統合失調症退院後の社会復帰支援
看護師国家試験 第105回 午後 第112問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(19歳、男性、大学生)は、実家近くのアパートに1人で暮らしている。ある日、線路沿いの道を裸足で歩きながら険しい表情でカッターナイフを振り回し、ぶつぶつと独り言を言い続けていたことから警察に保護された。Aさんは、警察から連絡を受けた両親とともに精神科病院を受診したが「自分は命を狙われている」、「この人たちは自分の親じゃない」と言い、医療者に対しても拒否的な態度をとっている。診察の結果、Aさんは統合失調症(schizophrenia)と診断された。Aさんの頭髪は乱れ、食事や睡眠がとれていない様子であったため、そのまま医療保護入院をすることになった。 入院後2か月が経過し、主治医からは退院の話も出始めた。Aさんは入院をきっかけに大学を休学している。Aさんの両親が「Aは学業の遅れを心配して、退院後すぐに復学したいと言っています。Aはすぐに復学できるのでしょうか」と相談してきた。 看護師の説明として適切なのはどれか。
- 1.「復学の時期を大学に判断してもらいましょう」
- 2.「復学できる状態になるまで退院を延期しましょう」
- 3.「ご両親からAさんに焦らないよう説得してください」
- 4.「まずは家庭での日常生活に慣れることから始めましょう」
対話形式の解説
博士
今回はのう、19歳の大学生Aさんが統合失調症で医療保護入院して2か月、退院の話が出始めた場面じゃ。両親から『学業の遅れが心配ですぐ復学したいと言っている』と相談された看護師の説明を考える問題じゃよ。
アユム
入院して2か月で退院できるんですね。でも大学に戻るのは早すぎる気がします。
博士
そこがポイントじゃ。統合失調症では『ストレス脆弱性モデル』という考え方があっての、もともと脆弱性をもつ脳に強い刺激が加わると症状が再燃しやすいんじゃ。退院直後にいきなり大学という刺激の多い環境に戻るのはリスクが高いんじゃよ。
アユム
幻覚や妄想は薬で治まっているんですよね?それでもダメなんですか?
博士
陽性症状は薬物療法で比較的良くなるが、意欲低下や疲れやすさ、感情鈍麻といった陰性症状、そして集中力や記憶などの認知機能障害は残りやすいんじゃ。これらは授業を受ける力に直結する。
アユム
なるほど。では4つの選択肢を見ていきますね。まず選択肢1の『復学の時期を大学に判断してもらいましょう』はどうですか?
博士
これは誤りじゃ。復学可能かどうかの医学的判断は主治医が行うもので、大学は学業面の配慮窓口にすぎん。大学に丸投げは不適切じゃな。
アユム
選択肢2の『復学できる状態になるまで退院を延期しましょう』は?
博士
これも誤りじゃ。退院の話が出ている以上、入院治療の必要性は下がっておる。復学ができるまで入院を引き延ばすと、生活能力や社会性が落ちるホスピタリズムを招くんじゃ。
アユム
選択肢3の『ご両親からAさんに焦らないよう説得してください』は家族に任せる形ですね。
博士
これも不適切じゃ。両親自身も不安を抱えておるし、親が説得役になると家族内の緊張が高まる。感情表出の高い家族環境いわゆる高EEは再発リスクになることがわかっておるから、医療者が中立的に説明する役割を担うべきなんじゃ。
アユム
そして選択肢4の『まずは家庭での日常生活に慣れることから始めましょう』が正解ですね。
博士
そのとおり。退院後はまず服薬継続、睡眠・食事・活動のリズムを整え、外来通院を確立する。そこが安定したらデイケアや短時間聴講など段階的に刺激量を増やしていく。これが再発予防と社会復帰を両立する王道じゃ。
アユム
段階的にというのが大切なんですね。Aさんの自己効力感を守る意味でも、無理な挑戦で挫折させない配慮が必要だと理解しました。
博士
そうじゃな。さらに言えば、学生相談室や保健管理センターとの連携、単位の調整、家族への心理教育も重要な支援パッケージじゃ。焦らず土台から固めることが回復への近道じゃよ。
POINT
統合失調症の退院直後はストレス脆弱性が高く、陰性症状や認知機能障害が残存しやすい時期です。いきなり大学復学を目指すのではなく、まず家庭で服薬・睡眠・食事・通院といった基本的な生活リズムを安定させることが第一歩となります。その後、デイケアや短時間の登校など段階的に刺激量を増やし、主治医・家族・大学が連携して社会復帰を支援します。高EE家族への心理教育も再発予防に有効です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:次の文を読み、問いに答えよ。 Aさん(19歳、男性、大学生)は、実家近くのアパートに1人で暮らしている。ある日、線路沿いの道を裸足で歩きながら険しい表情でカッターナイフを振り回し、ぶつぶつと独り言を言い続けていたことから警察に保護された。Aさんは、警察から連絡を受けた両親とともに精神科病院を受診したが「自分は命を狙われている」、「この人たちは自分の親じゃない」と言い、医療者に対しても拒否的な態度をとっている。診察の結果、Aさんは統合失調症(schizophrenia)と診断された。Aさんの頭髪は乱れ、食事や睡眠がとれていない様子であったため、そのまま医療保護入院をすることになった。 入院後2か月が経過し、主治医からは退院の話も出始めた。Aさんは入院をきっかけに大学を休学している。Aさんの両親が「Aは学業の遅れを心配して、退院後すぐに復学したいと言っています。Aはすぐに復学できるのでしょうか」と相談してきた。 看護師の説明として適切なのはどれか。
解説:正解は 4 です。統合失調症の急性期を脱して退院する段階では、陽性症状(幻覚・妄想)は薬物療法で軽減していても、意欲低下・感情鈍麻・疲れやすさといった陰性症状や認知機能障害が残存しやすく、環境刺激に対する脆弱性(ストレス脆弱性モデル)が高い状態です。退院直後からいきなり大学という刺激の多い場に戻ると、再燃のリスクや挫折体験による自己効力感低下を招きやすいため、まずは家庭という保護的な環境で服薬・睡眠・食事・活動の生活リズムを整え、段階的に社会復帰を進めることが推奨されます。
選択肢考察
-
× 1. 「復学の時期を大学に判断してもらいましょう」
復学時期の最終判断は、症状や服薬状況、日常生活の安定度を総合的にみる主治医と本人・家族・大学の連携で決めるものであり、大学に委ねるのは不適切です。大学は学業支援や配慮の窓口であって医学的判断は行いません。
-
× 2. 「復学できる状態になるまで退院を延期しましょう」
症状が一定程度落ち着き退院の話が出ている状況で、復学可能になるまで入院を引き延ばすのは社会復帰の機会を奪い、入院の長期化により生活能力・社会性の低下(ホスピタリズム)を招くため不適切です。
-
× 3. 「ご両親からAさんに焦らないよう説得してください」
両親自身もAさんの将来に不安を抱えており、説得役を担わせることは家族の負担となり、親子関係に緊張を生みやすく高EE(感情表出)による再燃リスクにもつながります。医療者が中立的に説明する役割を担うべきです。
-
○ 4. 「まずは家庭での日常生活に慣れることから始めましょう」
退院後は服薬継続、規則正しい睡眠・食事、外来通院など基本的な生活リズムを再構築する時期です。家庭での安定した生活を土台に、その後デイケアや段階的な登校など刺激量を徐々に増やしていくのが再発予防と社会復帰の両立に適した方針です。
統合失調症の回復期では『ストレス脆弱性モデル』の理解が重要で、過大な環境刺激が再燃を誘発します。厚生労働省の統合失調症患者の退院支援では、服薬自己管理・生活リズムの確立・ストレス対処・家族心理教育が柱です。大学生の場合は学生相談室や保健管理センターと連携し、短時間聴講や単位調整など段階的復学を検討します。高EE家族への心理教育(LEEを下げる関わり)も再発予防に有効です。
統合失調症の退院後の生活指導において、復学などの社会復帰は段階的に進めるべきで、まず家庭での日常生活の安定化を優先することを理解しているかを問う問題です。
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