ADHDの家族支援で避けるべき声かけ
看護師国家試験 第110回 午前 第113問 / 精神看護学 / 状況設定問題
国試問題にチャレンジ
Aさん( 19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害<ADHD>( attention-deficit/hyperactivity disorder )と診断された。 診察後、Aさんの両親は「親としてどうしたら良かったのでしょうか、私たちの育て方に問題があったのでしょうか」と外来看護師に話した。 このときのAさんの両親への対応として適切なのはどれか。
- 1.「Aさんは育てにくいお子さんでしたね」
- 2.「職場の環境が悪かったことが原因です」
- 3.「ご両親の育て方が原因ではないと思いますよ」
- 4.「もっと早くAさんの問題に気が付けばよかったですね」
対話形式の解説
博士
両親の『育て方が悪かったのか』という問いに、どう答えるのがよいかのう。
サクラ
まず、ADHDは育て方で発症する疾患ではないですよね。
博士
そうじゃ。ドパミンやノルアドレナリン系の発達の偏りが関与する神経発達症じゃ。
サクラ
つまり両親の自責感は医学的に根拠がないわけですね。
博士
うむ。だからこそ、まずはその誤解を丁寧に解いてやることが大切なんじゃ。
サクラ
選択肢1の『育てにくいお子さんでしたね』は共感のつもりでも、子どもを否定的に評価してしまいますね。
博士
両親の苦労を肯定するようで、実は本人を責める響きがある。
サクラ
選択肢2の『職場が原因』も因果関係として正しくないですね。
博士
発症の原因を誤って伝えるのは禁忌じゃ。
サクラ
選択肢4の『もっと早く気付けば』はかなり傷つく言葉です。
博士
自責感をさらに強めてしまうのう。
サクラ
残る選択肢3の『育て方が原因ではない』が最も適切ですね。
博士
正解じゃ。心理教育の第一歩は、誤った罪悪感を取り除くことじゃ。
サクラ
その後でペアレントトレーニングなどの具体的支援に進めるのですね。
博士
段階を踏んだ支援が重要じゃのう。
POINT
ADHDは神経発達の特性に基づく疾患で、育て方や職場環境が発症原因になることはありません。自責感を抱いている家族には、医学的に正しい情報を伝えて罪悪感を軽減するのが心理教育の基本です。子どもや親を評価・批判する言葉は信頼関係を損なうため避けます。正解は『ご両親の育て方が原因ではないと思いますよ』です。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん( 19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害<ADHD>( attention-deficit/hyperactivity disorder )と診断された。 診察後、Aさんの両親は「親としてどうしたら良かったのでしょうか、私たちの育て方に問題があったのでしょうか」と外来看護師に話した。 このときのAさんの両親への対応として適切なのはどれか。
解説:正解は3です。ADHDは前頭葉機能やドパミン・ノルアドレナリン神経系の発達の偏りが関与する神経発達症であり、育て方やしつけが原因で発症する疾患ではありません。自責の念を抱いている両親には、まずその誤解を解き、罪責感を軽減する言葉かけが必要です。
選択肢考察
-
× 1. 「Aさんは育てにくいお子さんでしたね」
両親の育児の困難を肯定しているようで、遠回しに『手のかかる子だった』と子どもを評価する発言になり、両親と本人の双方を傷つけかねません。
-
× 2. 「職場の環境が悪かったことが原因です」
ADHDは発達の特性に基づく疾患で、職場の環境が発症原因ではありません。因果関係を誤って伝えることになります。
-
○ 3. 「ご両親の育て方が原因ではないと思いますよ」
ADHDの発症に育て方は関与しないという正しい情報を伝え、両親の自責感を和らげることができる適切な対応です。
-
× 4. 「もっと早くAさんの問題に気が付けばよかったですね」
両親の対応を責める表現で、自責感をさらに強めてしまい支援的な関わりとはいえません。
ADHDの原因は遺伝要因や脳の機能的特性が中心で、環境はあくまで症状の現れ方を修飾する要因にすぎません。家族への心理教育では『疾患は育て方のせいではない』という基本情報を繰り返し伝え、保護者の罪悪感を軽減しながら、本人への具体的な関わり方を一緒に考えていく姿勢が重要です。ペアレントトレーニングなども活用されます。
ADHDの病態理解と、家族への心理教育・支持的コミュニケーションの基本を問う問題です。家族の罪責感に共感しつつ、医学的に正しい情報を届けられるかが鍵となります。
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