幻聴と自傷リスク、精神科セルフケアは『安全』が最優先
看護師国家試験 第112回 午後 第84問 / 精神看護学 / 精神疾患・障害がある者への看護
国試問題にチャレンジ
Aさん(25歳、女性)は統合失調症(schizophrenia)と診断され、入院2か月が経過した。食事や水分の摂取、トイレ歩行は1人でできる。歯磨き、入浴への関心はあまりない。幻聴が聞こえると突然走り出し、壁に頭をぶつけている。日中はホールで過ごし、自分から他の患者と交流はしない。 Aさんのセルフケアのアセスメントで優先度が高いのはどれか。
- 1.排泄
- 2.個人衛生
- 3.安全を保つ能力
- 4.活動と休息のバランス
- 5.孤独と付き合いのバランス
対話形式の解説
博士
今日は精神科のセルフケアアセスメントじゃ。Aさんは統合失調症で、幻聴が聞こえると走り出して壁に頭をぶつける。どの領域を最優先で見る?
アユム
うーん、入浴や歯磨きへの関心が薄いから個人衛生でしょうか?
博士
気持ちはわかる。でも患者の命が脅かされる行動があるときは、まず『安全を保つ能力』の評価が最優先なのじゃ。
アユム
たしかに、頭をぶつけたら外傷で大変なことになりますね。
博士
その通り。オレム=アンダーウッドのセルフケア理論では6つの領域があり、生命維持に直結するものから順に優先するのが原則じゃ。
アユム
6領域って何でしたっけ?
博士
空気・水・食物、排泄、個人衛生、活動と休息、孤独と付き合い、そして安全を保つ能力じゃ。マズローの欲求階層と重ねてみると理解しやすいぞ。
アユム
自傷行為があるときの具体的な看護ってどうするんですか?
博士
まず観察と見守りを強化し、居室環境から危険物を除去、家具の角を保護する。頻回の訪室で幻聴の内容を確認し、必要ならPRN薬の準備や医師への報告を行う。
アユム
行動制限が必要になることもあるんですね。
博士
隔離や身体拘束は最終手段じゃが、精神保健福祉法に基づき指定医の診察と指示のもと、要件を満たした場合に限り実施する。常に必要最小限とし、解除の基準を明確にしておくのじゃ。
アユム
幻聴そのものへのアプローチは薬物療法ですか?
博士
抗精神病薬、例えばリスペリドン、オランザピン、アリピプラゾールなどで陽性症状を抑える。同時に心理教育や認知行動療法も組み合わせる。
アユム
個人衛生や対人交流は後回しでいいんですか?
博士
後回しではない。安全が担保されたら段階的に介入する。陰性症状は生活の質に直結するから、長期的には欠かせない課題じゃ。
アユム
優先順位は『生命→機能→QOL』の順番で考えるといいんですね。
博士
その通り。マズローとオレムを組み合わせると、現場で迷ったときの判断軸になる。国試でも『優先度』を問う設問は多いから押さえておこう。
POINT
精神科のセルフケアアセスメントではオレム=アンダーウッドの6領域(空気・水・食物、排泄、個人衛生、活動と休息、孤独と付き合い、安全を保つ能力)が用いられ、生命維持に直結する領域から優先します。本事例では幻聴による突然の走行と頭部打撲という切迫した自傷行動があるため、まず『安全を保つ能力』を最優先にアセスメントし、環境整備、見守り強化、薬物療法、必要時の行動制限を含めた保護的介入を行います。個人衛生や対人交流は陰性症状として重要ですが、安全が確保されてから段階的に取り組む課題です。看護師は生命維持を最優先しつつ、患者の尊厳と自己決定を尊重したバランスあるケアを展開する必要があります。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん(25歳、女性)は統合失調症(schizophrenia)と診断され、入院2か月が経過した。食事や水分の摂取、トイレ歩行は1人でできる。歯磨き、入浴への関心はあまりない。幻聴が聞こえると突然走り出し、壁に頭をぶつけている。日中はホールで過ごし、自分から他の患者と交流はしない。 Aさんのセルフケアのアセスメントで優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 3 です。Aさんは幻聴に伴って突然走り出し、壁に頭をぶつけるという明確な自傷行動を呈しており、頭部外傷や転倒骨折など生命に関わる損傷リスクが切迫しています。オレム=アンダーウッドのセルフケア理論の6領域のうち『安全を保つ能力』は、他の領域に優先する基盤であり、まずここをアセスメントし環境整備と保護的介入を行うことが最優先となります。
選択肢考察
-
× 1. 排泄
食事・水分摂取・トイレ歩行は自立しており、排泄面に即時介入を要する情報はない。
-
× 2. 個人衛生
歯磨きや入浴への関心低下は統合失調症の陰性症状として重要だが、安全が担保された後に取り組む課題。
-
○ 3. 安全を保つ能力
幻聴に伴う突然の走行と頭部打撲という切迫した自傷行動があり、身体損傷リスクが最も高い。まず安全確保のアセスメントと保護的介入が必要。
-
× 4. 活動と休息のバランス
日中ホールで過ごす様子から直ちに問題があるとは判断できず、優先度は下がる。
-
× 5. 孤独と付き合いのバランス
他患との交流のなさは陰性症状の現れで中長期の支援課題だが、生命維持より後。
精神科看護で広く使われるオレム=アンダーウッドのセルフケア理論では、6領域を『①空気・水・食物、②排泄、③個人衛生、④活動と休息、⑤孤独と付き合い、⑥安全を保つ能力』として捉え、生命維持に直結する領域から優先する。幻聴による命令や被影響体験が自傷他害に発展するリスクがあるときは、見守り強化、居室環境の安全化(角のない家具、衝突軽減)、PRN抗精神病薬の準備、必要に応じて行動制限(隔離・身体拘束)の検討を行う。抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾールなど)の調整により幻聴コントロールを図ることも重要。
精神科セルフケアアセスメントにおける優先順位(安全が最優先)を問う問題。自傷リスクのある行動への即時対応が鍵。
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