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高齢者の健康障害の特徴と薬物有害事象

看護師国家試験 第111回 午前 第55問 / 老年看護学 / 高齢者の健康

国試問題にチャレンジ

111回 午前 第55問

高齢者の健康障害の特徴で正しいのはどれか。

  1. 1.症状の出現は定型である。
  2. 2.治療の効果が現れやすい。
  3. 3.疾患の発生に心理的要因の影響は少ない。
  4. 4.薬物の副作用〈有害事象〉が発生しやすい。

対話形式の解説

博士 博士

今回は高齢者の健康障害の特徴について問う問題じゃ。

サクラ サクラ

高齢者って症状が出にくいイメージがあります。

博士 博士

そうじゃな。正解は選択肢4の「薬物の副作用(有害事象)が発生しやすい」じゃ。

サクラ サクラ

高齢者で薬の副作用が出やすい理由を教えてください。

博士 博士

いくつもある。まず腎機能(GFR)が低下して薬の排泄が遅れ、体内に蓄積する。次に肝代謝能が低下し、血清アルブミンが下がって遊離型薬物濃度が上がる。

サクラ サクラ

体内の水分量も関係しますか?

博士 博士

うむ、体内水分量減少で水溶性薬物は血中濃度が上がりやすい。加えて受容体感受性の変化や、多疾患併存によるポリファーマシーも重なって副作用リスクが跳ね上がるんじゃ。

サクラ サクラ

特に注意すべき薬剤はありますか?

博士 博士

ベンゾジアゼピン系は転倒やせん妄、三環系抗うつ薬や第一世代抗ヒスタミン薬は抗コリン作用、NSAIDsは腎障害や消化管出血、ジゴキシンは中毒、スルホニル尿素薬は遷延性低血糖が有名じゃ。

サクラ サクラ

選択肢1の「症状は定型」はなぜ誤りですか?

博士 博士

高齢者は感染症でも発熱しない、心筋梗塞でも胸痛が軽い、肺炎でも咳が目立たないなど非定型で、「食欲低下」「元気がない」「せん妄」など非特異的症状で発症することが多いんじゃ。

サクラ サクラ

選択肢2の「治療効果が現れやすい」は?

博士 博士

回復力や創傷治癒力が低下しているから治療効果は若年者より現れにくい。慢性化・遷延化するのが特徴じゃな。

サクラ サクラ

選択肢3の心理的要因は少ないというのは?

博士 博士

逆で、退職、配偶者との死別、役割喪失、孤独感などが抑うつや意欲低下を招き、フレイルや低栄養、廃用症候群、認知機能低下に直結する。心理社会的要因の影響は極めて大きい。

サクラ サクラ

ポリファーマシーの基準はありますか?

博士 博士

5種類以上の内服薬で有害事象リスクが有意に増えるとされ、日本老年医学会のガイドラインでは処方の見直し(deprescribing)が推奨されておる。Beers基準も有名じゃな。

サクラ サクラ

「症状あいまい、回復ゆっくり、心理の影響大、薬は効きすぎ」で覚えます。

POINT

高齢者の健康障害は症状が非定型で不顕性、回復力が低下して慢性化しやすく、心理社会的要因の影響が大きく、薬物有害事象が発生しやすいのが特徴です。腎機能低下、肝代謝能低下、体内水分量減少、血清アルブミン低下、受容体感受性変化に加え、多疾患併存によるポリファーマシーが重なって副作用リスクが高まります。Beers基準や日本老年医学会のガイドラインで定められた注意薬剤を把握し、処方の見直しや観察の強化を行うことが看護の要となります。非定型症状の見逃しを防ぐ観察眼も、老年看護の重要なスキルです。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:高齢者の健康障害の特徴で正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。高齢者は加齢に伴い臓器予備能・免疫能・恒常性維持機能が低下し、健康障害には(1)症状が非定型で不明瞭、(2)多疾患併存(multimorbidity)、(3)回復力・治癒力の低下、(4)心理社会的要因の影響が大きい、(5)薬物有害事象(ADR)の頻度が高い、という特徴があります。特に腎機能・肝機能低下、体内水分量減少、血清アルブミン低下により薬物動態が変化し、ベンゾジアゼピン系、抗コリン薬、NSAIDs、ジゴキシンなど多くの薬剤で副作用や中毒症状が出やすくなります。

選択肢考察

  1. × 1.  症状の出現は定型である。

    高齢者は感染症でも発熱しない、心筋梗塞でも胸痛が軽い、肺炎でも咳嗽が目立たないなど症状が非定型で不顕性化しやすいのが特徴です。「食欲低下」「活気がない」「せん妄」など非特異的な症状で発症することが多く、定型ではありません。

  2. × 2.  治療の効果が現れやすい。

    回復力や創傷治癒力の低下、臓器予備能の低下により、治療効果は若年者に比べて現れにくく、慢性化・遷延化しやすいのが高齢者の特徴です。骨折の治癒、褥瘡の改善、感染症からの回復に時間を要します。

  3. × 3.  疾患の発生に心理的要因の影響は少ない。

    退職、配偶者や友人との死別、役割喪失、孤独感などの心理社会的要因は抑うつや意欲低下を招き、フレイル、低栄養、廃用症候群、認知機能低下などの身体疾患の発症・進行に強く関与します。影響は少ないどころか極めて大きいのが実際です。

  4. 4.  薬物の副作用〈有害事象〉が発生しやすい。

    高齢者は腎排泄能(GFR)低下で薬物が蓄積しやすく、肝代謝能低下、血清アルブミン低下で遊離型薬物濃度が上昇、体内水分量減少で水溶性薬物の血中濃度が上昇、受容体感受性の変化も加わって薬物有害事象が起こりやすくなります。さらに多疾患併存によるポリファーマシーが拍車をかけるため、本選択肢が正解です。

高齢者の薬物療法で特に注意すべき薬剤は「Beers基準」や日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」で示されており、ベンゾジアゼピン系(転倒・せん妄)、三環系抗うつ薬(抗コリン作用)、第一世代抗ヒスタミン薬、NSAIDs(腎障害・消化管出血)、ジゴキシン(中毒)、スルホニル尿素薬(遷延性低血糖)などが代表例です。5種類以上の内服薬で副作用リスクが有意に増加するとされ、ポリファーマシー対策として処方の見直し(deprescribing)が推奨されます。覚え方は「老年=症状あいまい、回復ゆっくり、心理の影響大、薬は効きすぎ」。

高齢者の健康障害の一般的特徴を問う問題で、非定型症状、回復力低下、心理社会的影響、薬物有害事象の増加という老年医学の基本原則を理解しているかが焦点です。