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肺の手術を控えた高齢者、最初に教えるべきは深呼吸の練習

看護師国家試験 第114回 午後 第57問 / 老年看護学 / 健康状態・受療状況に応じた看護

国試問題にチャレンジ

114回 午後 第57問

全身麻酔下で肺切除術を受ける高齢者への説明で優先度が高いのはどれか。

  1. 1.術前にベッド上で排泄の練習をすること
  2. 2.術前に手術部看護師の訪問があること
  3. 3.術前に深呼吸や排痰の練習をすること
  4. 4.術後に四肢の自動運動をすること

対話形式の解説

博士 博士

今日は全身麻酔下で肺切除術を受ける高齢者への術前指導について考えるぞ。

サクラ サクラ

肺の手術って術後に呼吸が大変そうですね。

博士 博士

その通り。全身麻酔・気管挿管・肺実質の喪失・創部痛、これらが重なり術後の無気肺や肺炎、低酸素血症のリスクが非常に高くなるのじゃ。

サクラ サクラ

高齢者だとさらに大変ですよね。

博士 博士

加齢で肺コンプライアンスが低下し、呼吸筋力や咳嗽反射、線毛運動も衰えておる。じゃから合併症リスクは若年者より格段に高いのじゃ。

サクラ サクラ

術前にできることは?

博士 博士

深呼吸、腹式呼吸、口すぼめ呼吸、そしてハフィングや咳嗽による排痰の練習じゃ。これを術前から身につけておくと術後すぐに実践できる。

サクラ サクラ

なぜ術前から練習するんですか?術後に教えれば良さそうですが…

博士 博士

術後は痛みや麻酔の影響で集中して新しい技術を覚えるのが難しい。健康な術前のうちに体で覚えておけば、術後痛があっても自然にできるのじゃ。

サクラ サクラ

インセンティブスパイロメーターって聞いたことがあります。

博士 博士

視覚的に深呼吸を促す器具じゃ。術前から練習し、術後も継続することで肺胞の虚脱を防ぎ、無気肺予防に役立つ。

サクラ サクラ

禁煙指導も大事ですよね?

博士 博士

うむ、術前少なくとも4週間以上の禁煙が推奨される。気道分泌物が減り、術後肺炎のリスクが下がる。

サクラ サクラ

術後の四肢自動運動はどうですか?

博士 博士

深部静脈血栓症の予防として大事じゃ。じゃが肺切除術ではまず呼吸器合併症の予防が最優先となる。DVT予防は弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置でも補える。

サクラ サクラ

ベッド上排泄の練習や手術部看護師の訪問はどう位置づけられますか?

博士 博士

どちらも有用じゃが、生命に直結する呼吸器合併症の予防に比べれば優先度は下がる。膀胱留置カテーテルが入る期間も短いし、術前訪問は不安軽減が目的じゃ。

サクラ サクラ

「全身麻酔+肺切除+高齢」だから呼吸が最優先という流れがよくわかりました。

博士 博士

その三要素を見たら呼吸機能訓練と即答できるくらい体に染み込ませるとよいぞ。

POINT

全身麻酔下の肺切除術では、麻酔薬や気管挿管、肺実質の喪失、創部痛などにより術後の無気肺・肺炎・低酸素血症のリスクが特に高くなります。高齢者は呼吸予備能・咳嗽反射・線毛運動が低下しているためリスクがさらに増大し、術前からの深呼吸や排痰訓練、インセンティブスパイロメーターの使用、禁煙指導、口腔ケアが術後合併症予防の中心となります。ベッド上排泄練習や術後の四肢自動運動も重要ですが、生命予後に直結する呼吸器合併症予防に比べると優先度は下がります。看護師は術前訪問の段階で具体的な呼吸法と排痰法を実演・指導し、術後早期から実施できるよう支援する役割が求められます。「全身麻酔・肺切除・高齢」の三要素を意識すれば、呼吸機能訓練の優先度を即座に判断できます。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:全身麻酔下で肺切除術を受ける高齢者への説明で優先度が高いのはどれか。

解説:正解は 3 です。全身麻酔下の肺切除術では、麻酔薬・筋弛緩薬・気管挿管による気道刺激と気道分泌物増加に加え、肺実質の喪失、創部痛による呼吸抑制が重なり、術後に無気肺・肺炎・低酸素血症などの呼吸器合併症が起こりやすい。高齢者は呼吸予備能が低く、咳嗽反射や線毛運動も低下しているため、これらのリスクはさらに増大する。術前から深呼吸・腹式呼吸・口すぼめ呼吸・排痰(ハフィング、咳嗽)の練習を行うことで、術後早期に有効な呼吸ケアを実施でき、合併症予防に直結する。したがって最優先で説明・指導すべき項目となる。

選択肢考察

  1. × 1.  術前にベッド上で排泄の練習をすること

    術後早期は膀胱留置カテーテルが挿入されることが多く、抜去後も早期離床を促すためベッド上排泄の練習が最優先になることはない。

  2. × 2.  術前に手術部看護師の訪問があること

    術前訪問は患者の不安軽減や情報共有として有用だが、合併症予防という観点での優先度は呼吸機能訓練に劣る。

  3. 3.  術前に深呼吸や排痰の練習をすること

    肺切除術後は無気肺や肺炎などの呼吸器合併症リスクが特に高く、術前からの呼吸訓練・排痰訓練が術後の予後を左右する。高齢者では生理的予備能が低いためなおさら重要となる。

  4. × 4.  術後に四肢の自動運動をすること

    深部静脈血栓症(DVT)予防として重要な指導だが、肺切除術では呼吸器合併症のリスクがより切迫しており優先度は呼吸訓練に劣る。間欠的空気圧迫装置や弾性ストッキングも併用される。

肺切除術後の呼吸器合併症予防では、術前のインセンティブスパイロメーターを用いた呼吸訓練、禁煙指導(最低でも術前4週間以上)、口腔ケア、呼吸理学療法、術後の早期離床などが組み合わされる。高齢者では加齢による肺コンプライアンス低下、呼吸筋力低下、咳嗽反射の減弱、嚥下機能の低下が背景にあり、誤嚥性肺炎のリスクも高い。看護では術前訪問で呼吸訓練を実演し、術後痛による呼吸抑制に備えて創部を支えながら咳をする方法も練習しておくことが効果的である。

高齢者の肺切除術における術後合併症のなかで最も切迫した呼吸器合併症の予防に焦点を当てた指導の優先順位を問う問題。「全身麻酔+肺切除+高齢」の3要素から呼吸機能訓練を最優先と判断する。