ケトン体の正体に迫る!術後エネルギー不足の救世主
看護師国家試験 第114回 午後 第78問 / 人体の構造・機能 / 代謝系と体温調節
国試問題にチャレンジ
術後の回復過程でエネルギー不足の場合にケトン体の供給源となるのはどれか。
- 1.乳酸
- 2.尿酸
- 3.脂肪酸
- 4.蛋白質
- 5.アンモニア
対話形式の解説
博士
今日はケトン体の話じゃ。術後や絶食時に重要となる代謝経路じゃよ。
アユム
ケトン体ってダイエットでよく聞きますよね。
博士
そうじゃ。糖質を制限するとケトン体が増えて脂肪が燃える、というあれじゃ。今回は術後にどう関わるかを学ぶぞ。
アユム
術後ってどうしてエネルギー不足になるんですか?
博士
手術という侵襲がストレスとなり、カテコラミンやコルチゾールが上昇して異化が亢進するのじゃ。これをMooreの分類では「傷害期」と呼び、術後2〜4日続くのじゃよ。
アユム
食事も摂れないですしね。
博士
うむ。糖質が足りないと、体は別のエネルギー源を探す。そこで脂肪組織のトリグリセリドが分解されて、遊離脂肪酸が血中に放出されるのじゃ。
アユム
脂肪が燃えるんですね。
博士
脂肪酸は肝細胞のミトコンドリアに運ばれてβ酸化を受け、アセチルCoAという物質に分解される。これが大量にできすぎると、クエン酸回路に入りきらなくなる。
アユム
余ったアセチルCoAはどうなるんですか?
博士
ここがポイント!余剰アセチルCoAが2分子縮合して、アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトンの3つに変換される。これらをまとめて「ケトン体」と呼ぶのじゃ。
アユム
つまりケトン体の元は脂肪酸ということですね!
博士
その通り。だから問題の答えは「脂肪酸」じゃ。乳酸や尿酸、アンモニアはケトン体の供給源にはならんのじゃ。
アユム
蛋白質はどうですか?分解されるとアミノ酸になりますよね。
博士
鋭いぞ。一部のケト原性アミノ酸(ロイシン・リジンなど)は分解されてアセチルCoAやアセト酢酸を経由するが、これは「主たる」供給源ではないのじゃ。やはり脂肪酸が王道じゃよ。
アユム
ケトン体は脳や筋肉のエネルギーになるんですよね?
博士
うむ。脳は通常ブドウ糖しか使えんが、飢餓時にはケトン体を約60%まで利用できるようになる。心筋や骨格筋でも重要な燃料じゃ。
アユム
ケトン体って酸性なんですか?
博士
アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸は酸性じゃ。だから増えすぎると血液が酸性に傾く「ケトアシドーシス」を起こす。糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)が代表例で、命に関わる病態じゃよ。
アユム
術後の栄養管理が大事な理由がよくわかりました。
博士
その通り。早期経口摂取や輸液で糖質を補い、過度なケトーシスを防ぐのが現代の術後管理の基本じゃ。
POINT
術後の異化期では侵襲によるカテコラミン・コルチゾールの上昇で脂肪分解が進み、脂肪酸が肝臓でβ酸化されてアセチルCoAとなり、糖質不足下で余剰アセチルCoAがアセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトンの3種のケトン体に合成されます。すなわちケトン体の直接的な供給源は脂肪酸であり、生成されたケトン体は脳・心筋・骨格筋でエネルギー源として利用されます。乳酸・尿酸・蛋白質・アンモニアはケトン体の主供給源ではなく、特に乳酸は糖新生に、アンモニアは尿素合成に、尿酸はプリン体代謝の老廃物として位置付けられます。ケトン体は酸性物質のため過剰産生はケトアシドーシスを招き、糖尿病性ケトアシドーシスや飢餓性ケトーシスの病態理解にも直結する重要な代謝経路です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:術後の回復過程でエネルギー不足の場合にケトン体の供給源となるのはどれか。
解説:正解は 3 です。糖質が不足する飢餓状態や術後の異化期では、脂肪組織のトリグリセリドが分解されて遊離脂肪酸(FFA)が血中に放出される。脂肪酸は肝細胞のミトコンドリアでβ酸化を受けてアセチルCoAとなり、これが2分子縮合してアセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトンの3種類のケトン体に合成される。すなわちケトン体の直接的な供給源(前駆物質)は脂肪酸である。
選択肢考察
-
× 1. 乳酸
乳酸は嫌気性解糖の最終産物で、肝臓でコリ回路を介して糖新生に利用される。ケトン体合成の供給源ではない。
-
× 2. 尿酸
尿酸はプリン体(核酸)の最終代謝産物で老廃物として排泄される。エネルギー代謝やケトン体合成には関与しない。
-
○ 3. 脂肪酸
肝臓で脂肪酸がβ酸化されてアセチルCoAが大量産生され、糖質不足下でクエン酸回路に入りきれない余剰アセチルCoAがケトン体に変換される。
-
× 4. 蛋白質
蛋白質はアミノ酸に分解され、糖原性アミノ酸は糖新生、ケト原性アミノ酸はアセチルCoAやアセト酢酸に至るが、ケトン体の主たる供給源ではなく直接的でもない。
-
× 5. アンモニア
アンモニアはアミノ酸の脱アミノで生じる毒性物質で、肝臓の尿素回路で尿素に変換され排泄される。エネルギー源やケトン体源ではない。
ケトン体(アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトン)は糖質不足時の代替エネルギー源で、脳・心筋・骨格筋でアセチルCoAに戻されて利用される。生成過剰になると血中ケトン体が上昇し、アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸が酸性のためケトアシドーシスを起こす(糖尿病性ケトアシドーシス、飢餓ケトーシス)。術後早期は侵襲によるカテコラミン・コルチゾール上昇で異化亢進・脂肪分解が進み、糖質が不足するとケトン体産生が起こりやすい。Mooreの分類(傷害期・転換期・筋力回復期・脂肪蓄積期)の傷害期に対応する。
ケトン体合成の前駆物質を生化学的に問う問題。「脂肪酸 → β酸化 → アセチルCoA → ケトン体」の流れを理解しているかがポイント。
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