身体拘束の最大の敵!肺血栓塞栓症の発生メカニズムを学ぶ
看護師国家試験 第114回 午前 第70問 / 精神看護学 / 安全な治療環境と多職種連携
国試問題にチャレンジ
精神科病院入院患者の身体的拘束中に発生しやすい合併症はどれか。
- 1.糖尿病(diabetes mellitus)
- 2.足白癬(tinea pedis)
- 3.悪性症候群(malignant syndrome)
- 4.肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism)
対話形式の解説
博士
今回は精神科病棟での身体的拘束中に発生しやすい合併症の問題じゃ。
アユム
身体拘束って原則禁止と聞きますが…。
博士
そうじゃ。精神保健福祉法37条2項で「切迫性・非代替性・一時性」の三要件を満たす例外的場合のみ、精神保健指定医の指示で行える。
アユム
拘束には種類があるんですか?
博士
3種類じゃ。①身体的拘束(フィジカルロック)、②薬物による拘束(ドラッグロック)、③言葉による拘束(スピーチロック)。
アユム
今回はフィジカルロックの合併症ですね。
博士
うむ。長時間動けないとどうなる?
アユム
血流が悪くなって…血栓ができそうですね。
博士
その通り!下肢の深部静脈で血流うっ滞が起こり、深部静脈血栓症(DVT)が形成される。
アユム
それが肺に飛ぶと肺血栓塞栓症(PTE)ですね。
博士
そう。突然の呼吸困難・胸痛・低酸素血症・ショック・心停止を起こす致死的合併症じゃ。
アユム
いつ発症しやすいんですか?
博士
安静解除や排泄・入浴で体動した直後に多い。エコノミークラス症候群も同じ機序じゃな。
アユム
選択肢の他のものも確認したいです。糖尿病は?
博士
糖尿病は慢性疾患で身体拘束で急に発症するものではない。
アユム
足白癬は?
博士
白癬は真菌感染で、拘束自体が直接の原因ではない。
アユム
悪性症候群は精神科でよく聞きますが…。
博士
悪性症候群は抗精神病薬の副作用じゃ。薬物による拘束(ドラッグロック)と関連しうるが、身体的拘束の直接合併症ではない。混同しやすいから注意じゃ。
アユム
予防策はありますか?
博士
定期的な体位変換、関節可動域訓練、弾性ストッキング・フットポンプの使用、十分な水分補給、Dダイマー測定、そして最短期間での解除じゃ。
アユム
看護師は毎日拘束の必要性を評価する義務がありましたね。
博士
その通り。拘束は患者の尊厳を制限する重大な処置じゃから、毎日多職種で評価し、できるだけ早く解除を目指すのが原則じゃ。
アユム
倫理と医学の両面で看護師の責任が大きいですね。
POINT
身体的拘束中は四肢の不動により下肢深部静脈血栓症が形成され、それが肺動脈を閉塞することで致死的な肺血栓塞栓症を引き起こすため、本問の正解は選択肢4です。糖尿病・足白癬は身体拘束の直接合併症ではなく、悪性症候群は抗精神病薬の副作用すなわち薬物による拘束に関連する病態で混同に注意が必要です。身体拘束は精神保健福祉法に基づき「切迫性・非代替性・一時性」の三要件を満たす例外的措置であり、定期的な体位変換・関節可動域訓練・弾性ストッキング・水分補給など合併症予防が不可欠です。看護師は毎日拘束の必要性を評価し最短解除を目指すことで、患者の身体的安全と尊厳の双方を守る責務を担います。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:精神科病院入院患者の身体的拘束中に発生しやすい合併症はどれか。
解説:正解は 4 です。身体的拘束中は四肢の運動が制限されることで下肢深部静脈の血流うっ滞が起こり、深部静脈血栓症(DVT)が形成されやすくなります。形成された血栓が遊離して肺動脈を閉塞すると肺血栓塞栓症(PTE)となり、突然の呼吸困難・胸痛・低酸素血症・ショック・心停止を引き起こす重篤な合併症です。長時間の安静解除直後の体動時に発症しやすく、身体拘束に関連する代表的な致死的合併症として周知されています。
選択肢考察
-
× 1. 糖尿病(diabetes mellitus)
糖尿病は遺伝的素因と生活習慣を背景にした慢性疾患で、身体拘束自体が直接の発症要因にはならない。ただしステロイドや一部の抗精神病薬による二次性の耐糖能異常はあり、これは別問題。
-
× 2. 足白癬(tinea pedis)
足白癬は皮膚糸状菌による真菌感染症で、感染経路と環境要因が原因。身体拘束で発症リスクが高まるとは言えない。
-
× 3. 悪性症候群(malignant syndrome)
悪性症候群は抗精神病薬の副作用で、高熱・筋強剛・意識障害・自律神経症状を呈する重篤な状態。薬物による拘束(ドラッグロック)に伴い得るが、身体的拘束(フィジカルロック)の直接合併症ではない。
-
○ 4. 肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism)
身体拘束で長時間下肢を動かせないことから深部静脈血栓症が形成され、それが肺動脈を閉塞することで肺血栓塞栓症が発生する。身体拘束に伴う代表的かつ致死的な合併症。
精神保健福祉法第37条第2項に基づく身体拘束は「切迫性・非代替性・一時性」の三要件を満たす場合のみ、精神保健指定医の指示で実施できる例外的措置である。拘束中の合併症予防として、定期的な体位変換、四肢の関節可動域訓練、弾性ストッキング・間欠的空気圧迫装置(フットポンプ)の使用、十分な水分補給、Dダイマーなどの凝固系評価、最短期間での解除が必要である。拘束には身体的拘束(フィジカルロック)、薬物による拘束(ドラッグロック)、言葉による拘束(スピーチロック)の3種があり、それぞれの倫理的問題と合併症の違いを整理しておくと国試対策に有効。
身体的拘束に伴う合併症を問う問題。長時間の不動による深部静脈血栓症からの肺血栓塞栓症が代表的な致死的合併症であることを押さえる。悪性症候群は薬物による拘束との混同に注意。
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