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自己効力感とは?成人のセルフケアを支える『できる』という確信

看護師国家試験 第109回 午後 第41問 / 成人看護学 / 慢性疾患とリハビリテーション看護

国試問題にチャレンジ

109回 午後 第41問

成人のセルフケア行動に関する学習を促進するのはどれか。

  1. 1.自己効力感
  2. 2.パターナリズム
  3. 3.プレパレーション
  4. 4.ノンコンプライアンス

対話形式の解説

博士 博士

今日は成人の学習を促進する概念について学ぶぞ。セルフケア行動という言葉、どんなイメージを持っておる?

サクラ サクラ

自分で健康管理をする、みたいなことですか?血圧を測ったり、食事に気をつけたり。

博士 博士

その通りじゃ。セルフケアは保健医療行動の一種で、自分の健康について責任を持って意思決定し、自己管理していくことを指す。では、そうした行動を『やってみよう』と後押しする心の働きは何かのう?

サクラ サクラ

えっと…やる気?モチベーション?

博士 博士

近い!心理学的にはそれを『自己効力感』と呼ぶのじゃ。バンデューラという心理学者が提唱した概念で『ある状況で必要な行動をうまくやれると自分の可能性を信じること』を指す。

サクラ サクラ

『自分にもできる』という自信みたいなものですね。でも、どうやったら高まるんですか?

博士 博士

良い質問じゃ。自己効力感には4つの情報源がある。成功体験、代理的経験、言語的説得、生理的・情動的状態の4つじゃ。中でも最も強いのは成功体験、つまり実際に自分でできたという経験じゃよ。

サクラ サクラ

だから看護師は『小さな目標を立てて成功を積み重ねる』支援をするんですね。糖尿病の患者さんで血糖測定が続けられないときとか。

博士 博士

そうじゃ。最初から完璧な自己管理を求めず、『今日は朝の1回だけ測ろう』というふうにスモールステップで達成体験を積ませる。

サクラ サクラ

選択肢の他の言葉も気になります。パターナリズムって?

博士 博士

『強い立場の者が本人の意思を無視して、本人のためだからと干渉する』態度じゃ。医療では医師が患者の意向を聞かず治療を決めてしまう構図が典型で、自立的なセルフケア学習とは真逆の概念じゃな。

サクラ サクラ

プレパレーションは小児看護で習いました。人形や絵本で処置の説明をするやつですよね。

博士 博士

その通り、発達段階に応じた心の準備を整える技法で成人のセルフケアには直接関係しない。ノンコンプライアンスは?

サクラ サクラ

処方通りに薬を飲まない、といった指示遵守ができていない状態ですね。

博士 博士

そうじゃ。これは学習の促進ではなく阻害要因。最近はアドヒアランスという、患者が主体的に治療に参加する概念が重視されておる。

サクラ サクラ

自己効力感を高めることがアドヒアランスの向上にもつながるんですね。

博士 博士

よくつながりに気づいたのう。成人学習の理論では、学習者が自律的で経験を活かし、課題中心・即応的であることが特徴とされる。自己効力感はその中心を支える概念なんじゃ。

POINT

成人のセルフケア行動を促進する概念として最も重要なのが自己効力感(self-efficacy)です。バンデューラが提唱したこの概念は『ある状況で必要な行動を自分は遂行できる』という信念を指し、慢性疾患の自己管理や生活習慣の変容など自律的な学習行動を強く後押しします。自己効力感は成功体験、代理的経験、言語的説得、生理的・情動的状態という4つの情報源から形成されるため、看護師はスモールステップでの達成体験づくりや、ロールモデルの提示、肯定的な声かけなどを通じて患者の自己効力感を高める関わりを行います。パターナリズムやノンコンプライアンスといった対照的な概念と合わせて整理すると、成人看護における患者支援の姿勢そのものが理解しやすくなる重要な出題ポイントです。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:成人のセルフケア行動に関する学習を促進するのはどれか。

解説:正解は 1 の自己効力感である。自己効力感(self-efficacy)はカナダの心理学者 Bandura(バンデューラ)が提唱した概念で、『ある状況において必要な行動をうまく遂行できる』という自分の能力に対する確信を指す。成人のセルフケア行動は本人の主体的な意思決定と継続的な自己管理を前提とするため、『自分にもできる』という信念=自己効力感が高いほど行動変容と学習が促進される。

選択肢考察

  1. 1.  自己効力感

    自分が目標行動を遂行できるという確信のこと。成功体験、代理的経験、言語的説得、生理的・情動的状態の4つの情報源によって高まり、慢性疾患の自己管理や禁煙・減量など行動変容型の学習を強力に後押しする。

  2. × 2.  パターナリズム

    強い立場の者が、相手の意思を問わずに『本人の利益のため』として介入・干渉する姿勢。本人の自律を阻害するため、自立的なセルフケア学習の促進とは正反対の概念である。

  3. × 3.  プレパレーション

    小児が検査・処置・手術を受ける際に、人形や絵本などを用いて発達段階に合わせた説明を行い、心理的準備を支える小児看護の技法。成人のセルフケア学習を説明する概念ではない。

  4. × 4.  ノンコンプライアンス

    患者が処方された内服や治療指示を守らない状態を指し、セルフケアの阻害要因となる現象。学習を促進するどころか、治療効果を損ねるため望ましくない状態である。

自己効力感を高める4つの情報源(Banduraの理論)は、(1)成功体験〈自分でやってできた経験〉、(2)代理的経験〈他者の達成を見る〉、(3)言語的説得〈できると励まされる〉、(4)生理的・情動的状態〈不安や疲労の低減〉。慢性疾患患者への教育では、小さな達成可能目標を積み重ねて成功体験を作ることが臨床的にも有効とされる。健康行動理論ではヘルスビリーフモデルやトランスセオレティカルモデル(行動変容ステージ)と並び頻出概念。

セルフケア行動という自律的な保健行動を支える心理学的概念を問う問題。『自分でできる』という認知=自己効力感が行動学習を促進する中心概念であることを押さえる。