溶血で高くなる電解質は?
看護師国家試験 第111回 午後 第79問 / 人体の構造・機能 / 血液と体液
国試問題にチャレンジ
採血時に操作を誤ったため溶血し、採血管内の血漿が暗赤色になってしまった。 この血漿の電解質濃度を測定したときに、本来の値よりも高くなるのはどれか。
- 1.塩化物イオン
- 2.重炭酸イオン
- 3.カリウムイオン
- 4.カルシウムイオン
- 5.ナトリウムイオン
対話形式の解説
博士
今日は採血手技にまつわる検査値変動の問題じゃ。溶血でカリウムが見かけ上高くなる、偽性高カリウム血症についてじゃよ。
サクラ
溶血って赤血球が壊れることですよね。
博士
そうじゃ、赤血球膜が破壊されて細胞内成分が血漿中に漏れ出す現象じゃ。血漿が通常の淡黄色から赤色がかるのが特徴じゃな。
サクラ
正解は何番ですか?
博士
正解は3番、カリウムイオンじゃ。赤血球内のカリウム濃度は血漿の約25〜30倍もあるからのう。
サクラ
細胞内と細胞外でそんなに差があるんですね。
博士
そうじゃ、細胞内液の主要陽イオンはカリウムで約140mEq/L、細胞外液のカリウムは約4mEq/L、これがナトリウムポンプによって能動的に維持されておる。
サクラ
1番の塩化物イオンは?
博士
塩化物イオンは主に細胞外液に分布し、細胞内外の差が小さいため溶血の影響はほとんど受けん。
サクラ
2番の重炭酸イオンは?
博士
これも細胞外液に多く、溶血の影響は小さい。ただ採血後の時間経過で変動しやすいので注意が必要じゃ。
サクラ
4番のカルシウムイオンは?
博士
カルシウムは細胞外液に多く、細胞内の遊離カルシウム濃度は極めて低いから溶血の影響は受けんのじゃ。
サクラ
5番のナトリウムイオンは?
博士
ナトリウムは細胞外液の主要陽イオンで、赤血球内は血漿の約1/10と低い。だから溶血するとむしろわずかに希釈されて低値傾向になる。
サクラ
溶血を避けるにはどうすればいいんですか?
博士
適切な針の太さ、強い陰圧をかけない、転倒混和はやさしく、アルコールを乾かしてから穿刺する、駆血帯を長時間締めすぎない、などが大切じゃ。
サクラ
溶血した検査値が出たらどうするんですか?
博士
臨床像と合わない高カリウム血症が出たら再採血を検討する。偽性高カリウムを本物と誤認して治療すると、逆に低カリウム血症を誘発する危険があるんじゃよ。
サクラ
採血手技一つが検査結果に大きく影響するんですね。
博士
うむ、看護師の手技が診断と治療の質を左右する、大切な視点じゃよ。
POINT
溶血では赤血球内成分が血漿中に漏出し、細胞内高濃度のカリウム・LDH・AST・鉄などが見かけ上高値となります。本問の正解は3番のカリウムイオンで、赤血球内濃度は血漿の25〜30倍です。塩化物・重炭酸・カルシウム・ナトリウムは細胞外液に多いため溶血の影響は小さくなります。偽性高カリウム血症は不適切な治療を招くため、採血手技の工夫と結果評価が重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:採血時に操作を誤ったため溶血し、採血管内の血漿が暗赤色になってしまった。 この血漿の電解質濃度を測定したときに、本来の値よりも高くなるのはどれか。
解説:正解は 3 です。溶血とは赤血球膜が破壊され、細胞内成分(ヘモグロビン、カリウム、LDH、ASTなど)が血漿中に漏出する現象です。カリウムは赤血球内濃度が血漿中の約25〜30倍と極めて高いため、溶血すると血漿カリウム値は実際より高く測定されます(偽性高カリウム血症)。このほかLDH、AST、鉄、NSEなども高値になります。
選択肢考察
-
× 1. 塩化物イオン
塩化物イオンは主に細胞外液(血漿)に分布し、赤血球内濃度との差が小さいため、溶血の影響をほとんど受けません。
-
× 2. 重炭酸イオン
重炭酸イオンは細胞外液に多く、溶血による影響は小さいです。ただし採血後の時間経過で変動しやすい成分のため、速やかな測定が必要です。
-
○ 3. カリウムイオン
カリウムは細胞内に多く分布する主要な細胞内陽イオンで、赤血球内濃度が血漿の約25〜30倍あります。溶血するとカリウムが血漿中に漏出し、本来より高値として測定される偽性高カリウム血症を示します。
-
× 4. カルシウムイオン
カルシウムイオンは細胞外液に多く、細胞内の遊離カルシウム濃度は極めて低いため、溶血の影響は受けません。
-
× 5. ナトリウムイオン
ナトリウムは細胞外液の主要陽イオンで、赤血球内濃度は血漿の約1/10と低いです。溶血するとむしろ希釈されてわずかに低値傾向になる可能性があります。
溶血の原因と対策:(1)採血時の原因:細い針、強い吸引、激しい混和、採血困難時の駆血帯長時間装着、アルコールが未乾燥で針刺し、など。(2)影響を受ける検査項目:K↑、LDH↑、AST↑、鉄↑、遊離Hb↑。(3)対策:適切な針の太さ(21〜22G)、陰圧を強くかけない、転倒混和は穏やかに、採血後速やかに検査室へ。偽性高カリウム血症を見逃すと不必要な治療につながるため、結果と臨床像が合わない場合は再採血を検討します。
溶血による電解質測定値への影響、特に偽性高カリウム血症の機序を問う問題です。
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