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大規模地震発生――病棟看護師長は今、何を優先すべきか

看護師国家試験 第109回 午後 第76問 / 看護の統合と実践 / 災害と看護

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第76問

朝 9 時に大規模地震が発生した。病棟の患者と職員の安全は確認できた。病棟内の壁や天井に破損はなかったが、病院は、停電によって自家発電装置が作動した。 病棟の看護師長が行う対応で適切なのはどれか。

  1. 1.災害対策本部を設置する。
  2. 2.災害時マニュアルを整備する。
  3. 3.隣接する病棟に支援を要請する。
  4. 4.スタッフに避難経路の安全確認を指示する。

対話形式の解説

博士 博士

災害医療の看護管理問題じゃ。朝9時に大規模地震、患者と職員は無事、病棟に破損はないが停電で自家発電が稼働中。病棟看護師長の次の行動を考えるぞ。

アユム アユム

まず安全確認が済んでいるので、次は何を?

博士 博士

次の大きなリスクは『余震』じゃ。大規模地震の後には同規模の余震が繰り返し起こる可能性があり、いつでも避難できる体制を作らねばならん。

アユム アユム

だから選択肢4の『避難経路の安全確認を指示する』が正解なんですね。

博士 博士

その通り!階段に亀裂はないか、非常口が塞がっていないか、通路に落下物や倒壊した物がないか――余震時に患者を安全に誘導できるかを確認する必要がある。

アユム アユム

選択肢1の『災害対策本部を設置する』はダメなんですか?重要そうですが。

博士 博士

設置判断は病院長(管理者)の役割じゃ。病棟師長の権限外。師長は本部設置を待って、そこからの指示を自部署に伝達し実行する立場じゃな。

アユム アユム

『災害時マニュアルを整備する』も違いますよね。

博士 博士

そう、マニュアル整備は平時にやっておくこと。地震発生後に『じゃあマニュアルを作ろう』では話にならん。今は整備したマニュアルに従って動く段階じゃ。

アユム アユム

隣接病棟に支援要請するのは?

博士 博士

隣接病棟も同じ被災状況じゃから、単独で応援要請するのは不適切。必要なら院内災害対策本部を通じて全体調整の中で応援を依頼する。部署間の勝手な依頼は情報を錯綜させるのじゃ。

アユム アユム

災害時対応の原則って何かありますか?

博士 博士

CSCATTTじゃ。Command(指揮)、Safety(安全)、Communication(情報伝達)、Assessment(評価)、Triage(トリアージ)、Treatment(治療)、Transport(搬送)の順じゃな。

アユム アユム

病院の事業継続計画(BCP)の話も聞きます。

博士 博士

BCPでは停電時の自家発電(通常72時間分の燃料)、水道、酸素、通信手段などの確保を事前計画する。自家発電稼働中はすべての医療機器が動くわけではなく、人工呼吸器など優先接続機器を確認しておく必要がある。

アユム アユム

看護師長は現場でどんな情報を本部に報告するんですか?

博士 博士

5W1H――いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、の枠組みで簡潔にじゃ。『病棟Aは患者全員無事、病棟破損なし、避難経路確認中、人工呼吸器装着患者3名は自家発電で稼働中』といった具体的報告が大事じゃな。

アユム アユム

災害医療って、日常の業務以上に組織的な動きが必要なんですね。

博士 博士

その通り。役割分担を理解し、自分の立場で何をすべきかを即座に判断できる能力が求められる。国試でもこのテーマは頻出じゃから、役職ごとの責任範囲を押さえておくとよいぞ。

POINT

大規模地震発生時、病棟看護師長の最優先業務は自部署の安全確保と避難準備です。患者と職員の無事が確認できた次の段階は、余震に備えて避難経路の安全を確認することであり、これがスタッフへの指示として最適です。災害対策本部の設置は病院長の職務で師長の権限外、マニュアル整備は平時に済ませておくべきもの、隣接病棟への応援要請は同時被災の状況では不適切かつ越権行為です。災害対応の原則CSCATTT、病院BCP、自家発電・ライフライン管理、5W1H報告といった災害医療の基本フレームを理解し、役割ごとの責任範囲を明確にすることが、看護管理者として求められる能力です。現場で即応できる判断力は訓練と知識によって養われ、災害医療教育は現代看護師に必須の学習領域となっています。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:朝 9 時に大規模地震が発生した。病棟の患者と職員の安全は確認できた。病棟内の壁や天井に破損はなかったが、病院は、停電によって自家発電装置が作動した。 病棟の看護師長が行う対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。大規模地震発生直後の病棟看護師長の役割は、自部署の安全確保と避難準備の指揮です。余震の可能性がある中で、患者と職員が安全かつ迅速に避難できるよう、避難経路に落下物や通行障害がないかを直ちに確認し、緊急時に備える必要があります。ライフラインが不安定な状況で、自家発電稼働中の医療機器管理や酸素・吸引などの継続使用の確認とともに、避難経路確保は看護管理者の最優先事項です。

選択肢考察

  1. × 1.  災害対策本部を設置する。

    災害対策本部は病院全体を統括する指揮中枢で、設置は病院長(管理者)または事務局長など病院管理者の職務。病棟看護師長の権限外で、本部からの情報・指示を自部署に伝達し実行するのが師長の役割。

  2. × 2.  災害時マニュアルを整備する。

    マニュアル整備は平時に完了しておくもので、発災時に行う作業ではない。災害時はマニュアルに従って行動する段階。災害発生後にマニュアルを整備し始めるのは明らかに時間的・優先順位的に誤り。

  3. × 3.  隣接する病棟に支援を要請する。

    隣接病棟も同じ地震で被災している可能性が高く、先に支援要請は不適切。必要な応援要請は院内災害対策本部を通じて全体調整の中で行うべきで、部署間の直接依頼は混乱を招く。

  4. 4.  スタッフに避難経路の安全確認を指示する。

    発災直後の師長業務の最優先は自部署の安全確保と避難準備。余震に備えた避難経路(階段、非常口、通路)の障害物・亀裂・落下物の確認は、次の行動を左右する最重要タスク。

病院における災害対応はCSCATTT(Command/Safety/Communication/Assessment/Triage/Treatment/Transport)の原則で行動する。指揮は病院災害対策本部、各部署は本部指示に従う。病院の事業継続計画(BCP)では、停電時の自家発電稼働(通常72時間)、酸素供給、水道、エレベーター、通信手段の確保が重要課題。トリアージは院内でも行い、重症患者優先の治療と適切な搬送判断を行う。看護師長は自部署の状況把握→報告→指示伝達→スタッフ指揮→患者対応のリーダーシップを担う。被害状況や必要資源の情報は『5W1H』で簡潔に本部報告することが求められる。

災害発生時における病棟看護師長の役割を問う問題。師長の責任範囲は『自部署』であり、最優先は『安全確保と避難準備』。