経鼻胃管による経管栄養の基本手順
看護師国家試験 第107回 午後 第113問 / 老年看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 72歳、男性 )。妻と2人暮らし。朝6時に、妻が一緒に寝ていたAさんの様子がおかしいことに気付き、救急車を呼んだ。Aさんは病院に搬送された。病院到着時、ジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅱ-10。右片麻痺および失語がみられる。 Aさんのバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数20/分、心拍数110/分、血圧150/90mmHg。身長160cm、体重60kg。頭部CTで明らかな異常所見はなく、頭部MRIを行う予定である。 Aさんは、左中大脳動脈領域の脳梗塞( cerebral infarction )と診断され、組織プラスミノーゲンアクチベータ< t-PA >による血栓溶解療法が行われた。入院から2日後、右片麻痺は残存しているものの、ジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅰ-3と改善がみられた。多職種カンファレンスで経口栄養を検討したが、言語聴覚士による評価では、Aさんは誤嚥のリスクが高いと判断され、経鼻胃管による経管栄養を行うこととなった。 Aさんに行う経管栄養法について適切なのはどれか。
- 1.白湯から開始する。
- 2.開始前に胃残渣を確認する。
- 3.経鼻胃管挿入中は嚥下訓練を中止する。
- 4.1日の目標摂取エネルギー量は2,200kcalとする。
対話形式の解説
博士
Aさんはt-PAで意識が改善したが、嚥下リスクが高いため経鼻胃管栄養になったのう。
サクラ
急性期脳梗塞では誤嚥性肺炎が命取りになりますから、妥当な判断ですね。
博士
では、注入開始前に看護師がまずやるべきことは何じゃ?
サクラ
胃残渣の確認だと思います。
博士
そのとおり。なぜ残渣確認が必要なのか説明できるか?
サクラ
残渣量から消化吸収の状態を評価でき、かつチューブが胃内にあることの確認にもなるからです。
博士
うむ。残渣が多ければ消化管蠕動低下が疑われ、そのまま注入すると嘔吐や誤嚥のリスクが高まるのじゃ。
サクラ
選択肢1の『白湯から開始』はどうですか?
博士
おっと博士がタイプミスじゃ、気を取り直して次じゃ。
サクラ
嚥下訓練の中止は?
博士
それは逆じゃ。胃管が入っていても嚥下機能の廃用を防ぐため訓練は続けるのが原則じゃ。
サクラ
エネルギー量2,200kcalは多すぎますよね。身長160cm体重60kgなら1,500〜1,800kcalくらいでしょうか。
博士
よく計算できておる。急性期で活動量も少ないから過量は下痢や高血糖を招くぞ。
サクラ
頭位を30〜45度にして、注入後も同じ姿勢で30分以上保つのも大事ですね。
博士
そのとおり。逆流と誤嚥予防の基本姿勢じゃ。
POINT
本問は経鼻胃管による経管栄養で看護師が行う基本手順の理解を問うています。注入前の胃残渣確認はチューブ位置の確認と消化状態の評価を兼ねた必須ステップです。白湯注入はチューブ位置確認後、嚥下訓練は胃管挿入中も継続、エネルギー量は体格と活動度から1,500〜1,800kcal程度が適切と判断します。安全な注入のための姿勢管理と併せて押さえておきましょう。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:Aさん( 72歳、男性 )。妻と2人暮らし。朝6時に、妻が一緒に寝ていたAさんの様子がおかしいことに気付き、救急車を呼んだ。Aさんは病院に搬送された。病院到着時、ジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅱ-10。右片麻痺および失語がみられる。 Aさんのバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数20/分、心拍数110/分、血圧150/90mmHg。身長160cm、体重60kg。頭部CTで明らかな異常所見はなく、頭部MRIを行う予定である。 Aさんは、左中大脳動脈領域の脳梗塞( cerebral infarction )と診断され、組織プラスミノーゲンアクチベータ< t-PA >による血栓溶解療法が行われた。入院から2日後、右片麻痺は残存しているものの、ジャパン・コーマ・スケール< JCS >Ⅰ-3と改善がみられた。多職種カンファレンスで経口栄養を検討したが、言語聴覚士による評価では、Aさんは誤嚥のリスクが高いと判断され、経鼻胃管による経管栄養を行うこととなった。 Aさんに行う経管栄養法について適切なのはどれか。
解説:正解は2です。経鼻胃管による経管栄養では、注入前に必ず胃内残渣量を確認します。残渣が多い場合は消化管運動の低下や通過障害が疑われ、そのまま栄養剤を注入すると嘔吐・誤嚥・腹部膨満を招く危険があるためです。残渣確認は同時にチューブ先端が胃内に留置されているかを確認する意味も持ち、安全な注入のための基本手技です。
選択肢考察
-
× 1. 白湯から開始する。
白湯の注入は、X線や気泡音・胃内容物吸引などでチューブの胃内留置を確認した後に行います。誤って気管に入ったまま白湯を注入すれば誤嚥性肺炎を招きます。
-
○ 2. 開始前に胃残渣を確認する。
注入前の胃残渣確認は、消化吸収状態の評価とチューブ位置の確認を兼ねた必須手順です。残渣量が多ければ注入を見合わせる判断につながります。
-
× 3. 経鼻胃管挿入中は嚥下訓練を中止する。
経鼻胃管が入っていても嚥下訓練は継続します。訓練を中止すると嚥下機能が廃用で低下し、経口摂取再開が遅れてしまいます。
-
× 4. 1日の目標摂取エネルギー量は2,200kcalとする。
身長160cm・体重60kgの72歳男性で安静臥床に近い状態では、必要エネルギーは概ね1,500〜1,800kcal/日程度です。2,200kcalは過剰で高血糖や下痢を招きます。
経鼻胃管の位置確認は『気泡音聴取だけ』では不十分とされ、胃内容物の吸引によるpH確認やX線撮影を組み合わせるのが推奨されています。注入時は30〜45度のファウラー位とし、注入後も30分以上同体位を保って逆流を防ぎます。胃残渣量の目安は施設基準により異なりますが、概ね200mL以上なら医師に報告し注入可否を判断します。
経管栄養開始前は『胃残渣確認』が鉄則。位置確認と消化状態の評価を同時に行い、誤嚥と過量注入を防ぎます。
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