシドーシス
腎不全・糖尿病性ケトアシドーシス・下痢などでHCO3-が低下しpHが下がる病態です。本症例ではHCO3-は25mEq/Lと正常範囲内であり、代謝性変化は主体ではありません。
-
× 4. 代謝性アルカローシス
嘔吐や利尿薬使用などで酸が失われHCO3-が上昇し、pHも上昇する状態です。本症例のpH低下・PaCO2上昇のパターンと合致しません。
血液ガス解釈の基本は (1)pHでアシデミアかアルカレミアか判定、(2)PaCO2とHCO3-のどちらが異常値か確認、(3)pHと同じ方向に動いている因子が原因、の3ステップです。基準値はpH7.35〜7.45、PaCO2 35〜45Torr、HCO3- 22〜26mEq/L。喘息発作やCOPD増悪では呼吸性アシドーシス、過換気症候群では呼吸性アルカローシスが典型です。
血液ガスデータから酸塩基平衡異常を判読できるかを問う定番問題で、PaCO2とHCO3-のどちらが主因かを見極める手順の理解が重要です。
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