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術前指導の優先順位を整理しよう

看護師国家試験 第110回 午前 第91問 / 成人看護学 / 周術期看護

国試問題にチャレンジ

110回 午前 第91問

Aさん( 43歳、女性)は夫と2人暮らし。身長150cm、体重98kg。既往歴はない。先日、庭で転倒し右腓骨を骨折し、膝関節から足関節までのギプス固定をしている。来週、プレート固定術を受けることになっており、本日は夫と一緒に術前オリエンテーションに来院した。来院時のAさんのバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧138/80mmHgであった。夫によると「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」と言う。 手術までの自宅でのAさんの過ごし方で、優先して指導すべき内容はどれか。

  1. 1.食事制限
  2. 2.足趾の運動
  3. 3.ベッド上安静
  4. 4.体位変換の方法

対話形式の解説

博士 博士

ふむ、Aさんは右腓骨骨折でギプス固定中、しかもBMIは40を超えておるのじゃ。

サクラ サクラ

かなり肥満傾向ですね。動きにくそうです。

博士 博士

そこで看護師として、手術までの1週間をどう過ごしてもらうかが問われておる。

サクラ サクラ

食事制限はどうでしょう?体重が気になります。

博士 博士

長期的には必要じゃが、1週間では効果が薄い上に栄養状態を悪くする恐れがあるのじゃ。

サクラ サクラ

では足趾の運動は?

博士 博士

それが正解じゃ。ギプスをしていても足趾は動かせるからの。

サクラ サクラ

足趾を動かすと何が良いのですか?

博士 博士

ふくらはぎの筋ポンプが働き、下肢の静脈血が心臓に戻りやすくなるのじゃ。

サクラ サクラ

肥満とギプスで血栓リスクが高いから、予防が重要なんですね。

博士 博士

そのとおり。深部静脈血栓症から肺塞栓症に至れば命に関わるぞ。

サクラ サクラ

ベッド上安静は逆効果ということですか?

博士 博士

そうじゃ、過度の安静はむしろ血栓や廃用症候群を招くのじゃ。

サクラ サクラ

体位変換の方法は必要ですか?

博士 博士

上半身は自由に動かせるから、今の段階では必須ではないのう。

POINT

本問は整形外科の周術期における術前指導の優先順位を問うています。ギプス固定と高度肥満の組み合わせは深部静脈血栓症のハイリスクであり、足趾の自動運動によって筋ポンプ作用を維持することが最優先の介入となります。食事制限は長期的な課題、ベッド上安静や体位変換指導は臨床的に不要であるという点まで理解しておきましょう。睡眠時無呼吸の情報も、麻酔管理上重要な申し送り事項です。

解答・解説

正解は 2 です

問題文:Aさん( 43歳、女性)は夫と2人暮らし。身長150cm、体重98kg。既往歴はない。先日、庭で転倒し右腓骨を骨折し、膝関節から足関節までのギプス固定をしている。来週、プレート固定術を受けることになっており、本日は夫と一緒に術前オリエンテーションに来院した。来院時のAさんのバイタルサインは、体温36.8℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧138/80mmHgであった。夫によると「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」と言う。 手術までの自宅でのAさんの過ごし方で、優先して指導すべき内容はどれか。

解説:正解は2の「足趾の運動」です。Aさんは右腓骨骨折により膝から足関節までギプス固定されており、活動量の低下が避けられない状態です。さらに身長150cm・体重98kg(BMI約43.6)と高度肥満があり、下肢の静脈還流が滞りやすく深部静脈血栓症のリスクが高い人物像といえます。ギプス固定下でも足趾は自由に動かせるため、術前から足趾運動を促すことで下腿の筋ポンプ作用を維持し、血栓形成と筋萎縮の双方を予防することができます。術後早期離床へのつなぎとしても重要な指導です。

選択肢考察

  1. × 1.  食事制限

    BMI約43.6と高度肥満であり長期的には減量指導が必要ですが、手術まで1週間しかなく、急な食事制限で大きな体重変化は見込めません。むしろ急激なカロリー制限は創傷治癒に必要な栄養状態を損なう恐れもあり、術直前の優先指導としては不適切です。

  2. 2.  足趾の運動

    ギプス固定と肥満により下肢の血流が停滞しやすく、深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症のハイリスク状態です。足趾の底背屈運動は下腿三頭筋のポンプ作用を促し血栓を予防するとともに、筋萎縮・関節拘縮を抑制します。術後の回復を円滑にする上でも術前から習慣化すべき最優先の指導です。

  3. × 3.  ベッド上安静

    腓骨はギプスで外固定されており、安静を強いる必要はありません。逆に過度の臥床は血栓症・廃用性筋萎縮・褥瘡など合併症を助長します。松葉杖などを用い、体重をかけない範囲で活動してもらう方が望ましい対応です。

  4. × 4.  体位変換の方法

    ギプス固定されているのは下肢のみで、上肢・体幹は自由に動かせるため自力での体位変換は可能です。寝たきりの患者に対する指導内容であり、本症例には該当しません。

整形外科領域の深部静脈血栓症予防は、肥満・長時間同一体位・下肢固定が揃うと急にリスクが上がります。足趾・足関節の自動運動、弾性ストッキング、十分な水分摂取がセットで指導されます。また、Aさんには睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われる所見があり、全身麻酔導入時の気道管理にも関わるため、術前に医師・麻酔科へ情報共有することも大切です。

ギプス固定中の肥満患者における、術前の合併症予防指導の優先度を問う問題です。血栓予防と筋萎縮予防の観点から、今すぐできる運動指導を選び取る思考力が求められます。