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シリンジポンプの落とし穴 ―サイフォニング現象を高低差で理解する

看護師国家試験 第114回 午後 第34問 / 必修問題 / 診療に伴う看護技術

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第34問

シリンジポンプを使用する際に生じるサイフォニング現象の原因はどれか。

  1. 1.内蔵バッテリーの残量が少ない。
  2. 2.輸液ラインに血液の逆流がある。
  3. 3.輸液ラインに大量の空気がある。
  4. 4.刺入部とシリンジに高低差がある。

対話形式の解説

博士 博士

今日はシリンジポンプの「サイフォニング現象」を学ぶぞ。名前からして物理の現象っぽいじゃろ?

アユム アユム

サイフォンって、灯油を抜くときのアレですか?高い場所から低い場所へ自然に流れるやつ。

博士 博士

その通りじゃ!同じ原理が医療現場で起きると、薬液が設定量を超えて患者へドバッと流れ込む事故になる。

アユム アユム

どういう状況で起きるんですか?

博士 博士

ポンプが患者の刺入部より高い位置にあって、しかも押し子のクラッチやスライダーフックが正しく固定されていないときじゃ。落差と未固定がそろうと薬液は重力で落ちていく。

アユム アユム

ポンプ自体は止まっていてもですか?

博士 博士

そう、ポンプは関係なく流れる。これが恐ろしいのじゃ。微量投与のカテコラミンや鎮静薬で起きると、循環動態が一気に崩れて致命的になりかねん。

アユム アユム

だから「刺入部とシリンジに高低差がある」が正解なんですね。

博士 博士

うむ。逆に予防策は3つ。①ポンプを患者の心臓の高さかやや下に置く、②押し子とスライダーフックを確実にロック、③装着状態を始業時と交代時に必ず確認じゃ。

アユム アユム

他の選択肢も気になります。バッテリー残量はどうですか?

博士 博士

バッテリー低下はアラームや作動停止の原因。サイフォンの原理とは別物じゃ。

アユム アユム

血液逆流は?

博士 博士

逆流はライン閉塞や凝固トラブルの原因にはなるが、これも機序が違うのじゃ。

アユム アユム

空気混入は危険そうですが…?

博士 博士

空気塞栓のリスクとして重要じゃが、シリンジポンプの気泡検知は弱いから押し続けてしまう問題がある。サイフォニングそのものではないぞ。

アユム アユム

シリンジポンプで投与する薬って、どんなものが多いんですか?

博士 博士

カテコラミン、降圧薬、鎮静薬、インスリン、ヘパリンなど、微量で強力に作用するものばかり。だからこそ事故が重大になりやすいのじゃ。

アユム アユム

輸液ライン交換のときは、何に気をつければいいですか?

博士 博士

必ずラインをクランプしてから操作する。クランプを忘れて取り外すと、その瞬間に薬液が落ちてサイフォニングが起きる事例が報告されておる。

アユム アユム

物理の知識が安全管理に直結するんですね。

POINT

サイフォニング現象とは、シリンジポンプが刺入部より高い位置にあり、押し子のクラッチやスライダーフックが正しく固定されていないときに、サイフォンの原理で薬液が自然落下し、設定量を超えて急速注入される医療事故です。微量で強力に作用するカテコラミン・鎮静薬・降圧薬・インスリン・ヘパリンなどで発生すると、循環動態の急変や呼吸抑制を招くため非常に危険です。予防にはポンプを患者の心臓と同じ高さかやや下に設置すること、押し子とスライダーフックの確実なロック、装着状態の確認、ライン交換時のクランプ徹底が挙げられます。日本医療機能評価機構でも繰り返し注意喚起されており、看護師は機器の物理特性を理解した上で標準手順を守り、ヒヤリ・ハットを共有することが患者安全の要となります。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:シリンジポンプを使用する際に生じるサイフォニング現象の原因はどれか。

解説:正解は 4 です。サイフォニング現象とは、シリンジポンプが患者の刺入部より高い位置にあり、かつシリンジが本体に正しく固定されていない(押し子のクラッチが外れる、スライダーフックが外れているなど)場合に、サイフォンの原理によって薬液がポンプの設定流量を超えて自然落下で患者に流入してしまう事故である。微量で強力に作用するカテコラミンや鎮静薬を投与中に発生すると、急激な循環動態変化や呼吸抑制を引き起こすため重大な医療事故につながる。

選択肢考察

  1. × 1.  内蔵バッテリーの残量が少ない。

    バッテリー残量低下はバッテリーアラームや作動停止の原因にはなるが、サイフォン原理による急速注入であるサイフォニング現象とは機序が異なる。

  2. × 2.  輸液ラインに血液の逆流がある。

    血液逆流はラインの閉塞、薬液濃度低下、凝固によるカテーテルトラブルの原因となるが、サイフォニング現象の発生機序ではない。

  3. × 3.  輸液ラインに大量の空気がある。

    ライン内空気は空気塞栓のリスクであり、シリンジポンプは気泡検知機能が乏しく押し続けてしまう点で危険だが、サイフォニング現象の原因ではない。

  4. 4.  刺入部とシリンジに高低差がある。

    シリンジポンプが刺入部より高い位置にあり、押し子やスライダーフックが正しく固定されていないと、サイフォンの原理で薬液が落差により急速注入される。これがサイフォニング現象である。

サイフォニング現象の予防には、シリンジポンプを患者の心臓と同じ高さまたはわずかに下に設置する、押し子のクラッチとスライダーフックを確実にロックする、シリンジが本体にしっかり装着されているかを始業前と勤務交代時に必ず確認する、輸液ライン交換時は必ず一旦クランプしてからシリンジ操作を行う、といった手順が標準化されている。日本医療機能評価機構の医療事故情報収集事業でも繰り返し報告されており、特にカテコラミン・降圧薬・鎮静薬・インスリン・ヘパリンなどシリンジポンプで投与する薬剤は微量で循環動態を大きく変えるため、ヒヤリ・ハットを共有して安全管理を徹底することが求められる。

シリンジポンプ特有の医療事故であるサイフォニング現象の発生機序を問う問題。「サイフォン=高低差で液体が流れる原理」をキーワードに連想すると解きやすい。