脳性麻痺児の指導優先度 全身緊張を見逃さない
看護師国家試験 第106回 午前 第103問 / 小児看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
A君(2歳6か月、男児)。両親との3人暮らし。脳性麻痺( cerebral palsy )と診断され、自力で座位の保持と歩行はできず専用の車椅子を使用している。話しかけると相手の目を見て笑顔を見せ、喃語を話す。食事はきざみ食でスプーンを使うことができるが、こぼすことが多く介助が必要である。排泄、清潔および更衣は全介助が必要である。 定期受診のため外来を受診した。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数32/分、心拍数120/分、血圧108/48mmHgであった。両上肢と手関節は屈曲、両下肢は交差伸展し、背を反らしており、全身が緊張している。母親は看護師に「Aは、便は出ない日がありますが大体毎日出ています。時々夜遅くまで眠らない日がありますが日中は機嫌良くしています」と話した。 母親に指導すべき内容で優先度が高いのはどれか。
- 1.感染予防
- 2.筋緊張の緩和
- 3.排便コントロール
- 4.呼吸機能の悪化予防
- 5.睡眠パターンのコントロール
対話形式の解説
博士
今日は2歳6か月の脳性麻痺児A君じゃ。たくさんの問題点があるなかで、どれを最優先にするかを問う問題じゃよ。
サクラ
情報量が多くて混乱します…。何に注目すればいいですか?
博士
まず「所見の重み付け」じゃ。記述で最も具体的なのは「両上肢と手関節は屈曲、両下肢は交差伸展し、背を反らし、全身が緊張している」という部分じゃな。
サクラ
これって痙直型脳性麻痺の特徴ですか?
博士
まさにその通り。痙直型は脳性麻痺全体の70〜80%を占め、筋緊張亢進が持続する。放置すると関節拘縮、股関節脱臼、脊柱側弯、胸郭変形など二次障害が次々と起こるのじゃ。
サクラ
だから「筋緊張の緩和」が優先なんですね。具体的に家族は何をすればいいんですか?
博士
リラックスできる抱き方、体位変換、温罨法、ストレッチ、補装具の使用などじゃ。理学療法士と連携し、日常生活の中で取り入れられる方法を教えるのがポイントじゃな。
サクラ
他の選択肢も気になります。体温37.5℃は感染を疑わなくていいんですか?
博士
脳性麻痺児は体温調節が不安定なことも多く、37.5℃単独では感染と断定できん。咳嗽や咽頭発赤など具体的な感染徴候の記載もないから、最優先ではない。
サクラ
排便は?便が出ない日があるって書いてありました。
博士
しかし母親は「大体毎日出ている」と述べておる。便秘のコントロールが破綻しているわけではないから、現時点で最優先にはならん。
サクラ
呼吸数32/分はやや多くないですか?
博士
2歳児の正常呼吸数は20〜30/分程度で32/分はほぼ上限。努力呼吸やチアノーゼの記載もない。むしろ筋緊張が強いと胸郭運動が制限されるから、長期的には呼吸に影響するがな。
サクラ
睡眠パターンは?
博士
時々夜更かしする程度で、日中は機嫌が良い。母親の主観的訴えも強くないから優先度は低い。
サクラ
脳性麻痺の分類って他に何がありますか?
博士
痙直型のほかにアテトーゼ型、失調型、混合型がある。アテトーゼ型は不随意運動、失調型は運動失調が特徴じゃ。病型により看護のアプローチも変わるのじゃよ。
サクラ
筋緊張を緩和する治療にはどんなものがありますか?
博士
内服では筋弛緩薬、局所ではボツリヌス毒素注射、重症例では髄腔内バクロフェン療法や整形外科手術じゃ。看護師はこれらの治療と並行して日常のケア方法を家族に教える役割がある。
サクラ
優先度を考えるって、「今の主訴」と「将来の二次障害リスク」の両方を見るんですね。
博士
その通り。今ある問題と、放置したときに悪化する問題の両方を天秤にかける。脳性麻痺では二次障害予防が長期のQOLを左右するから、筋緊張への介入が最優先となるのじゃ。
POINT
脳性麻痺児A君には複数の健康課題がありますが、記述から最も顕著な所見は全身の筋緊張亢進であり、痙直型脳性麻痺の典型像です。筋緊張が持続すると関節拘縮、股関節脱臼、脊柱側弯、摂食嚥下障害、呼吸機能低下など重篤な二次障害を招くため、家族への緊張緩和指導(抱き方・体位変換・ストレッチ・補装具)が最優先となります。他の選択肢(感染・排便・呼吸・睡眠)は現時点で顕著な逸脱がなく、優先度は下がります。脳性麻痺看護の核心は「二次障害の予防を通じて生活の質を守ること」であり、家族が日常生活の中で実践できる具体策を伝えることが看護師の役割です。優先度判断は情報の重み付けと将来予測を組み合わせる臨床思考そのものといえます。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:A君(2歳6か月、男児)。両親との3人暮らし。脳性麻痺( cerebral palsy )と診断され、自力で座位の保持と歩行はできず専用の車椅子を使用している。話しかけると相手の目を見て笑顔を見せ、喃語を話す。食事はきざみ食でスプーンを使うことができるが、こぼすことが多く介助が必要である。排泄、清潔および更衣は全介助が必要である。 定期受診のため外来を受診した。バイタルサインは、体温37.5℃、呼吸数32/分、心拍数120/分、血圧108/48mmHgであった。両上肢と手関節は屈曲、両下肢は交差伸展し、背を反らしており、全身が緊張している。母親は看護師に「Aは、便は出ない日がありますが大体毎日出ています。時々夜遅くまで眠らない日がありますが日中は機嫌良くしています」と話した。 母親に指導すべき内容で優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 2 です。問題文にある「両上肢と手関節は屈曲、両下肢は交差伸展し、背を反らしており、全身が緊張している」は、痙直型脳性麻痺でよくみられる筋緊張亢進の所見である。持続する筋緊張は、関節拘縮・股関節脱臼・脊柱側弯・疼痛・摂食嚥下障害・呼吸機能低下など多方面の二次障害を招き、日常のQOLに直結する。そのためリラクセーションポジションの取り方、ストレッチ、抱き方の工夫、補装具の活用など、筋緊張を緩和する具体的な方法を母親に指導することが最優先となる。
選択肢考察
-
× 1. 感染予防
体温37.5℃はやや高めだが現時点で感染徴候は具体的に示されておらず、全身の緊張の所見に比べて優先度は低い。
-
○ 2. 筋緊張の緩和
上下肢屈曲・交差伸展・反弓姿勢は筋緊張亢進の典型所見。関節拘縮や側弯などの二次障害予防のため緩和方法の指導が最優先。
-
× 3. 排便コントロール
「大体毎日出ている」と母親が述べており、現時点で排便は大きな問題となっていない。
-
× 4. 呼吸機能の悪化予防
2歳児の呼吸数基準は20〜30回/分程度で、32回/分はほぼ正常上限。チアノーゼ・努力呼吸の記載もなく現時点で呼吸機能を最優先する状況ではない。
-
× 5. 睡眠パターンのコントロール
時々夜更かしする程度で日中は機嫌が良く、睡眠パターンに大きな乱れはない。優先度は高くない。
脳性麻痺は受胎から新生児期までの脳の非進行性病変による運動・姿勢の障害で、痙直型が最多(70〜80%)を占める。痙直型では筋緊張亢進(痙性)と原始反射の残存が特徴で、放置すると関節拘縮、股関節脱臼、脊柱側弯、胸郭変形が進行する。リハビリテーションの基本はボバース法などによる姿勢・運動のコントロールで、家族には体位変換、リラックスできる抱き方、温罨法、ストレッチ、整形外科的補装具の使用、必要時の筋弛緩薬・ボツリヌス毒素注射・バクロフェン髄注・整形外科手術などの知識を段階的に伝える。二次障害予防が長期QOLの鍵となる。
脳性麻痺児の多数ある問題のなかで「今、最も優先すべき指導」を判断する問題。所見のどこが最も顕著で、どの二次障害につながりやすいかを読み取る。
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