「甘い物ばかり食べる母」家族を責める前にすべきことは?
看護師国家試験 第107回 午前 第110問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 76歳、女性 )は、長女( 46歳、会社員 )との2人暮らし。Aさんは5年前に2型糖尿病( type 2 diabetes mellitus )と診断された。1年前から血糖測定とインスリン自己注射を朝1回行っている。炊事は主にAさんが担当している。Aさんは、長女の帰宅に合わせて夕食を摂るため、夕食時間にばらつきがある。定期の外来受診時にAさんは「時々汗が出て手が震えることがあります」と外来看護師に相談した。Aさんのバイタルサインは、体温36.4℃、脈拍74/分、血圧128/80mmHg。身長154cm、体重68kgである。 6か月後の外来受診時に、同席していた長女が「甘い物ばかり食べる母を叱ってしまいます」と外来看護師に話した。Aさんは黙って話を聞いていた。前回の受診から低血糖症状はなく、体重は3kg増加した。Aさんは日中テレビを観て過ごしていることが多い。 外来看護師が別室で長女に提案する内容で最も適切なのはどれか。
- 1.「糖尿病食の作り方を覚えましょう」
- 2.「厳しいことを言わないようにしましょう」
- 3.「甘い物をAさんから見えない場所に置きましょう」
- 4.「甘い物を食べてしまうAさんの気持ちを聞いてみましょう」
対話形式の解説
博士
半年後の外来、長女が母を叱ってしまうと相談してきた場面じゃ。
アユム
Aさんは黙って聞いているんですね。体重は3kg増、日中はテレビ鑑賞。
博士
食行動と生活活動の両方に変化がある。ここで大事な問いは何じゃ?
アユム
「なぜAさんは甘い物を食べてしまうのか」ですね。
博士
その通り。原因が分からんまま対策を打っても空振りじゃ。
アユム
選択肢1の「糖尿病食の作り方を覚えましょう」はどうでしょう?
博士
調理知識の不足かどうかまだ分からん。確認せずに指導内容を決めるのは早計じゃ。
アユム
選択肢2の「厳しいことを言わないようにしましょう」は?
博士
長女の気持ちを封じ込める助言になってしまう。介護する家族の感情も尊重せにゃならん。
アユム
選択肢3の「甘い物を見えない場所に置く」は一見よさそうですが……。
博士
対症療法としては効くが、根本の「なぜ食べるか」が解決しない限り別の場所で食べ続ける可能性がある。
アユム
だから正解は4、Aさん本人の気持ちを聞くことなんですね。
博士
背景にはどんな理由が考えられる?
アユム
前に低血糖があったから不安で糖分を常備するようになった、孤独で退屈だから食べてしまう、元々甘い物が好き、認知機能が落ちて管理できない、などが考えられます。
博士
よく出てくるのう。これらは対応が全然違う。
アユム
低血糖不安なら補食の置き方や血糖パターンの共有、孤独ならデイケアや趣味の提案、嗜好なら低カロリーの代替品、認知機能低下ならもっと構造的な支援……。
博士
そう、原因ごとに最適解が変わる。じゃから「聞く」が最初なのじゃ。
アユム
看護師が別室で長女に助言する場面設定もポイントですね。
博士
うむ、長女と本人の前で叱る・叱られる関係を看護師が仲裁するのでなく、まず長女の大変さを受け止めつつ、視点を「本人理解」に向ける。
アユム
エンパワメントアプローチというんですよね。本人の語りから目標を一緒に設定していく。
博士
その通り。糖尿病の療養は一生続くもの。叱責と隠匿では関係が荒れてしまう。
アユム
家族の疲弊も深刻ですから、長女の気持ちも同時にケアする必要がありますね。
博士
そう、Aさんと長女の両方にアプローチする視点が大切じゃ。
アユム
行動変容の第一歩は「原因を本人から聞く」。しっかり押さえます。
POINT
糖尿病患者の食行動に問題がある場合、単に食品を制限したり知識を教えたりするのではなく、まず「なぜその行動をとるのか」を本人の言葉で聞くことが重要です。本事例では、Aさんが甘い物を食べる背景に低血糖への不安、孤独、退屈、嗜好、認知機能低下など多様な要因があり得ます。原因を理解してから個別の対応を設計することで、家族関係を損なわず行動変容を支えられます。エンパワメントアプローチで本人主体の目標設定を行いましょう。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:Aさん( 76歳、女性 )は、長女( 46歳、会社員 )との2人暮らし。Aさんは5年前に2型糖尿病( type 2 diabetes mellitus )と診断された。1年前から血糖測定とインスリン自己注射を朝1回行っている。炊事は主にAさんが担当している。Aさんは、長女の帰宅に合わせて夕食を摂るため、夕食時間にばらつきがある。定期の外来受診時にAさんは「時々汗が出て手が震えることがあります」と外来看護師に相談した。Aさんのバイタルサインは、体温36.4℃、脈拍74/分、血圧128/80mmHg。身長154cm、体重68kgである。 6か月後の外来受診時に、同席していた長女が「甘い物ばかり食べる母を叱ってしまいます」と外来看護師に話した。Aさんは黙って話を聞いていた。前回の受診から低血糖症状はなく、体重は3kg増加した。Aさんは日中テレビを観て過ごしていることが多い。 外来看護師が別室で長女に提案する内容で最も適切なのはどれか。
解説:正解は4です。長女は「叱ってしまう」と困っており、Aさん自身は黙って聞いているという場面です。体重が3kg増加し日中はテレビを見て過ごしていることから、食行動や生活リズムの乱れがうかがえます。ここで最も大切なのは、なぜAさんが甘い物を食べてしまうのかを本人の語りから理解することです。理由を知らずに叱る・食品を隠す・食事療法の知識を覚えさせるといった対応は表面的で、根本解決になりません。低血糖への不安、孤独感、ストレス、嗜好の問題など、背景要因を明らかにしてから個別性のある支援策を設計する必要があります。
選択肢考察
-
× 1. 「糖尿病食の作り方を覚えましょう」
調理知識の不足が原因と確認できていない段階で指導内容を決めるのは早計です。まず原因を把握することが先です。
-
× 2. 「厳しいことを言わないようにしましょう」
長女の感情を一方的に抑制させるのは、長女の介護負担を軽視し関係悪化を招きかねません。双方の思いを聞いた上でバランスを取るべきです。
-
× 3. 「甘い物をAさんから見えない場所に置きましょう」
対症療法として一時的な効果はあっても、食べる理由が解決されないため別の場所で食べ続ける可能性があり、根本解決になりません。
-
○ 4. 「甘い物を食べてしまうAさんの気持ちを聞いてみましょう」
食行動の背景にある心理・身体・環境要因を把握することで、Aさんに合った個別的な支援策を組み立てられます。
糖尿病療養指導では、行動変容を促すうえで「なぜそうしてしまうのか」を本人の言葉で聞き出すことが第一歩です。低血糖への恐怖から甘い物を常備する、孤独感や退屈を埋めるための代償行動、認知機能の低下による管理能力低下など、原因は多様です。背景を理解したうえで、エンパワメントアプローチ(本人が選択・実行できる目標設定)で関わることが推奨されます。
家族関係と本人心理の両面に配慮しつつ、食行動の根本原因に迫る介入選択ができるかを問うています。
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