睡眠薬卒業後のセルフケア指導
看護師国家試験 第108回 午前 第113問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性、会社員)は、1人暮らし。11月に経理部へ異動となった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害(panic disorder)と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬<SSRI>が処方された。また、職場の協力を得て仕事量の調整をしてもらうことになった。受診から5日後、Aさんから「昨日の朝から気分が悪くなり、下痢をするようになった」と電話があった。 Aさんのパニック発作は消失し、不眠も改善したため、睡眠薬の処方は終了となった。Aさんは「もともと手足が冷えて寝つきが悪かったから、睡眠薬がなくなることが少し心配です。自分で工夫できることはあるでしょうか」と看護師に尋ねてきた。看護師が以前の睡眠状況を尋ねると、睡眠時間は23時から6時までの7時間であったこと、手足が冷えて眠れない時は熱いシャワーを浴びてから布団に入っていたことを話した。 Aさんの睡眠へのセルフケアに対する看護師の指導で適切なのはどれか。
- 1.「休日は昼まで寝るようにしましょう」
- 2.「布団に入る時間を21時に早めましょう」
- 3.「ぬるい温度のお風呂にゆっくり入るようにしましょう」
- 4.「眠れるまで布団の中でじっとしているようにしましょう」
対話形式の解説
博士
Aさんは薬が終了し、冷え性で寝つきが悪いことを心配しておる。熱いシャワーを浴びてから布団に入っていたそうじゃ。これをどう見るかのう
サクラ
熱いシャワーはダメなんですか?
博士
実は逆効果なんじゃ。熱い湯は交感神経を刺激して覚醒を促してしまう。眠るためには副交感神経優位の状態を作る必要があるんじゃよ
サクラ
じゃあぬるめのお湯がいいんですね
博士
その通り。38〜40℃くらいのぬるめの湯に15〜20分ゆっくり浸かる。副交感神経が優位になりリラックスできる上、深部体温の変化でも入眠が促されるんじゃ
サクラ
深部体温ってどう関係するんですか?
博士
ヒトは深部体温が下がるときに眠気が出る。入浴で一度体温を上げると、その後下がる勾配が大きくなり自然な眠気が来る。就寝1〜2時間前の入浴がベストタイミングじゃ
サクラ
選択肢1の休日の寝だめはどうですか
博士
それはサーカディアンリズムを乱す典型例じゃ。ソーシャルジェットラグと呼ばれ、月曜の不調の原因にもなる。起床時刻を一定に保つのが鉄則じゃ
サクラ
選択肢2の21時就床はどうでしょう
博士
眠くないのに無理に布団に入ると「眠れない」体験が重なり条件性不眠を招く。Aさんの自然な就寝時刻は23時じゃから、それを早める必要はない
サクラ
選択肢4の布団でじっとするのは?
博士
これも不眠を慢性化させる典型じゃ。認知行動療法の刺激制御法では、眠気が来るまで一度布団から出ることを推奨する。布団を眠れない場所と条件づけしないためじゃ
サクラ
正解は3のぬるい湯なんですね
博士
そうじゃ。Aさんは冷え性があるため、末梢を温めて血管拡張させ、深部体温の放散を助けることが入眠に直結する
サクラ
睡眠衛生の指導項目は他にもありますか?
博士
規則的な起床、日中の活動、カフェイン・アルコール制限、就寝前のブルーライト回避、寝室環境の整備など多岐にわたる。非薬物療法の基本じゃから覚えておくとよいぞ
POINT
入眠には深部体温の低下と副交感神経優位の状態が重要です。就寝1〜2時間前の38〜40℃のぬるめ入浴は、リラックス効果と深部体温のリバウンド低下で自然な入眠を促します。熱いシャワーは交感神経を刺激し逆効果であり、寝だめや早すぎる就床、布団でじっとすることは概日リズムの乱れや条件性不眠を招きます。Aさんの冷え性による入眠困難にはぬるめ入浴が最適な指導です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(37歳、女性、会社員)は、1人暮らし。11月に経理部へ異動となった。新しい人間関係と慣れない仕事で帰宅後も緊張が取れず、眠れない日が続いていた。異動から3週目の朝、会社のエレベーターに乗ると、息苦しさ、動悸からパニック発作を起こした。その後も不眠とパニック発作が出現したため、異動から2か月後、精神科クリニックを受診し、パニック障害(panic disorder)と診断された。主治医からは、短時間型の睡眠薬と選択的セロトニン再取り込み阻害薬<SSRI>が処方された。また、職場の協力を得て仕事量の調整をしてもらうことになった。受診から5日後、Aさんから「昨日の朝から気分が悪くなり、下痢をするようになった」と電話があった。 Aさんのパニック発作は消失し、不眠も改善したため、睡眠薬の処方は終了となった。Aさんは「もともと手足が冷えて寝つきが悪かったから、睡眠薬がなくなることが少し心配です。自分で工夫できることはあるでしょうか」と看護師に尋ねてきた。看護師が以前の睡眠状況を尋ねると、睡眠時間は23時から6時までの7時間であったこと、手足が冷えて眠れない時は熱いシャワーを浴びてから布団に入っていたことを話した。 Aさんの睡眠へのセルフケアに対する看護師の指導で適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。入眠には深部体温の低下が重要で、就寝1〜2時間前にぬるめ(38〜40℃)の湯に浸かることで末梢血管が拡張し、その後深部体温が下がることで自然な眠気が誘発されます。また副交感神経が優位となりリラックス効果も得られます。Aさんの「冷え性による入眠困難」に対する適切なセルフケア指導です。
選択肢考察
-
× 1. 「休日は昼まで寝るようにしましょう」
休日の寝だめは概日リズム(サーカディアンリズム)を乱し、ソーシャルジェットラグを生じます。平日の入眠困難を悪化させるため推奨されません。
-
× 2. 「布団に入る時間を21時に早めましょう」
眠くない時間に無理に就床すると「眠れない」体験が積み重なり、条件性不眠を誘発します。Aさんの通常の入眠時刻は23時であり、生活リズムを崩す必要はありません。
-
○ 3. 「ぬるい温度のお風呂にゆっくり入るようにしましょう」
38〜40℃のぬるめの入浴は副交感神経を優位にしリラックス効果をもたらします。入浴で一度上昇した深部体温が就床時に下降することで自然な入眠が得られます。熱いシャワーは交感神経を刺激し覚醒を促すため逆効果です。
-
× 4. 「眠れるまで布団の中でじっとしているようにしましょう」
眠れないのに布団にとどまると「布団=眠れない場所」という条件づけが生じ不眠を慢性化させます。認知行動療法の刺激制御法では、眠気が来るまで一度離床することが推奨されます。
睡眠衛生指導の基本は、規則的な起床時刻、日中の活動、カフェイン・アルコール・ニコチンの制限、就寝前のスクリーン光回避、就寝1〜2時間前のぬるめの入浴、寝室環境の整備などです。高齢者では長時間の昼寝を避けることも重要です。入眠困難タイプには特に深部体温コントロールが有効です。
非薬物的な睡眠衛生指導として、深部体温と自律神経の観点から適切な入浴方法を選択できるかが問われています。
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