災害慢性期に現れやすい健康問題を押さえよう
看護師国家試験 第110回 午前 第71問 / 看護の統合と実践 / 災害と看護
国試問題にチャレンジ
大規模災害発生後2か月が経過し、応急仮設住宅で生活を始めた被災地の住民に出現する可能性が高い健康問題はどれか。
- 1.慢性疾患の悪化
- 2.消化器感染症の発症
- 3.深部静脈血栓症( deep vein thrombosis )の発症
- 4.急性ストレス障害( acute stress disorder )の発症
対話形式の解説
博士
災害看護では時期ごとに起こりやすい健康問題が違うんじゃよ。今日はそれを整理しようかの
サクラ
はい、よろしくお願いします。発災2か月後で仮設住宅に入った住民だと、どんな問題が多いのですか
博士
まず超急性期から急性期、つまり発災直後から1週間までは外傷や感染症が中心じゃ
サクラ
避難所で胃腸炎などが流行るイメージですね
博士
そうじゃ。続いて亜急性期、1〜2週間頃には車中泊や狭い避難所で動かないせいで深部静脈血栓症が出やすい
サクラ
エコノミークラス症候群ですね。運動と水分摂取の指導が大切だと習いました
博士
その通り。そして2か月ほど経って仮設住宅に移る慢性期、これが今回の問題の時期じゃ
サクラ
このあたりでは何が問題になるのでしょう
博士
生活環境が変わって薬が切れたり、ストレスで高血圧や糖尿病のコントロールが崩れやすくなる。慢性疾患の悪化が最大のリスクじゃ
サクラ
なるほど、だから正解は選択肢1なのですね
博士
うむ。また急性ストレス障害は4週間以内が目安で、それ以降1か月以上続けばPTSDと呼ばれるんじゃ
サクラ
時期で名称が変わるのがポイントですね。保健師の巡回訪問が重要になる理由がよく分かりました
POINT
大規模災害後2か月という時点は応急仮設住宅への移行が始まる慢性期です。この時期は被災によるストレスと生活環境の激変、服薬中断などが重なり、もともと抱えていた慢性疾患の悪化が最大の健康課題となります。消化器感染症は急性期、深部静脈血栓症は亜急性期、急性ストレス障害は急性期〜亜急性期に頻発するため、本問では時期に最も合致する選択肢1を選ぶことが求められます。災害サイクルと健康課題の対応表を頭に入れておきましょう。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:大規模災害発生後2か月が経過し、応急仮設住宅で生活を始めた被災地の住民に出現する可能性が高い健康問題はどれか。
解説:正解は1です。発災から2か月が経過して応急仮設住宅での生活が始まる時期は、慢性期に該当します。この時期には避難生活の長期化や環境変化に伴うストレス、服薬・通院の中断、かかりつけ医療機関の喪失などが重なり、高血圧症や糖尿病などの慢性疾患が悪化しやすくなります。
選択肢考察
-
○ 1. 慢性疾患の悪化
仮設住宅への入居が始まる慢性期は、生活環境の激変、経済的不安、孤立感、処方薬の不足などが重なり、もともと有していた高血圧・糖尿病・心疾患などのコントロールが乱れやすい時期です。保健師による訪問や巡回診療による服薬確認が重要になります。
-
× 2. 消化器感染症の発症
消化器感染症は、衛生環境が不十分な避難所での集団生活が続く発災後数日から数週間の超急性期〜急性期に多発します。仮設住宅に移行した段階では衛生状態が改善されるため、発生リスクは相対的に低下します。
-
× 3. 深部静脈血栓症( deep vein thrombosis )の発症
深部静脈血栓症は車中泊や狭い避難所で下肢の運動が制限される亜急性期(発災後1〜2週間程度)に生じやすい病態です。仮設住宅へ移り活動範囲が広がる頃には主たる発生時期を過ぎています。
-
× 4. 急性ストレス障害( acute stress disorder )の発症
急性ストレス障害は外傷体験後3日から4週間以内に生じる病態で、症状が1か月以上持続する場合はPTSDへと診断が移行します。発災から2か月後に新規に発症する健康問題としては当てはまりません。
災害サイクルは超急性期・急性期・亜急性期・慢性期・静穏期に分けられ、それぞれで注意すべき健康課題が異なります。急性期は外傷や感染症、亜急性期はエコノミークラス症候群や生活不活発病、慢性期は慢性疾患悪化・うつ・PTSD、と対応づけて覚えると整理しやすいです。
災害サイクル(時期区分)ごとに優先される健康問題が異なることを理解しているかを問う設問です。
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