化学療法後の好中球減少と日和見感染
看護師国家試験 第107回 午前 第45問 / 成人看護学 / がん看護
国試問題にチャレンジ
Aさん( 56歳、男性 )は、化学療法後の血液検査にて好中球数300/mm 3 であった。 Aさんの状態で正しいのはどれか。
- 1.入浴を控える必要がある。
- 2.日和見感染症( opportunistic infection )のリスクが高い。
- 3.口腔ケアには歯間ブラシを用いる必要がある。
- 4.化学療法の開始前と比べリンパ球数は増加している。
対話形式の解説
博士
今日は骨髄抑制の問題じゃ。Aさんの好中球300/mm³、お主どう評価する?
サクラ
これはかなり重度の好中球減少ですね。Grade4に相当すると思います。
博士
見事じゃ。CTCAEではGrade4は500未満で最重症。発熱すれば発熱性好中球減少症FNじゃ。
サクラ
好中球は細菌や真菌を貪食する一次防御の主役でしたよね。
博士
その通り。白血球の約6割を占め、遊走・貪食・殺菌を担う。数が減れば感染防御の城壁が崩れるようなものじゃ。
サクラ
日和見感染というのは、普段は病気を起こさない弱い病原体が暴れ出すことですよね。
博士
そう。健常人では無害なカンジダ、アスペルギルス、ニューモシスチス、サイトメガロウイルスなどが牙をむく。真菌症や間質性肺炎に発展することもあるぞ。
サクラ
化学療法後、いつごろ好中球は最低値になるんですか?
博士
ナディアと呼ばれる最低値は投与後7〜14日頃じゃ。その後ゆっくり回復する。G-CSF製剤で回復を促すこともあるぞ。
サクラ
選択肢1の入浴は控えなくていいんですよね。
博士
むしろ清潔保持のために必要じゃ。皮膚常在菌の除去、爽快感、リラックス効果もあるからの。ただし中心静脈カテーテル挿入部は防水シートで保護する必要がある。
サクラ
選択肢3の歯間ブラシは歯肉を傷つけるリスクがありますね。
博士
そうじゃ。骨髄抑制期は血小板も減って出血しやすい。ブラッシングは軟毛歯ブラシで愛護的に、含嗽も頻回に行うのじゃ。粘膜炎の予防にもつながる。
サクラ
選択肢4のリンパ球はどうですか?
博士
化学療法はすべての白血球系統を抑制するからの、リンパ球も減るぞ。リンパ球減少はPCP(ニューモシスチス肺炎)や帯状疱疹のリスクじゃ。
サクラ
看護師として気をつけるポイントは何ですか?
博士
第一にバイタルサインと発熱のモニタリング、第二に感染経路の遮断、面会制限、手指衛生、マスク着用、生花・観葉植物の持ち込み禁止じゃ。
サクラ
生花がダメなのは真菌対策ですね。
博士
その通り。土や水場は真菌の温床じゃ。生の果物や野菜も制限されることがあるぞ、Neutropenic dietじゃ。
サクラ
しっかり覚えます。
POINT
化学療法後に好中球が300/mm³まで低下した状態はGrade4の重度好中球減少で、日和見感染症のリスクが極めて高い状態です。入浴は清潔保持のため継続し、歯間ブラシは出血リスクのため避け、軟毛歯ブラシと含嗽で愛護的な口腔ケアを行います。リンパ球も同時に減少するためPCPや帯状疱疹にも注意が必要です。ナディアは投与後7〜14日、発熱があれば発熱性好中球減少症として緊急対応し、感染予防と早期発見が看護のポイントです。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:Aさん( 56歳、男性 )は、化学療法後の血液検査にて好中球数300/mm 3 であった。 Aさんの状態で正しいのはどれか。
解説:正解は2の「日和見感染症のリスクが高い」です。Aさんの好中球数は300/mm³と極めて低く、これは好中球減少症(neutropenia)のGrade4(500/mm³未満)に相当する最重症の易感染状態です。好中球は白血球の約60%を占め細菌や真菌を貪食する一次防御の主役であり、その減少は感染防御機構の崩壊を意味します。特に1000/mm³未満で感染リスク上昇、500/mm³未満になると健常人では感染しない弱毒菌や真菌(カンジダ、アスペルギルス)、ウイルス(ヘルペス、CMV)などによる日和見感染症が起こりやすくなります。化学療法の骨髄抑制は投与後7〜14日で最低値(ナディア)に達するため、この時期はクリーンルームや逆隔離、予防的抗菌薬投与、G-CSF使用などが検討されます。
選択肢考察
-
× 1. 入浴を控える必要がある。
入浴は皮膚の清潔を保ち皮膚常在菌や汚染物を除去するため、むしろ感染予防に重要です。中心静脈カテーテル挿入部の防水処理など注意は必要ですが、入浴自体を控える必要はありません。
-
○ 2. 日和見感染症( opportunistic infection )のリスクが高い。
好中球300/mm³は重度好中球減少(Grade4)で、健常人では問題にならない弱毒微生物による日和見感染症のリスクが極めて高まります。カンジダ、アスペルギルス、ニューモシスチス、サイトメガロウイルスなどが代表的です。
-
× 3. 口腔ケアには歯間ブラシを用いる必要がある。
歯間ブラシは歯肉を傷つけ出血や感染の入口を作る可能性があります。骨髄抑制期は血小板も減少しているため出血しやすく、軟毛歯ブラシや含嗽による愛護的な口腔ケアが推奨されます。
-
× 4. 化学療法の開始前と比べリンパ球数は増加している。
化学療法の骨髄抑制により白血球全体(好中球もリンパ球も)が減少します。リンパ球減少はニューモシスチス肺炎や帯状疱疹、CMV感染のリスクを高めます。
CTCAE(有害事象共通用語規準)による好中球減少の重症度:Grade1(1500〜正常下限)、Grade2(1000〜1500)、Grade3(500〜1000)、Grade4(500未満)。発熱性好中球減少症(FN)は好中球500未満かつ38.0℃以上の発熱で、緊急対応を要する病態です。血小板5万未満で出血リスク、ヘモグロビン低下で貧血症状と、三系統のチェックが必須。覚え方は「好中球500で要注意、100で重篤」。
化学療法後の骨髄抑制、特に好中球減少に伴う易感染状態と日和見感染のリスクを理解しているかが問われています。
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