避難所における幼児の心理支援
看護師国家試験 第105回 午後 第117問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aちゃん(4歳、男児)は、昨夜の土砂災害によって両親とともに小学校の体育館に避難している。母親は自分の両親の安否が不明なため眠ることができなかった。また、落ち着きがなく感情的になっている。父親はずっと毛布をかぶって横になっている。 Aちゃんの母親は自分の両親と連絡がとれた。避難所生活5日目、親子3人で過ごすことが多くなってきた。Aちゃんの活気がなくなってきている。 地域の病院から派遣された看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 1.両親のAちゃんへの関わりを見守る。
- 2.Aちゃんと災害時のことを一緒に話す。
- 3.Aちゃんが他の子どもと遊べる機会をつくる。
- 4.災害時の様子を絵に描くようAちゃんに勧める。
対話形式の解説
博士
避難所5日目、Aちゃんの活気がなくなってきた。さて派遣看護師の対応で最も適切なのはどれじゃろうか?
サクラ
5日目ということは、災害から少し時間が経ってきましたね。
博士
そうじゃ。最初の多動や興奮が治まり、今度は沈み込み・活気低下が出てきている。避難所という閉鎖環境で、遊ぶ場も友達もおらず、両親も余裕がない状態では当然じゃ。
サクラ
子どもの発達と避難所生活はミスマッチが大きいんですね。
博士
そのとおり。子どもにとって『遊び』は発達課題そのものじゃ。ピアジェやヴィゴツキー、エリクソンもみな遊びを重視した。そして遊びは感情表出の手段でもあるんじゃ。
サクラ
言葉で表現できない感情を遊びで表すということですか?
博士
そうじゃ。これを遊戯療法の観点ともいう。恐怖・怒り・悲しみを遊びやごっこ遊びに投影することで、心の整理がつくんじゃ。避難所で遊びを奪われた子どもは、自然な回復プロセスが阻害されやすい。
サクラ
では選択肢を見ていきます。選択肢1の『両親の関わりを見守る』は?
博士
見守るだけでは不十分じゃ。両親も被災者で余裕がなく、活気低下の進行を放置することになる。専門職としては具体的介入が必要じゃ。
サクラ
選択肢2の『災害時のことを一緒に話す』は?
博士
これは大事なポイントじゃ。かつては体験を語らせる『心理的デブリーフィング』が行われたが、現在はWHOなどから有害とされ推奨されておらん。大人主導で災害場面を詳細に語らせると、再体験・フラッシュバックを招きPTSD化を助長する恐れがあるんじゃ。
サクラ
そうなんですね、良かれと思ってやると逆効果になるんですね。
博士
そう。現在の国際標準は『PFA(サイコロジカル・ファーストエイド)』で、安全・安心・つながり・有効性・希望の5要素を重視する。無理に語らせず、子どもが自発的に話したらしっかり聴くスタンスじゃ。
サクラ
選択肢3の『他の子どもと遊べる機会をつくる』が正解ですね。
博士
そうじゃ。同世代との遊びは気分転換・社会性維持・非言語的な感情発散を促す。避難所内にキッズスペースを設けることは、子どものストレス軽減だけでなく、保護者にも休息時間を与える一石二鳥の支援じゃ。
サクラ
選択肢4の『災害時の様子を絵に描くよう勧める』は?
博士
絵は自発的に描くなら感情処理の意味があるが、看護師から促すのは侵入症状を誘発する危険がある。選択肢2と同じ理由で不適切じゃ。
サクラ
自発的な表出は受容するけれど、大人から促すのは避けるというバランスが大事なんですね。
博士
その通り。子どもが描いた絵や遊びの内容をよく観察し、必要なら専門職につなぐ。支援者は聞き役・見守り役に徹することが原則じゃ。
サクラ
避難所での子ども支援は、環境整備と遊びの場づくりが鍵なんですね。
博士
そうじゃ。最近の災害では避難所にキッズスペース、学習スペース、乳幼児スペースを設けることが標準化されつつある。地域の保育士・教員・看護師が連携して運営する体制づくりも重要な課題じゃよ。
POINT
避難所5日目に活気を失った幼児への最適な介入は、同世代と遊べる機会を作ることです。遊びは子どもの発達課題であり感情表出の手段でもあり、気分転換とストレス軽減に有効です。災害体験を大人から語らせる心理的デブリーフィングは再体験を誘発する恐れがあり推奨されません。PFAの原則に沿い、安全と遊びの場を提供することが災害時の小児支援の基本です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aちゃん(4歳、男児)は、昨夜の土砂災害によって両親とともに小学校の体育館に避難している。母親は自分の両親の安否が不明なため眠ることができなかった。また、落ち着きがなく感情的になっている。父親はずっと毛布をかぶって横になっている。 Aちゃんの母親は自分の両親と連絡がとれた。避難所生活5日目、親子3人で過ごすことが多くなってきた。Aちゃんの活気がなくなってきている。 地域の病院から派遣された看護師の対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。子どもにとって『遊び』は発達の糧であり、不安・恐怖・怒りなどの感情を言葉にできない代わりに表現する手段(遊戯療法的意味)でもあります。避難所で活気をなくしたAちゃんは、狭く刺激に乏しい環境で遊びの機会が失われ、親も余裕がない中で発散の場を失っている状態です。同世代の子どもと遊べる機会を作ることで、自然な感情表出と気分転換が促され、ストレス反応の悪化予防につながります。
選択肢考察
-
× 1. 両親のAちゃんへの関わりを見守る。
両親自身もストレス下にあり、見守るだけでは活気低下の進行を許してしまいます。看護師としては具体的な介入や環境調整を行うべき場面です。
-
× 2. Aちゃんと災害時のことを一緒に話す。
受傷体験を本人主導でなく大人から促して詳細に語らせる(デブリーフィング)のは、かえって再体験(フラッシュバック)を誘発しPTSD化を助長する恐れがあるため現在は推奨されません。
-
○ 3. Aちゃんが他の子どもと遊べる機会をつくる。
遊びは子どもにとって発達課題であり感情表出の手段です。同世代との遊びは気分転換・社会性維持・非言語的な感情発散を促し、活気低下を回復させる最も適した介入です。
-
× 4. 災害時の様子を絵に描くようAちゃんに勧める。
絵は感情表現の手段になりえますが、看護師から災害場面の描画を促すのは侵入症状を誘発するリスクがあり、現段階では不適切です。自発的に描く場合は受容し支援します。
災害時の子ども支援の基本原則は『PFA(サイコロジカル・ファーストエイド)』で、安全・安心・つながり・有効性・希望の5要素を重視します。子どもには『遊びの場(キッズスペース)』の設置が重要で、避難所内での子どもの居場所づくりはストレス軽減と保護者の休息時間確保の両面で効果があります。災害体験を語らせる心理的デブリーフィングは有害とされ、WHO等のガイドラインでは推奨されていません。
避難所生活で活気を失った幼児への看護師の介入として、遊びを通じた感情表出支援が最適と判断できるかを問う問題です。
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