尿道下裂の術前期―予防接種スケジュールがカギ
看護師国家試験 第106回 午前 第100問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
A君(2か月、男児)は、1か月児健康診査で尿道下裂( hypospadias )の疑いを指摘され、小児科を受診した。検査の結果、遠位型尿道下裂( distal hypospadias )と診断された。 主治医から母親に対し、体重の増加を待ち1歳前後で尿道形成術を行う必要性について説明があった。母親から看護師に対し「手術を受けるまでの間、どう過ごしたらよいですか」と質問があった。看護師の説明で適切なのはどれか。
- 1.「尿量を計測してください」
- 2.「手術まで外来の受診はありません」
- 3.「予防接種の時期は主治医と相談してください」
- 4.「オムツを交換するたびに尿道口を消毒してください」
対話形式の解説
博士
今回は生後2か月の男児A君じゃ。遠位型尿道下裂と診断され、1歳前後で手術予定。母親は「手術まで何に気をつければ?」と質問してきた。
アユム
尿道下裂ってどんな病気ですか?
博士
胎生期に尿道が完成しきらず、尿道口が陰茎の腹側にずれて開く先天奇形じゃ。男児のおよそ250〜300人に1人と比較的多い。
アユム
へえ、そんなに多いんですね。
博士
特徴は①陰茎腹側に尿道口、②陰茎の腹側への弯曲(chordee)、③包皮が背側にだけある、という3つ。
アユム
遠位型というのは軽いほうですか?
博士
うむ、亀頭型や冠状溝型は遠位型に分類され、比較的軽症。陰嚢型や会陰型のような近位型は重症で、手術も複雑になる。
アユム
手術は1歳前後なんですね。
博士
そう、体重増加や陰茎の発達を待つ。一般に6〜18か月の間に行うことが多い。
アユム
母親への指導で1の尿量計測は?
博士
尿道下裂は「口の位置」の問題で、尿の量や腎機能には影響しない。自宅で尿量測定は不要じゃ。
アユム
2の受診不要は?
博士
明らかに誤り。乳児健診、手術時期決定の評価、成長発達のフォローが必要じゃ。
アユム
4の尿道口を毎回消毒は?
博士
これもダメ。消毒液は皮膚粘膜を傷つけるし、日常的には不要。普通のおむつ交換と清潔保持でよい。
アユム
残るは3の予防接種相談ですね。
博士
その通り、これが正解。乳児期は定期接種が目白押しじゃぞ。
アユム
どんな接種がありますか?
博士
Hib、肺炎球菌、B型肝炎、ロタ、四種混合(DPT-IPV)、BCG、MR、水痘、日本脳炎…生後2か月から始まり、1歳前後で特に多い。
アユム
手術時期と接種時期が重なっちゃいますね。
博士
そこが問題。全身麻酔下の手術前後は感染リスク・免疫反応・発熱などの影響を避けるため、接種と手術を2〜4週離すのが一般的じゃ。
アユム
だからスケジュール調整が必要なんですね。
博士
うむ、しかも種類ごとに間隔のルールもあるから、自己判断では難しい。だから「主治医と相談」が正解となる。
アユム
術後の合併症は何がありますか?
博士
尿道皮膚瘻、尿道狭窄、尿道憩室など。再手術を要することもある。
アユム
母親への心のケアも大事ですね。
博士
その通り。先天奇形の告知に不安を抱く親は多い。正確な情報提供と共感的サポートが看護師の役割じゃよ。
POINT
尿道下裂は男児の比較的頻度の高い先天奇形で、遠位型の多くは1歳前後に尿道形成術を行う。術前期の日常生活では特別な消毒や尿量測定は不要で、通常の育児と清潔保持で差し支えない。しかし乳児期は定期予防接種が密集しており、手術前後は感染や免疫反応の観点から接種と手術を2〜4週離す必要があるため、接種スケジュールは主治医と相談して組むことが重要となる。看護師は親の不安に寄り添い、外来受診の継続、予防接種の調整、術前術後の説明を通して家族を支援する。先天奇形の看護では、疾患理解と育児支援を統合して家族全体のQOLを高める視点が求められる。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:A君(2か月、男児)は、1か月児健康診査で尿道下裂( hypospadias )の疑いを指摘され、小児科を受診した。検査の結果、遠位型尿道下裂( distal hypospadias )と診断された。 主治医から母親に対し、体重の増加を待ち1歳前後で尿道形成術を行う必要性について説明があった。母親から看護師に対し「手術を受けるまでの間、どう過ごしたらよいですか」と質問があった。看護師の説明で適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。尿道下裂は胎生期の尿道形成異常により尿道口が陰茎腹側にずれて開口する先天奇形で、約300人に1人の男児に発生するとされる。遠位型(亀頭型・冠状溝型)は比較的軽症で、通常は6か月〜18か月、多くは1歳前後に尿道形成術を行う。手術前後の一定期間は予防接種を延期する必要が生じる場合があるため、接種スケジュールは主治医と相談して調整することが重要。これが母親への指導として最も適切である。
選択肢考察
-
× 1. 「尿量を計測してください」
尿道下裂は尿道開口部の位置異常であり、尿の排出量(腎機能)には影響しない。在宅で尿量測定を日常的に行う必要はない。
-
× 2. 「手術まで外来の受診はありません」
手術までの間も、乳児健診、手術時期決定のための評価、成長発達の確認のため定期的な外来受診が必要。受診は不要とする指導は誤り。
-
○ 3. 「予防接種の時期は主治医と相談してください」
乳児期はヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、ロタ、四種混合、BCG、MR、水痘、日本脳炎などの定期接種が集中する時期。手術前後には感染リスクや免疫応答の観点から接種を延期・調整することがあり、主治医と相談しながらスケジュールを組むことが大切。
-
× 4. 「オムツを交換するたびに尿道口を消毒してください」
尿道口の日常的な消毒は不要であり、かえって皮膚・粘膜を傷つける恐れがある。通常のおむつ交換と清潔保持で十分。
尿道下裂は約1/250〜1/300の男児に発生する比較的頻度の高い先天奇形。分類は尿道口の位置により亀頭型、冠状溝型(以上が遠位型)、陰茎型、陰茎陰嚢型、陰嚢型、会陰型に分けられる。症状は①異常な陰茎腹側への尿道開口、②陰茎の腹側弯曲(chordee)、③包皮の腹側欠損と背側過剰。手術は1歳前後で尿道形成術を行い、陰茎を真っ直ぐにし尿道を亀頭先端まで延長する。術後合併症には尿道皮膚瘻、尿道狭窄、尿道憩室などがある。乳児期は予防接種スケジュールが過密なため、手術前後2〜4週は接種を避けるよう計画する必要がある。
乳児の手術予定患者における予防接種スケジュール調整の重要性を問う問題。尿道下裂の日常管理に特別なケアは不要で、外科手術を控えた乳児管理としての視点がポイント。
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