統合失調症、回復期の関わり方
看護師国家試験 第108回 午後 第109問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(19歳、男性、専門学校生)は、1人暮らし。「皆が自分を嫌っている」と言い、昨年から学校を休学し、アパートに引きこもるようになった。先週、夜中に大声で叫ぶ日が続いたため、アパートの管理人が両親へ連絡をした。連絡の翌日、Aさんの両親が訪ねてみると、Aさんは「隣の人に嫌がらせを受けている。助けてくれ」と叫び続けたため、両親とともに精神科病院へ行き、その日のうちに任意入院となった。Aさんは統合失調症(schizophrenia)と診断され、抗精神病薬による治療が開始された。 Aさんは、入院後10日から日中に臥床するようになった。夜間は熟睡している。食事の時間に食堂に遅れてくることが多い。看護師と会話をするようになったが、他の入院患者への被害妄想がある。 この時期の看護師の対応で最も適切なのはどれか。
- 1.食事介助をする。
- 2.一緒に院内を散歩する。
- 3.他の入院患者との交流を促す。
- 4.日中に臥床しているときは声かけを控える。
対話形式の解説
博士
第108回午後228問じゃ。Aさんは19歳男性、統合失調症で任意入院。入院10日目、看護師と会話するようになったが他患者への被害妄想は残り、日中臥床が増え、食事に遅れる。この時期の最適な関わりは?
サクラ
博士、入院10日目ってどんな段階なんですか?
博士
急性期の陽性症状が抗精神病薬でやや抑えられ、消耗期から回復期に移る時期じゃ。疲労感や陰性症状が目立ち、活動性が落ちやすい。
サクラ
なぜ日中臥床が増えるのですか?
博士
急性期を乗り越えた反動で心身のエネルギーが枯渇しておる。また抗精神病薬の鎮静作用や陰性症状(意欲低下)も影響する。
サクラ
正解は何番ですか?
博士
正解は2番『一緒に院内を散歩する』じゃ。看護師との関係が芽生え始めた今、一対一の関わりで信頼を深めつつ日中活動を増やす絶妙な介入じゃな。
サクラ
1番の食事介助は?
博士
Aさんは食事を自力で摂れておる。不必要な介助は依存を強化し、自尊心を損なう。ADL自立は尊重するのが基本じゃ。
サクラ
3番の他患者との交流は?
博士
他患者への被害妄想が残る中での集団参加は、症状悪化やトラブルの引き金になる。集団活動は症状がさらに安定してから段階的にじゃ。
サクラ
4番の声かけを控えるは?
博士
放置すれば昼夜逆転、筋力低下、社会復帰の遅延を招く。もちろん強制はいかんが、声かけて活動を促す姿勢が大切じゃ。
サクラ
散歩がなぜ適切なんですか?
博士
運動量が軽度で侵襲が少ない、一対一で話せる、院内で安全、景色や外気で気分転換できる、生活リズムが整う。多面的に効果がある介入じゃ。
サクラ
信頼関係の構築でのポイントは?
博士
約束を守る、妄想を否定も肯定もせずに感情に寄り添う、本人のペースを尊重する。看護師は『安全基地』であることが重要じゃ。
サクラ
急ぎすぎないことも大事なんですね。
博士
そのとおり。回復期に無理に社会参加を求めると再燃しやすい。本人のペースで段階的に広げる。それが長期的な社会復帰への近道じゃ。
POINT
統合失調症の急性期後、消耗期から回復期への移行時期では、疲労感や陰性症状で活動性が落ちやすい一方、信頼できる人との個別的関わりが治療的に働きます。看護師と一緒に院内を散歩することは、信頼関係の深化と生活リズム回復、日中活動の増加を同時に達成できる適切な介入です。食事介助は自立度を損ない、他患者交流は被害妄想下では症状悪化を招き、放置は昼夜逆転のリスクとなるため、いずれも不適切です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:次の文を読み問いに答えよ。 Aさん(19歳、男性、専門学校生)は、1人暮らし。「皆が自分を嫌っている」と言い、昨年から学校を休学し、アパートに引きこもるようになった。先週、夜中に大声で叫ぶ日が続いたため、アパートの管理人が両親へ連絡をした。連絡の翌日、Aさんの両親が訪ねてみると、Aさんは「隣の人に嫌がらせを受けている。助けてくれ」と叫び続けたため、両親とともに精神科病院へ行き、その日のうちに任意入院となった。Aさんは統合失調症(schizophrenia)と診断され、抗精神病薬による治療が開始された。 Aさんは、入院後10日から日中に臥床するようになった。夜間は熟睡している。食事の時間に食堂に遅れてくることが多い。看護師と会話をするようになったが、他の入院患者への被害妄想がある。 この時期の看護師の対応で最も適切なのはどれか。
解説:正解は 2 です。入院10日目は急性期の陽性症状がやや落ち着き、看護師との関係が築かれ始めた回復期への移行期です。信頼関係を土台に、看護師が一緒に院内散歩することで生活リズムを整え、日中活動を少しずつ増やしていく働きかけが最も適切です。
選択肢考察
-
× 1. 食事介助をする。
Aさんは食堂に遅れるものの、食事は自力摂取できています。ADL自立レベルに対して不必要な介助は依存を助長し自尊心を損なうため、適切ではありません。
-
○ 2. 一緒に院内を散歩する。
看護師との関係ができ始めた時期に、一対一の散歩を通じて信頼関係を深めつつ、日中の活動量を増やし生活リズムを整えることができます。安全な環境での活動促進として最適です。
-
× 3. 他の入院患者との交流を促す。
他患者への被害妄想が残っており、今の段階で交流を促すと症状悪化や対人トラブルの原因となります。集団活動への参加はさらに症状が安定してから段階的に行います。
-
× 4. 日中に臥床しているときは声かけを控える。
日中臥床を放置すれば昼夜逆転や筋力低下を招き、社会復帰を妨げます。休息と活動のバランスを見ながら声かけし、日中の活動を促すことが回復期看護の基本です。
統合失調症の経過は前駆期、急性期(陽性症状優位)、消耗期(回復期初期、陰性症状・疲労感)、回復期へと移行します。消耗期から回復期にかけては十分な休息と並行して、信頼できる人との一対一の関わりから活動を広げていく支援が重要です。急ぎすぎると症状の再燃や自信喪失につながるため、本人のペースを尊重しつつ、看護師が安全な『試しの場』を提供することが鍵となります。
統合失調症急性期後の回復期における看護介入の選択を問う問題です。
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