小児急性胃腸炎と疼痛評価
看護師国家試験 第105回 午前 第99問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 A君(6歳、男児)は、昨日午後から今朝にかけて5回の下痢便がみられ、体温が38.0℃であったため祖母と受診した。経口摂取は昨日の昼食が最後である。便の簡易検査の結果、ノロウイルスによる胃腸炎(gastroenteritis)と診断され、個室に入院した。入院後、末梢静脈ラインが左手背に留置され持続点滴が開始された。両親は同様の症状があるため面会できない。祖母が帰宅した後、A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部の方に寄せ抱えるようにしている。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数36/分、心拍数120/分であった。 このときのA君に行う看護として最も適切なのはどれか。
- 1.起座位をとらせる。
- 2.食事の開始を検討する。
- 3.好きな玩具で遊ばせる。
- 4.痛みの程度を評価する。
- 5.解熱鎮痛薬を服薬させる。
対話形式の解説
博士
6歳のA君はノロウイルス胃腸炎で入院。祖母が帰った後、顔をしかめて側臥位で膝を腹部に抱える姿勢をとっておる。体温37.5、心拍数120、呼吸数36じゃ。
サクラ
エビのような姿勢は腹痛の時によく見られる体位ですよね。腹筋の緊張を緩めて痛みを軽減する姿勢です。
博士
その通り。心拍と呼吸の増加も痛みや脱水の影響と考えられる。両親が同様の症状で面会できず、祖母も帰宅、本人は一人ぼっちでストレスも大きい状況じゃ。
サクラ
この時の最優先の看護は何でしょうか。
博士
正解は4の「痛みの程度を評価する」じゃ。腹痛を示唆する体位とバイタル変化があるから、部位・性状・強さを評価することがすべての対応の前提になる。
サクラ
小児の疼痛評価はどう行うのですか。
博士
6歳なら「Wong-Baker フェイススケール」が使いやすい。笑顔から泣き顔までの絵を示して選んでもらう。他にFLACCスケール(顔・脚・活動・啼泣・慰めやすさ)も客観的で有用じゃ。
サクラ
1の起座位はどうでしょう。
博士
起座位は呼吸困難の軽減に使う体位で、腹痛には逆効果じゃ。A君が自分で選んだ楽な体位を妨げてはいかん。
サクラ
2の食事開始は。
博士
下痢継続中で腹痛もあり、点滴で補液中の段階では早すぎる。嘔気嘔吐や下痢頻度が減ってから段階的に経口再開じゃ。
サクラ
3の玩具で遊ばせるは気分転換になりそうですが。
博士
気分転換も大事じゃが、今は痛みで体位も制限された急性期。まず痛み評価と対応が先じゃ。
サクラ
5の解熱鎮痛薬を内服させるは。
博士
評価なしに投与するのは看護診断の手順を飛ばしておる。しかも下痢嘔吐中は内服困難なことも多い。医師の指示と評価に基づく判断が必要じゃ。
サクラ
ノロウイルスの腹痛の特徴はありますか。
博士
腹部全体の差し込むような痛みが典型で、下痢に伴って疝痛様に強くなる。胆石や虫垂炎のような限局性の痛みとは異なるな。
サクラ
小児で特に注意することは何ですか。
博士
脱水じゃ。体重当たりの体液量が多く予備能が少ないので急速に脱水する。口唇乾燥、皮膚ツルゴール、尿量、毛細血管再充満時間(CRT)、意識レベルを繰り返し評価するのじゃ。
サクラ
心理面のケアも大事ですね。両親と会えず、入院も初めてかもしれないので。
博士
その通り。プレパレーションや年齢相応の説明、付き添いスタッフの配置、好きな玩具やタオルなどのトランジショナルオブジェクトの活用、これらも看護の重要な要素じゃよ。
サクラ
まず痛みを評価して、それから脱水や心理面も見ていきます。
POINT
小児の急性腹痛では、まず痛みの部位・性状・強さを評価することが最優先です。A君は側臥位で膝を抱える腹痛軽減体位をとり頻脈・頻呼吸もあり、評価なくして鎮痛や他の介入はできません。6歳にはフェイススケールが適します。ノロウイルス胃腸炎では脱水管理が治療の中心で、口唇乾燥・皮膚ツルゴール・CRT・尿量の継続評価が必要です。両親と会えない心理的ストレスへの配慮も看護の重要な要素となります。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 A君(6歳、男児)は、昨日午後から今朝にかけて5回の下痢便がみられ、体温が38.0℃であったため祖母と受診した。経口摂取は昨日の昼食が最後である。便の簡易検査の結果、ノロウイルスによる胃腸炎(gastroenteritis)と診断され、個室に入院した。入院後、末梢静脈ラインが左手背に留置され持続点滴が開始された。両親は同様の症状があるため面会できない。祖母が帰宅した後、A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部の方に寄せ抱えるようにしている。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数36/分、心拍数120/分であった。 このときのA君に行う看護として最も適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部に引き寄せる(エビの姿勢)という典型的な腹痛軽減体位をとっており、心拍数120・呼吸数36と頻脈・頻呼吸も伴います。まず痛みの部位・性状・強さを評価し、バイタル変化や全身状態を合わせて原因と対応を判断することが最優先の看護です。
選択肢考察
-
× 1. 起座位をとらせる。
起座位は呼吸困難の軽減に用いる体位で、腹痛のある患者には腹筋緊張を強めて痛みを増悪させる可能性があります。A君は側臥位で膝を抱える姿勢が最も楽な体位を自ら選択しているため、それを妨げるべきではありません。
-
× 2. 食事の開始を検討する。
下痢が続き腹痛もあり、点滴で補液中の段階で食事再開を検討するのは時期尚早です。嘔気・嘔吐や下痢の頻度減少を確認してから段階的に再開します。
-
× 3. 好きな玩具で遊ばせる。
気分転換は有効な場合もありますが、現状は痛みがあり体位も制限されている急性期です。まず痛みの評価と対応が優先されます。
-
○ 4. 痛みの程度を評価する。
腹痛を示唆する体位と頻脈・頻呼吸があり、鎮痛や医師報告の前提として痛みの部位・性状・強さを評価することが最優先です。小児ではフェイススケールなどを用いた客観的評価が有用です。
-
× 5. 解熱鎮痛薬を服薬させる。
鎮痛薬投与の前に痛みの評価が必要で、下痢・嘔吐のある消化器症状急性期では内服自体が困難な場合もあります。医師の指示と評価に基づいて判断すべきです。
小児の疼痛評価には、(1)フェイススケール(Wong-Baker、3歳以上)、(2)NRS(10歳以上)、(3)FLACCスケール(顔・脚・活動・啼泣・慰めやすさ、2か月〜7歳)、(4)CHEOPS(1〜7歳)などがあります。6歳であればフェイススケールが適切です。ノロウイルス胃腸炎の腹痛は腹部全体の差し込むような痛みが典型で、下痢に伴って一時的に強くなる疝痛様のパターンをとります。脱水の評価(口唇乾燥・皮膚ツルゴール・尿量・毛細血管再充満時間)も重要で、小児は急速に脱水するため補液管理が治療の中心です。また、両親が同様の症状で面会できない状況下で6歳児が一人で入院しているという心理的ストレスにも配慮が必要です。
小児の急性腹痛に対する看護の優先順位と疼痛評価の重要性を理解しているかを問うています。
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