ノロウイルス感染対策と汚染物処理
看護師国家試験 第105回 午前 第100問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 A君(6歳、男児)は、昨日午後から今朝にかけて5回の下痢便がみられ、体温が38.0℃であったため祖母と受診した。経口摂取は昨日の昼食が最後である。便の簡易検査の結果、ノロウイルスによる胃腸炎(gastroenteritis)と診断され、個室に入院した。入院後、末梢静脈ラインが左手背に留置され持続点滴が開始された。両親は同様の症状があるため面会できない。祖母が帰宅した後、A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部の方に寄せ抱えるようにしている。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数36/分、心拍数120/分であった。 A君は病室内のトイレで排泄をしていた。看護師はマスク、手袋およびエプロンを着用しA君の排泄介助を行っていると、下着に便が付着していることに気付いた。看護師は、すぐにA君の下着を脱がせ流水で便を洗い流した。 下着の処理の方法で正しいのはどれか。
- 1.病室内のゴミ箱に捨てる。
- 2.病室内でエタノールに浸す。
- 3.病室内で次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸す。
- 4.病室外の汚物処理室の感染性廃棄物用の容器に捨てる。
対話形式の解説
博士
A君はノロウイルス胃腸炎で入院、下着に便が付着していることに気付いた場面じゃ。看護師はマスク・手袋・エプロンを着用して流水で便を洗い流したところまでは正しい対応じゃ。
アユム
その後の下着の処理が問題ですね。
博士
正解は3の「病室内で次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸す」じゃ。
アユム
なぜエタノールではなく次亜塩素酸ナトリウムなのですか。
博士
ノロウイルスはエンベロープを持たない非エンベロープウイルスで、アルコールに抵抗性があるのじゃ。脂質膜がないから脂質溶解作用のあるアルコールが効かん。次亜塩素酸ナトリウムはタンパク質や核酸を酸化して不活化するから有効なのじゃ。
アユム
濃度はどれくらい必要ですか。
博士
ふん便や吐物が付着した物には1000ppm(0.1%)、環境表面の清拭には200ppm(0.02%)が基準じゃ。市販の家庭用塩素系漂白剤(約5%)を50倍希釈で約1000ppmになる。
アユム
熱処理も有効と聞きました。
博士
85〜90℃で90秒以上じゃ。熱水洗濯機があればそれでも良いが、なければ次亜塩素酸ナトリウム浸漬が現実的じゃな。
アユム
1の病室内のゴミ箱に捨てるはなぜだめですか。
博士
消毒せず廃棄するとゴミ箱内で乾燥し空気中にウイルスが舞う。ノロウイルスは少量(10〜100個)でも感染するほど感染力が強いから、感染拡大の温床になる。
アユム
4の病室外の汚物処理室に捨てるは、廃棄場所としては正しそうですが。
博士
問題は経路じゃ。汚染物を未処理のまま廊下を運ぶとウイルスを拡散するリスクが高い。病室内で消毒・密閉してから搬送するのが原則じゃな。
アユム
2のエタノールはさっき説明してもらいましたね。効果が乏しいということで。
博士
その通り。近年は酸性化エタノール製剤などで一定の効果を示す製品もあるが、確実性を求めるなら次亜塩素酸ナトリウムが標準じゃ。
アユム
嘔吐物の処理手順についても教えてください。
博士
使い捨て手袋・マスク・ガウン・ゴーグルを着用し、ペーパータオルで吐物を外側から内側に向けて静かに拭き取り、次亜塩素酸ナトリウム1000ppmで清拭する。処理後は十分な換気と石けん流水での手洗いじゃ。手指消毒はアルコールでなく石けんと流水が基本じゃよ。
アユム
小児のノロウイルスは脱水リスクが高いので、感染対策と同時に全身管理も大事ですね。
博士
その通り。標準予防策に接触感染予防策を加え、個室管理、汚物処理の徹底、家族・医療者の手指衛生を守って院内感染を防ぐ。
アユム
ノロウイルスはインフルエンザと違って飛沫感染もあると聞きましたが。
博士
主な経路は接触感染と経口感染じゃが、吐物が乾燥して舞うとエアロゾル感染も起こりうる。だから汚物は乾燥前に速やかに処理するのが鉄則じゃ。
アユム
次亜塩素酸ナトリウム・接触感染対策・石けん流水手洗いの3点セットで覚えます。
POINT
ノロウイルスはエンベロープを持たずアルコールに抵抗性があるため、消毒は次亜塩素酸ナトリウム(吐物・便の付着物には1000ppm)や熱水処理(85〜90℃90秒以上)で行います。汚染された下着は病室外に持ち出すとウイルス拡散の危険があるため、病室内で消毒・密閉してから搬送するのが原則です。手指衛生は石けんと流水による物理的除去が基本で、小児では脱水対策と感染対策を並行して行うことが重要です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 A君(6歳、男児)は、昨日午後から今朝にかけて5回の下痢便がみられ、体温が38.0℃であったため祖母と受診した。経口摂取は昨日の昼食が最後である。便の簡易検査の結果、ノロウイルスによる胃腸炎(gastroenteritis)と診断され、個室に入院した。入院後、末梢静脈ラインが左手背に留置され持続点滴が開始された。両親は同様の症状があるため面会できない。祖母が帰宅した後、A君は顔をしかめ、側臥位で膝を腹部の方に寄せ抱えるようにしている。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数36/分、心拍数120/分であった。 A君は病室内のトイレで排泄をしていた。看護師はマスク、手袋およびエプロンを着用しA君の排泄介助を行っていると、下着に便が付着していることに気付いた。看護師は、すぐにA君の下着を脱がせ流水で便を洗い流した。 下着の処理の方法で正しいのはどれか。
解説:正解は 3 です。ノロウイルスはエンベロープを持たない非エンベロープウイルスでアルコール消毒に抵抗性があり、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒と熱水処理(85℃90秒以上)が有効です。汚染された下着を病室外に持ち出すと途中でウイルスを拡散する危険があるため、病室内で次亜塩素酸ナトリウム溶液(200〜1000ppm)に浸してから密閉搬送します。
選択肢考察
-
× 1. 病室内のゴミ箱に捨てる。
消毒せずそのまま廃棄するとゴミ箱内で乾燥し空気中にウイルスが舞って感染拡大の原因になります。感染性廃棄物の手順に則らない処理は不適切です。
-
× 2. 病室内でエタノールに浸す。
ノロウイルスはエンベロープを持たないためアルコール(エタノール)は効果が乏しいです。近年アルコール製剤に酸性条件を加えた製品もありますが、基本は次亜塩素酸ナトリウムを用います。
-
○ 3. 病室内で次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸す。
次亜塩素酸ナトリウム(ふん便・吐物付着物には1000ppm、環境表面には200ppm)はノロウイルスに有効で、汚染源を病室内で不活化してから搬送することで拡散を防げます。
-
× 4. 病室外の汚物処理室の感染性廃棄物用の容器に捨てる。
汚染物をそのまま病室外に搬送すると経路上でウイルスを拡散する危険があります。病室内で消毒・密閉処理してから搬送するのが原則です。
ノロウイルスの消毒:(1)ふん便・吐物の付着物には次亜塩素酸ナトリウム1000ppm(0.1%)、(2)環境清拭には200ppm(0.02%)、(3)熱処理は85〜90℃で90秒以上が基本です。市販の家庭用塩素系漂白剤(約5%)を水で50倍に薄めると約1000ppm、250倍で200ppmになります。エタノールは無効なため、流行期の手指衛生は石けんと流水による物理的除去が推奨されます。感染性廃棄物の取り扱いは、病室内で二重のビニール袋に密閉してから汚物処理室へ搬送します。吐物処理時は使い捨て手袋・マスク・ガウン・ゴーグル着用、処理後は十分な換気と手洗いが必須です。
ノロウイルスの消毒薬の選択と感染性リネン・廃棄物の処理手順を理解しているかを問うています。
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