慢性疾患の自己管理 習慣化という最強の武器
看護師国家試験 第109回 午後 第48問 / 成人看護学 / 慢性疾患とリハビリテーション看護
国試問題にチャレンジ
慢性疾患をもつ成人の自己管理を促進する援助はどれか。
- 1.行動の習慣化を促す。
- 2.医療者が患者の目標を設定する。
- 3.結果を優先して評価することを促す。
- 4.うまくいかない行動に目を向けるよう促す。
対話形式の解説
博士
今日は慢性疾患を持つ成人のセルフマネジメント支援について学ぶぞ。慢性疾患の特徴って何じゃろう?
アユム
完治が難しく、長期にわたって付き合っていく必要がある疾患、ですよね。糖尿病、高血圧、COPD、慢性腎臓病などが代表例です。
博士
その通り。だからこそ医療者の指示を一時的に守るだけでは不十分で、患者自身が生活の中で療養行動を継続する必要がある。
アユム
でも毎日続けるのって大変ですよね。
博士
そこで鍵になるのが今回の正解、『行動の習慣化』じゃ。習慣化のメリットって何じゃと思う?
アユム
いちいち『やらなきゃ』と意識しなくても自動的にできる、ということですか?
博士
その通り。認知的な負荷が下がるから続けやすい。歯磨きを毎朝考えずにやるのと同じで、服薬や血糖測定も生活動線に組み込めば無意識のルーチンになる。
アユム
具体的にはどう習慣化するんですか?
博士
既存の習慣に紐付けるのが効果的じゃ。『朝起きたら血圧測定』『夕食後すぐに服薬』『入浴前に体重測定』など、トリガー行動とセットにする。これを習慣スタッキングと呼ぶ。
アユム
行動をハードルの低い形に分解するのも大事ですよね。
博士
そうじゃ。最初から完璧を求めると挫折する。『週3回10分歩く』『1日1回血糖測定』のような小さな一歩から始めるスモールステップが重要じゃ。
アユム
選択肢2の『医療者が目標を設定する』は、楽そうだけどダメなんですね。
博士
ダメじゃ。患者自身が設定することで自己効力感と達成動機が高まる。医療者は情報提供と助言に徹し、患者と一緒に目標を作る『協働目標設定』が望ましいのう。
アユム
選択肢3の結果優先評価は?
博士
慢性疾患では努力しても結果がすぐに出ないことが多い。結果だけで評価すると、体重が減らない、HbA1cが改善しない、と落ち込んで継続動機を失う。過程=努力・工夫・継続を評価することが大切じゃ。
アユム
選択肢4のうまくいかない行動に目を向けるのは逆効果なんですね。
博士
その通り。失敗ばかり見ると自己効力感が下がる。むしろ成功体験や小さな前進にフィードバックをあてて、『できたね』を増やすことがセルフマネジメント行動の維持に直結する。
アユム
心理的な支援って結構大事なんですね。
博士
そうじゃ。近年は動機づけ面接(motivational interviewing)という技法も普及しておる。患者の両価性を受け止めながら、変化へのモチベーションを引き出す面接じゃ。
アユム
行動変容ステージモデルも関係しますか?
博士
もちろん。前熟考期・熟考期・準備期・実行期・維持期の5段階で、ステージごとに適切な介入が異なる。準備期の患者に行動計画を作る、実行期の患者に習慣化を支援する、といった使い分けじゃ。
アユム
単に指導するのではなく、患者の心理段階に合わせて関わることが大事なんですね。
POINT
慢性疾患をもつ成人の自己管理支援では、療養行動を日常生活の中に定着させる『習慣化』が最も有効な援助です。既存の生活動線に療養行動を紐付けるスモールステップ方式で、無意識に続けられる状態を目指します。目標設定は医療者が押し付けるのではなく、患者自身の価値観や生活に沿った協働目標設定が原則で、評価も結果だけでなく過程(努力・工夫・継続)を重視し、成功体験に光を当てることで自己効力感を高めます。バンデューラの自己効力感理論やプロチャスカの行動変容ステージモデル、近年の動機づけ面接などの理論的枠組みを背景に、看護師は患者の心理社会的背景を把握しながら長期的な伴走者としての役割を果たします。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:慢性疾患をもつ成人の自己管理を促進する援助はどれか。
解説:正解は 1 の行動の習慣化を促す、である。慢性疾患は完治が困難で長期にわたる自己管理が必要となるため、必要な療養行動を日常生活の中に自然に組み込み、意識せずとも継続できる『習慣』にすることがセルフマネジメントの要となる。習慣化は無理なく続けられる最小単位の行動を反復することから始める。
選択肢考察
-
○ 1. 行動の習慣化を促す。
長期に及ぶ療養行動を継続可能にするために、日課に組み込んで自動化することが有効。食後の血糖測定、起床後の血圧測定、決まった時刻の服薬など、既存の生活動線に結び付けると定着しやすい。
-
× 2. 医療者が患者の目標を設定する。
目標は患者自身が主体的に設定することで、達成動機と自己効力感が高まる。医療者は助言と情報提供の立場で、患者と共同で目標を作る『協働目標設定(shared goal setting)』が望ましい。
-
× 3. 結果を優先して評価することを促す。
慢性疾患では血糖値やHbA1cなどの結果指標だけで評価すると、努力しても結果が出ない時期に挫折を招く。過程(努力・工夫・継続)を評価することで動機を維持しやすい。
-
× 4. うまくいかない行動に目を向けるよう促す。
失敗に注目すると自己効力感が低下し、行動継続が困難になる。むしろ成功体験や小さな前進に注目してフィードバックすることで自己効力感が育ち、セルフマネジメント行動が促進される。
慢性疾患セルフマネジメントの代表的モデルに、ローレン・コーガンらのchronic care model、バンデューラの自己効力感理論、プロチャスカのトランスセオレティカルモデル(前熟考期‐熟考期‐準備期‐実行期‐維持期)がある。看護師は患者の変容ステージに合わせて関わりを変える。ストレス・抑うつ・家族関係など心理社会的要因の評価も必須。動機づけ面接(motivational interviewing)も近年重視される手法。
慢性疾患の自己管理支援の基本原則を問う。長期継続のための習慣化、患者主体の目標設定、成功体験と過程の評価、がキーワード。
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