統合失調症医療保護入院、家族からの情報収集の優先度
看護師国家試験 第105回 午後 第110問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(19歳、男性、大学生)は、実家近くのアパートに1人で暮らしている。ある日、線路沿いの道を裸足で歩きながら険しい表情でカッターナイフを振り回し、ぶつぶつと独り言を言い続けていたことから警察に保護された。Aさんは、警察から連絡を受けた両親とともに精神科病院を受診したが「自分は命を狙われている」、「この人たちは自分の親じゃない」と言い、医療者に対しても拒否的な態度をとっている。診察の結果、Aさんは統合失調症(schizophrenia)と診断された。Aさんの頭髪は乱れ、食事や睡眠がとれていない様子であったため、そのまま医療保護入院をすることになった。 入院当日にAさんの両親から情報収集する内容として、優先度が高いのはどれか。
- 1.Aさんの大学の出席状況
- 2.両親がAさんと同居する可能性
- 3.Aさんの子ども時代の両親の育て方
- 4.Aさんの入院に対する両親の受け止め方
対話形式の解説
博士
博士じゃ。19歳のAさんはカッターナイフを振り回し警察保護、「命を狙われている」「この人は親じゃない」と訴え、統合失調症と診断されて医療保護入院となった。入院当日、両親から何を優先して聴くかじゃ。
アユム
本人が妄想状態で話せないので、家族からの情報がとても重要ですね。
博士
その通り。統合失調症の急性期は陽性症状が強く出て、本人からの情報収集が難しい。発症経過、生活状況、服薬歴、既往歴、身体状態、自傷他害の有無など、家族から聞くべき項目は多い。
アユム
ただ、入院当日に限って言えば、何を最優先にすべきかですね。
博士
じゃな。医療保護入院は精神保健福祉法33条に基づき、精神保健指定医の診察と家族等の同意で成立する。つまり家族の同意と協力が治療の前提じゃ。
アユム
選択肢を見ていきます。1の大学の出席状況はどうでしょう。
博士
発症の時期や生活機能低下の把握に役立つ情報じゃが、入院初日に緊急性があるわけではない。退院後の復学支援を考える時期に確認すればよい。
アユム
2の「両親が同居する可能性」は?
博士
退院後の生活環境調整に必要じゃが、これも退院計画を立てる段階の話で、入院当日の優先事項ではない。
アユム
3の「子ども時代の両親の育て方」は慎重さが要りますね。
博士
注意すべき項目じゃ。統合失調症は遺伝的素因と神経発達、ストレスが複合する多因子疾患で、育て方が発症原因ではない。こうした質問は家族に罪悪感を与え、今後の治療協力を阻害する恐れがある。
アユム
4の「入院に対する両親の受け止め方」が正解ですね。
博士
うむ。医療保護入院は家族等の同意に基づく制度じゃから、両親が入院をどう受け止めているか、何に不安を感じているか、これを知ることが治療同盟の第一歩じゃ。
アユム
家族は突然の精神科入院に動揺していることが多いですよね。
博士
まさに。息子や娘の変貌を目の当たりにして、家族は驚き、悲しみ、恐れ、時に自責感を抱える。家族自身が支えられる対象であることを忘れてはならん。
アユム
入院当日の家族支援で気を付けることは?
博士
まず傾聴じゃ。事実確認だけでなく家族の感情を受け止める。そして医療保護入院の法的位置づけ、治療方針、面会や連絡の方法を丁寧に説明する。疾患理解は段階を踏んで少しずつじゃ。
アユム
統合失調症の急性期看護ではどんなことに注意しますか?
博士
安全確保が最優先。自傷他害リスクを評価し、刺激の少ない環境を整える。妄想の内容を否定も肯定もせず、本人の苦痛に共感する姿勢で接する。服薬、食事、睡眠、清潔の基本的ケアを丁寧に行うのじゃ。
アユム
薬物療法の基本は?
博士
抗精神病薬、特に非定型薬であるリスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、ブロナンセリンなどが第一選択じゃ。副作用として錐体外路症状、体重増加、糖代謝異常、高プロラクチン血症などをモニタリングする。
アユム
家族心理教育はいつから始めますか?
博士
家族の受容度を見ながら段階的にじゃ。最初は情報提供より感情の受容、次に疾患の正しい知識、そして再発予防・コミュニケーションのコツへと進む。家族もまた回復を共に歩む存在じゃ。
アユム
入院当日は「受け止め方」を中心に、家族を支える姿勢で関わるのですね。
博士
その通り。情報収集は双方向の対話の中で自然に進む。最初の接点が家族との信頼関係を決めるのじゃ。
POINT
統合失調症の医療保護入院初日において、両親の入院への受け止め方を把握することは治療同意の基盤かつ家族支援の出発点として最優先されます。育て方を問う質問は家族の自責感を助長し発症原因に関する誤解を与えるため避け、出席状況や退院後の同居可能性は治療が進んだ段階で確認します。家族を支援対象と捉え、傾聴と段階的な心理教育を通じて治療協力体制を築くことが精神看護の基本です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(19歳、男性、大学生)は、実家近くのアパートに1人で暮らしている。ある日、線路沿いの道を裸足で歩きながら険しい表情でカッターナイフを振り回し、ぶつぶつと独り言を言い続けていたことから警察に保護された。Aさんは、警察から連絡を受けた両親とともに精神科病院を受診したが「自分は命を狙われている」、「この人たちは自分の親じゃない」と言い、医療者に対しても拒否的な態度をとっている。診察の結果、Aさんは統合失調症(schizophrenia)と診断された。Aさんの頭髪は乱れ、食事や睡眠がとれていない様子であったため、そのまま医療保護入院をすることになった。 入院当日にAさんの両親から情報収集する内容として、優先度が高いのはどれか。
解説:正解は 4 です。Aさんは重度の妄想と拒否的態度で本人からの情報収集が困難であり、医療保護入院には家族等の同意が必要です。両親が入院や治療をどのように受け止めているかを把握することは、治療への協力度を判断し、Aさんと家族双方への支援計画を立てる上で最優先の情報となります。家族の受容状況は治療継続性にも直結する入院初期の核心的アセスメント項目です。
選択肢考察
-
× 1. Aさんの大学の出席状況
発症時期や生活機能の把握に役立つ情報ですが、入院当日の緊急性の高い情報ではなく、退院後の復学支援を検討する時期に確認すればよい内容です。
-
× 2. 両親がAさんと同居する可能性
退院後の生活環境調整に必要となる情報ですが、入院当日よりも治療が進み退院計画を具体化する段階で検討すべき項目です。
-
× 3. Aさんの子ども時代の両親の育て方
統合失調症は遺伝的素因とストレスが複合した多因子疾患で、育て方が原因ではありません。家族に罪悪感を抱かせる質問になりやすく、入院当日には適切ではありません。
-
○ 4. Aさんの入院に対する両親の受け止め方
医療保護入院は家族等の同意が必要で、両親の理解と受容度は治療同意の基盤となります。家族の不安や疑問を把握することは、その後の家族支援・病状説明・治療協力の出発点です。
医療保護入院は精神保健福祉法第33条に基づき、精神保健指定医の診察と家族等の同意により成立します。統合失調症の急性期は本人から情報を得ることが困難なため、家族からの情報(発症経過、生活状況、服薬歴、身体疾患、既往、自傷他害の有無、受容度)が診断・看護計画の要となります。家族は自責感や混乱、疲弊を抱えていることが多く、情報収集と同時に心理的支援(傾聴、疾患教育、社会資源紹介)を開始するのが望ましいとされます。
医療保護入院初日の家族からの情報収集において、治療同意と協力体制の基盤となる「入院への受け止め方」が最優先であることを判断できるかを問う設問です。
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