外国籍の家族に予防接種を伝える!多文化看護の基本対応
看護師国家試験 第114回 午後 第75問 / 看護の統合と実践 / 国際化と看護
国試問題にチャレンジ
生後1か月の乳児健康診査の際、外国籍の両親から子どもの予防接種について質問があった。父親は長期に日本で就労するため、子どもは定期予防接種を受けることができる。両親は「日本語が難しく、予防接種のスケジュールがよく分からない」と看護師に言った。 看護師の対応で適切なのはどれか。
- 1.母国の大使館への相談を勧める。
- 2.医療で使う言葉を覚えるように促す。
- 3.地区担当の保健師への電話相談を提案する。
- 4.両親が理解できる言語で書かれたパンフレットを渡す。
対話形式の解説
博士
今回は外国籍の両親への予防接種の説明場面じゃ。看護師としてどう対応するのが最適か考えてみるのじゃ。
サクラ
ご両親は「日本語が難しくてスケジュールが分からない」と困っていますね。
博士
そうじゃ。生後1か月だと、これからBCGやB型肝炎、ヒブ、肺炎球菌、ロタウイルス、四種混合と接種が立て込んでくる重要な時期じゃ。
サクラ
接種を逃すと感染症のリスクが上がりますよね。すぐに対応が必要だと思います。
博士
その通り。では4つの選択肢のうち、最も即時的で実用的な支援はどれかな?
サクラ
母国の大使館に相談を勧める…でも大使館は予防接種のスケジュールには詳しくなさそうですね。
博士
鋭いぞ。大使館は領事業務が中心で、日本の自治体が実施する定期予防接種の運用には関与しないのじゃ。
サクラ
じゃあ「医療で使う言葉を覚えるように促す」は?
博士
それは現実的ではないのじゃ。新生児を抱えるご両親に語学学習を求めても、その間に接種時期を逃してしまう。看護師は今すぐできる支援を考えるべきじゃ。
サクラ
「保健師への電話相談」は?
博士
保健師は大切な相談先じゃが、日本語に不安がある状態で電話で複雑な内容を理解するのは難しい。通訳手配も必要になる。最善とは言いにくいのじゃ。
サクラ
残るのは「両親が理解できる言語で書かれたパンフレットを渡す」ですね。これが正解?
博士
その通り。母語の資料は視覚的にスケジュールを伝えられ、自宅で何度でも見返せる。厚生労働省や自治体は多言語版「予防接種と子どもの健康」を公開しておるのじゃ。
サクラ
英語や中国語、ベトナム語、ポルトガル語などですよね。
博士
うむ。在留外国人の多い言語に対応しておる。これに加えて、医療通訳サービスや「やさしい日本語」の活用を案内すれば、さらに支援が手厚くなるのじゃ。
サクラ
外国籍の子どもも定期予防接種を受けられるんですよね?
博士
住民登録があれば公費で受けられるのじゃ。父親が長期就労で住民登録があれば対象となる。
サクラ
文化的・言語的な背景に配慮する「カルチュラル・コンピテンス」が看護師にも求められるんですね。
博士
その通りじゃ。対象者が「今すぐ理解できる形」で情報を提供することが看護の基本。多文化共生時代の必須スキルじゃよ。
POINT
外国籍家族への保健指導では、対象者が即座に理解できる形での情報提供が最も重要です。母語で書かれた多言語パンフレットは、厚生労働省や自治体が「予防接種と子どもの健康」など複数言語で公開しており、視覚的にスケジュールを伝え、自宅で何度でも見返せる利点があります。大使館への相談は予防接種実務には不向きであり、言語学習の促しは現実的でなく、電話相談は言語的ハードルが高くなります。在留外国人の増加に伴い、看護職には多言語資料の活用、医療通訳の手配、やさしい日本語の使用、文化的配慮など、カルチュラル・コンピテンスを発揮することが求められており、対象者の背景に合わせた個別性のある支援が母子保健の質を支えます。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:生後1か月の乳児健康診査の際、外国籍の両親から子どもの予防接種について質問があった。父親は長期に日本で就労するため、子どもは定期予防接種を受けることができる。両親は「日本語が難しく、予防接種のスケジュールがよく分からない」と看護師に言った。 看護師の対応で適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。両親は「日本語が難しくスケジュールが分からない」と困難を訴えている。この場面で最も実用的かつ即時性のある支援は、両親が理解できる言語で書かれたパンフレットを提供することである。厚生労働省や自治体は予防接種のスケジュールを多言語(英語・中国語・ベトナム語・ポルトガル語など)で作成しており、視覚的に理解できる資料は接種漏れを防ぎ、家族の自己決定を支える有効な手段となる。
選択肢考察
-
× 1. 母国の大使館への相談を勧める。
大使館は領事業務が中心で、日本国内の自治体が実施する定期予防接種のスケジュールや接種券の運用には精通していない。具体的な情報提供を期待できないため不適切。
-
× 2. 医療で使う言葉を覚えるように促す。
新生児を抱える両親に医療用語の習得を求めるのは現実的でなく、習得を待つ間に接種時期を逃すリスクがある。看護師が今すぐできる支援を提供する姿勢に欠ける。
-
× 3. 地区担当の保健師への電話相談を提案する。
保健師は重要な相談相手だが、「日本語が難しい」と訴える両親にとって電話相談は言語的ハードルが高く、通訳の手配も必要となる。即時性・実用性の点で最善とはいえない。
-
○ 4. 両親が理解できる言語で書かれたパンフレットを渡す。
母語の資料は接種スケジュール・順序・手続きを視覚的に伝えることができ、自宅で何度でも見返せる。多言語パンフレットは厚生労働省や自治体が公開しており、最も即効性のある支援となる。
在留外国人の増加に伴い、母子保健分野でも文化的・言語的多様性への配慮(カルチュラル・コンピテンス)が求められる。看護職には(1) 母語資料の提供、(2) 医療通訳の活用(電話通訳・派遣通訳・タブレット型多言語翻訳)、(3) やさしい日本語の使用、(4) 文化的背景への配慮、が期待される。日本の定期予防接種は予防接種法に基づき、住民登録のある外国籍の子どもも公費で受けられる。BCG・B型肝炎・ロタウイルス・ヒブ・小児用肺炎球菌・四種混合などの初期スケジュールは複雑で、多言語版「予防接種と子どもの健康」が活用される。
言語の壁を抱える外国籍家族への保健指導において、最も実用的で即時的な支援を選択できるかを問う問題。「対象者が今すぐ理解できる形での情報提供」が看護の基本姿勢。
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