双極性障害の退院指導、家族に伝えるべきこと
看護師国家試験 第105回 午後 第109問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(23歳、女性)は、未婚で両親と3人で暮らしている。専門学校卒業後に就職し、仕事も順調であった。4か月前、仕事のミスがあったことをきっかけに気分が落ち込み、食欲のない状態が1か月ほど続いたが、通勤は続けていた。Aさんは2か月前から不眠を訴えるようになり、先月からは給料の全額を宝くじの購入に費やしてしまう行為がみられるようになった。Aさんは、心配した両親に付き添われて精神科病院を受診した。 入院して2か月が経過し、Aさんは服薬による治療で多弁や易怒性などの症状が改善し、落ち着いて過ごせるようになった。Aさんは治療を継続する必要性についても理解している。看護師がAさんと家族への退院指導を行うことになった。 退院指導における説明で最も適切なのはどれか。
- 1.「薬の管理は家族が行ってください」
- 2.「今後も定期的な入院が必要になります」
- 3.「Aさんの言動の変化に気を付けましょう」
- 4.「服薬していれば再発することはありません」
対話形式の解説
博士
博士じゃ。入院2か月で症状が改善し、Aさんは治療継続の必要性を理解しておる。退院指導で最も適切なのはどれか、という問題じゃ。
サクラ
症状は安定しても、双極性障害は再発率の高い疾患ですよね。
博士
その通り。2年以内の再発率は約40〜50%、生涯再発率は90%以上とも言われる。だから退院はゴールではなく、再発予防のスタートなんじゃ。
サクラ
再発予防の柱を整理したいです。
博士
服薬継続、睡眠覚醒リズムの安定、ストレスマネジメント、家族心理教育、定期受診の5つじゃ。このうち家族が関わるのは主に2番目と4番目、特に前兆の早期発見じゃの。
サクラ
選択肢を見ていきます。1の「薬の管理は家族が行ってください」はどうですか?
博士
一見安全そうじゃが不適切じゃ。Aさんは治療の必要性を理解し自己管理できる段階にある。家族管理を押し付けるとセルフケア能力が育たず、依存的になる。本人の自立を支える方向が基本じゃ。
サクラ
もちろん自己管理が困難な状況なら家族の介入も必要ですよね。
博士
そうじゃ。アセスメントに基づき個別化する。Aさんは病識があるから本人主体でよい。
サクラ
2の「今後も定期的な入院が必要」は?
博士
これは誤り。双極性障害は外来通院と服薬で多くは安定維持できる。定期入院は必要なく、むしろ入院ありきの指導は本人の地域生活への希望を奪う。
サクラ
3の「Aさんの言動の変化に気を付けましょう」が正解ですね。
博士
うむ。再発の前兆、いわゆるプロドロマル症状には、睡眠時間の短縮、口数の増加、買い物や活動量の増加、気分の高揚、易怒性などがある。本人は調子が良いと感じて気づきにくいから、家族の気づきが重要なんじゃ。
サクラ
ライフチャート法というものがあるそうですね。
博士
毎日の睡眠時間、気分、活動量、服薬状況を記録するツールじゃ。本人と家族が共有することで変化のパターンが可視化され、再発の予測に役立つ。
サクラ
4の「服薬していれば再発することはありません」は?
博士
誤った情報じゃ。服薬は再発リスクを大きく下げるが、ゼロにはできん。誤った安心感は前兆見逃しや受診遅延を招く。正確な情報を渡すのが医療者の務めじゃ。
サクラ
家族への心理教育では他にどんな内容を伝えますか?
博士
疾患の基礎知識、薬の作用・副作用、躁とうつの症状、前兆サイン、対応の基本、緊急時の受診先、家族自身のセルフケア、社会資源の情報などじゃ。家族もまた支えられる対象だと理解することが大切じゃ。
サクラ
気分安定薬の副作用で家族に知っておいてほしいものは?
博士
リチウムなら手指振戦、多尿、口渇、甲状腺機能低下、リチウム中毒(嘔吐・意識障害)。バルプロ酸なら肝機能障害、血小板減少。定期的な採血と、シックデイや脱水時の中毒リスクを伝えておくとよい。
サクラ
本人と家族が協力して、変化に早く気づける体制を作ることが再発予防の核ですね。
博士
その通り。双極性障害は家族病ともいわれるほど家族の協力が回復・予防の鍵となる。焦らず、責めず、気づき、支える、じゃ。
POINT
双極性障害は再発率が高く、退院指導では家族がAさんの言動の変化に早期に気づくことが再発予防の中核となります。本人の自己管理を尊重し、定期入院を前提としない地域生活支援が基本で、服薬しても再発しうるという正確な情報提供が重要です。家族心理教育とライフチャート法を活用し、本人と家族が協働する再発予防体制を築きます。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(23歳、女性)は、未婚で両親と3人で暮らしている。専門学校卒業後に就職し、仕事も順調であった。4か月前、仕事のミスがあったことをきっかけに気分が落ち込み、食欲のない状態が1か月ほど続いたが、通勤は続けていた。Aさんは2か月前から不眠を訴えるようになり、先月からは給料の全額を宝くじの購入に費やしてしまう行為がみられるようになった。Aさんは、心配した両親に付き添われて精神科病院を受診した。 入院して2か月が経過し、Aさんは服薬による治療で多弁や易怒性などの症状が改善し、落ち着いて過ごせるようになった。Aさんは治療を継続する必要性についても理解している。看護師がAさんと家族への退院指導を行うことになった。 退院指導における説明で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。双極性障害は再発率の高い慢性疾患で、生涯再発率は90%以上とも報告されています。再発の初期には睡眠時間の減少、話し方の変化、浪費傾向、高揚感など本人も気づきにくい前兆があり、周囲の家族が「いつもと違う言動」に早く気づくことで、早期受診・服薬調整につなげられます。退院指導では家族に対しAさんの言動変化への気づきを促すことが最も重要です。
選択肢考察
-
× 1. 「薬の管理は家族が行ってください」
Aさんは治療の必要性を理解し服薬も継続できているため、本人の自己管理を支援する方向が望ましく、家族管理を一律に指示する必要はありません。自己管理は治療参加意識とセルフケア能力の維持にもつながります。
-
× 2. 「今後も定期的な入院が必要になります」
双極性障害は外来通院と服薬継続で多くは安定を維持できる疾患で、定期的な入院を前提とする指導は不正確です。再発時や状態悪化時に限り必要に応じて入院を検討します。
-
○ 3. 「Aさんの言動の変化に気を付けましょう」
睡眠減少、多弁化、浪費傾向、高揚、易怒性などの再発前兆に家族が早期に気づくことで、迅速な受診・早期介入が可能となり、重症化を防げます。家族心理教育の核となる内容です。
-
× 4. 「服薬していれば再発することはありません」
服薬は再発リスクを大幅に下げますが再発をゼロにはできず、誤った安心感を与えると前兆見逃しや受診遅延を招きます。正確な情報提供が退院指導の原則です。
双極性障害の再発予防には服薬継続、睡眠覚醒リズムの安定、ストレスマネジメント、家族心理教育、定期受診が四本柱となります。リチウムやバルプロ酸などの気分安定薬は血中濃度モニタリングと定期的な血液検査(腎・甲状腺機能、肝機能)が必要で、自己中断は再発リスクを数倍に高めます。再発の前兆(プロドロマル症状)に気づくため、本人と家族で睡眠時間・気分・活動量の記録をつけるライフチャート法も有用です。
双極性障害の退院指導において、本人の自己管理を尊重しつつ、家族による言動変化のモニタリングが再発予防の中核であることを理解しているかを問う設問です。
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