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異文化家庭への生活指導、最初の一歩は『聞く』こと

看護師国家試験 第112回 午後 第72問 / 看護の統合と実践 / 国際化と看護

国試問題にチャレンジ

112回 午後 第72問

Aさん(58歳、男性)は外国籍の妻(40歳)と10年前に結婚し、2人で暮らしている。虚血性心疾患(ischemic heart disease)と診断され、外来看護師による生活指導を妻と一緒に受けることになった。初回の面談で、Aさんは「10年間で体重が10kg増えました。妻の母国の習慣で味が濃いおかずや揚げ物とご飯を1日に何度も食べています。最近、2人とも運動をしなくなりました」と話した。 このときの外来看護師のAさんと妻への最初の対応で適切なのはどれか。

  1. 1.生活習慣の改善についてAさんと妻に考えを聞く。
  2. 2.食事は1日3回までにするよう指導する。
  3. 3.毎日1時間のウォーキングを提案する。
  4. 4.料理教室に通うことを勧める。

対話形式の解説

博士 博士

今日は虚血性心疾患と診断されたAさん夫婦への初回生活指導の問題じゃ。妻は外国籍で、母国の食文化で味の濃いおかずや揚げ物を何度も食べる習慣があるのじゃ。

アユム アユム

10年で10kg増、最近は運動もしていない…改善すべきことは山ほどありそうですね。真っ先に食事回数を3回までに制限するべきでしょうか?

博士 博士

気持ちは分かるが、それは勇み足じゃよ。初回面談でまずやるべきは『情報収集』と『関係構築』じゃ。生活習慣はその人の人生と文化そのものじゃからの。

アユム アユム

つまり、いきなり制限や指示を出すのではなく、まずは二人がどう感じているかを聞くということですね。

博士 博士

その通り。特にこの事例は外国籍の妻がいる異文化家庭じゃ。日本流の食事を押しつけると、妻の文化的アイデンティティを否定することになりかねん。

アユム アユム

文化的ケアという言葉を聞いたことがあります。Leiningerの理論ですよね。

博士 博士

よく知っておるな。文化ケアには『保持』『調整』『再構築』の3つがあり、母国の料理を残しながら塩分や油を調整する工夫を一緒に考えるのが調整型じゃ。

アユム アユム

動機づけ面接という手法とも関係しそうですね。

博士 博士

まさに。動機づけ面接では『開かれた質問・是認・聞き返し・要約(OARS)』を使って本人の変化への語りを引き出すのじゃ。『どう思っていますか』と聞くだけで本人の気づきが生まれることが多い。

アユム アユム

虚血性心疾患の二次予防としては、どんな目標値があるんですか?

博士 博士

LDLコレステロール70mg/dL未満、血圧130/80mmHg未満、BMI25未満、禁煙、有酸素運動週150分以上が標準的な目安じゃ。ただしこれを一気に達成しようとすると挫折する。スモールステップで積み上げるのが鉄則じゃよ。

アユム アユム

妻も一緒に来てくれている点は大きな強みですね。

博士 博士

そうじゃ。食事を作るキーパーソンが同席してくれれば、夫婦で共通目標を立てられる。家族を巻き込むことは行動変容の成功率を大きく上げるのじゃ。

アユム アユム

最初に『聞く』、これを守ることで個別性のある指導につながるんですね。

POINT

虚血性心疾患と診断されたAさん夫婦への初回面談で最も適切なのは、生活習慣改善について二人の考えを聞くことです。生活指導は一方的な情報提供ではなく、対象者の認識・価値観・生活背景を踏まえた協働作業であり、特に異文化家庭では妻の母国の食文化を尊重しながら調整点を一緒に探る姿勢が欠かせません。動機づけ面接のOARSや文化ケア理論の『保持・調整・再構築』の枠組みは、看護師が押しつけではなく伴走する支援を行う際の助けになります。虚血性心疾患の二次予防目標は明確ですが、達成の道筋は個別であり、初回はまず信頼関係と現状理解を優先するのが原則です。この問題は、看護の基本姿勢である対象者中心のアプローチと、多文化共生の視点を同時に問う良問といえます。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:Aさん(58歳、男性)は外国籍の妻(40歳)と10年前に結婚し、2人で暮らしている。虚血性心疾患(ischemic heart disease)と診断され、外来看護師による生活指導を妻と一緒に受けることになった。初回の面談で、Aさんは「10年間で体重が10kg増えました。妻の母国の習慣で味が濃いおかずや揚げ物とご飯を1日に何度も食べています。最近、2人とも運動をしなくなりました」と話した。 このときの外来看護師のAさんと妻への最初の対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 1 です。虚血性心疾患の再発予防には減塩・減量・運動療法などの生活習慣改善が不可欠ですが、初回面談ではまず対象者自身が自分たちの生活習慣をどう認識し、何を変えたい/変えたくないと感じているかを把握することが出発点になります。特に本事例は異文化背景をもつ夫婦であり、食習慣は妻の母国の文化と深く結びついているため、看護師の価値観を一方的に押しつけず、二人の語りに耳を傾けて協働的に目標設定することが行動変容への近道となります。

選択肢考察

  1. 1.  生活習慣の改善についてAさんと妻に考えを聞く。

    初回面談では情報収集と関係性構築が最優先。夫婦が現状をどうとらえ、何を大切にし、どこに改善の意思があるかを聴取してから個別性のある計画を立てるのが原則で、動機づけ面接の基本姿勢にも合致する。

  2. × 2.  食事は1日3回までにするよう指導する。

    食事回数の制限は本質的な解決策ではなく、総エネルギー量や塩分・脂質の内容把握が先。本人の考えを聞かずに一方的に枠を決めると信頼関係が築きにくい。

  3. × 3.  毎日1時間のウォーキングを提案する。

    運動習慣の獲得は有効だが、現在の活動量・体力・意欲・生活時間帯を確認しないまま具体量を提示しても継続性が期待できず、挫折や自己効力感の低下につながりうる。

  4. × 4.  料理教室に通うことを勧める。

    食環境の整備は選択肢になり得るが、妻の母国文化を尊重せず『日本流』に作り変える提案になりかねない。まず夫婦の希望を確認してから情報提供するのが適切。

異文化看護では『文化的ケア』の視点が重要で、Leiningerの文化ケア理論では文化の保持・調整・再構築の3アプローチが示されている。食事指導では母国の食材や調理法を活かしつつ塩分・脂質を調整する方法を一緒に探ると受け入れられやすい。虚血性心疾患の二次予防ではLDL-C 70mg/dL未満、血圧130/80mmHg未満、体重BMI25未満、禁煙、有酸素運動週150分以上などが標準的目標。

生活指導の初回面談では、対象者の認識・価値観・生活背景を聴取することが最初の対応であるという原則と、多文化共生における文化尊重の姿勢を問う問題。