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脳性麻痺児の食事指導 きざみ食よりペースト食が飲み込みやすい理由

看護師国家試験 第106回 午前 第104問 / 小児看護学 / 状況設定問題

国試問題にチャレンジ

106回 午前 第104問

A君(2歳6か月、男児)。両親との3人暮らし。脳性麻痺( cerebral palsy )と診断され、自力で座位の保持と歩行はできず専用の車椅子を使用している。話しかけると相手の目を見て笑顔を見せ、喃語を話す。食事はきざみ食でスプーンを使うことができるが、こぼすことが多く介助が必要である。排泄、清潔および更衣は全介助が必要である。 A君の食事について看護師が母親に尋ねると「食べこぼしが多く、食べながらうとうとしてしまい時間がかかるし、十分な量も食べられていません」と話した。 A君の食事に関する母親への指導で最も適切なのはどれか。

  1. 1.「経腸栄養剤の開始について医師と相談しましょう」
  2. 2.「ホームヘルパーの依頼を検討しましょう」
  3. 3.「食事時間を20分以内にしましょう」
  4. 4.「ペースト食にしてみましょう」

対話形式の解説

博士 博士

今回はA君の食事指導じゃ。食べこぼしが多く、途中でうとうとして時間がかかり、量も食べられない…という訴えじゃな。

アユム アユム

え、きざみ食って食べやすいから選ばれているんじゃないんですか?

博士 博士

そこが大事なポイントじゃ。きざみ食は「噛めない人のための食事」と誤解されがちじゃが、実は口腔内で食塊を形成する能力がないと飲み込みにくい。

アユム アユム

どういうことですか?

博士 博士

きざんだ食材は口の中で散らばる。唾液と混ぜて一つの食塊にまとめる必要があるが、脳性麻痺児は舌の運動や咀嚼が苦手で、この「まとめる力」が弱い。

アユム アユム

なるほど…だから口からこぼれたり、飲み込めずに時間がかかるんですね。

博士 博士

その通り。ペースト状にすれば最初から食塊になっているから、口腔内でまとめる努力がいらん。飲み込みやすくなり、摂取量も増え、誤嚥リスクも下がるのじゃ。

アユム アユム

食形態のステップって決まっているんですか?

博士 博士

原則は「ペースト・ムース → ゼリー・ソフト食 → きざみ食 → 常食」と段階的に上げる。A君はきざみ食でつまずいているから一段戻すのが適切じゃ。

アユム アユム

他の選択肢はどうですか?経腸栄養剤を始めるのは早いですか?

博士 博士

経腸栄養剤は経口で十分摂れない場合の最終手段じゃ。まずは食形態の工夫で経口摂取を増やす努力が先。いきなり管理レベルを上げるのは適切でない。

アユム アユム

ホームヘルパーを頼むというのは?

博士 博士

介助者を変えても食べにくさの本質は変わらん。食事問題への直接的な解決策にはならんのじゃ。

アユム アユム

食事時間を20分以内にするっていう選択肢は、効率的でよさそうに見えました。

博士 博士

これは最も危険な選択肢じゃ。時間制限は介助者も本人も焦り、誤嚥のリスクが跳ね上がる。摂取量もむしろ減る。脳性麻痺児の食事では「ゆっくり・安全に」が鉄則じゃ。

アユム アユム

食事中にうとうとするのも気になります。

博士 博士

覚醒レベル低下や疲労のサインじゃ。疲れて食べられない可能性があるから、食事回数を増やして1回量を減らす、覚醒の良い時間帯に食べるなど、環境調整も重要じゃな。

アユム アユム

ポジショニングも大切ですよね?

博士 博士

その通り。頸部前屈、体幹を安定させる、足底を床や台につけるのが基本じゃ。頸部が反ると誤嚥しやすくなるから、反弓姿勢になりやすい脳性麻痺児は特に注意が必要じゃ。

アユム アユム

食事って栄養だけじゃなく、体勢、形態、時間帯…総合的に見る必要があるんですね。

博士 博士

うむ。さらに家族の介助技術、味や温度の工夫、食具の選択(スプーンの形状やカップの形)など多面的に支援するのが摂食嚥下リハの本質じゃ。

POINT

脳性麻痺児の食事問題では、きざみ食が必ずしも食べやすい形態ではないことを理解することが重要です。きざみ食は口腔内で食塊を形成する能力を必要とするため、舌運動や咀嚼が困難な脳性麻痺児にはむしろ難易度が高く、食べこぼし・食事時間延長・摂取量低下の原因となります。ペースト食にすることで食塊形成の負担が減り、誤嚥リスクの低下と摂取量増加が期待できます。食形態の調整は摂食嚥下支援の基本であり、ポジショニング・食事時間帯・食具選択と合わせて総合的に介入することが看護師の役割です。経口摂取を守る工夫を尽くしたうえで、それでも不足するならば経腸栄養を検討するという段階的思考が臨床の原則です。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:A君(2歳6か月、男児)。両親との3人暮らし。脳性麻痺( cerebral palsy )と診断され、自力で座位の保持と歩行はできず専用の車椅子を使用している。話しかけると相手の目を見て笑顔を見せ、喃語を話す。食事はきざみ食でスプーンを使うことができるが、こぼすことが多く介助が必要である。排泄、清潔および更衣は全介助が必要である。 A君の食事について看護師が母親に尋ねると「食べこぼしが多く、食べながらうとうとしてしまい時間がかかるし、十分な量も食べられていません」と話した。 A君の食事に関する母親への指導で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。脳性麻痺児では口腔機能の発達遅延、舌の突出、咀嚼・嚥下のタイミング障害などにより、きざみ食はかえって飲み込みにくく口腔内で散らばりやすい。ペースト状にすることで口腔内でのまとまりが良くなり、食塊形成の努力が少なくて済むため、食べこぼしの減少・食事時間の短縮・摂取量の増加・誤嚥リスクの低下が期待できる。食事形態の見直しは、脳性麻痺児の摂食支援で最も基本かつ効果的な介入である。

選択肢考察

  1. × 1.  「経腸栄養剤の開始について医師と相談しましょう」

    経腸栄養剤は経口摂取が困難または著しく不足した場合の選択肢。まずは食事形態の工夫で経口摂取量を増やす試みが優先される。

  2. × 2.  「ホームヘルパーの依頼を検討しましょう」

    介助者を変えても摂取量の本質的な問題(食べにくさ)は解決しない。食事問題への直接的介入ではない。

  3. × 3.  「食事時間を20分以内にしましょう」

    時間制限は焦りを生み誤嚥リスクを高め、摂取量もむしろ減る。A君には無理な負荷となる。

  4. 4.  「ペースト食にしてみましょう」

    きざみ食は口腔内で散らばりやすく、脳性麻痺児には適さない場合が多い。ペースト状にすることで食塊形成が容易になり、食べこぼし減少・摂取量増加が期待できる。

脳性麻痺児の摂食嚥下障害は、口唇閉鎖不全・舌運動制限・咀嚼力低下・嚥下反射遅延などが複合する。食形態は「ペースト・ムース → ゼリー・ソフト食 → きざみ食 → 常食」とステップアップするのが原則で、きざみ食は唾液と混ざらないと飲み込みにくいためむしろ難易度が高い場合がある。ポジショニングも重要で、頸部前屈・体幹安定・足底接地を意識する。うとうとしてしまうのは疲労や覚醒レベル低下を示唆し、無理強いは誤嚥を招くため、食事環境の見直し(時間帯・回数・姿勢)も含めて総合的に支援する。

脳性麻痺児の食事摂取量低下に対する看護指導を問う問題。食形態のアップダウンの原則と、きざみ食が必ずしも易しい形態ではないという臨床知識がカギ。