ギプス後のしびれ―見逃せないコンパートメント症候群のサイン
看護師国家試験 第106回 午前 第94問 / 成人看護学 / 感覚器・運動器系
国試問題にチャレンジ
Aさん(25歳、男性)は、オートバイの単独事故による交通外傷で救急病院に入院した。外傷部位は左上下肢で、左脛骨骨折( left tibial fracture )に対しては長下肢ギプス固定をした。左前腕部は不全切断で、再接着術が行われた。 入院後3日、左足趾のしびれと足背の疼痛を訴えた。看護師の観察で適切なのはどれか。2つ選べ。
- 1.膝窩動脈を触知する。
- 2.足背の皮膚色を観察する。
- 3.足趾の屈伸運動が可能か確認する。
- 4.Volkmann〈フォルクマン〉拘縮の有無を確認する。
- 5.ギプスを数cmカットして浮腫の有無を確認する。
対話形式の解説
博士
今回はバイク事故で左脛骨骨折と左前腕不全切断を負った25歳男性Aさんの事例じゃ。入院3日目に左足趾のしびれと足背の疼痛を訴えた…ここで何を疑うかじゃな。
アユム
ギプスの中で何か起きてる感じがしますね。腫れ?
博士
良い直感じゃ。ギプス固定後の手足で疼痛・しびれ・冷感・蒼白などが出たら、まずコンパートメント症候群を疑うのじゃ。
アユム
コンパートメント症候群って?
博士
筋肉は骨と筋膜に囲まれた「区画(コンパートメント)」に分かれておる。出血や浮腫で内圧が上がると、血流が途絶え、筋や神経が壊死する。時間との戦いじゃよ。
アユム
こわい…。観察のポイントはありますか?
博士
「5P」で覚えるんじゃ。Pain(疼痛)、Pallor(蒼白)、Paresthesia(しびれ)、Paralysis(麻痺)、Pulselessness(脈拍消失)。
アユム
なるほど!だから選択肢2の足背の皮膚色(Pallor)と3の屈伸運動(Paralysis評価)が正解なんですね。
博士
その通り。末梢循環と神経機能をセットで見るのが基本じゃ。
アユム
1の膝窩動脈はダメなんですか?
博士
Aさんは長下肢ギプスじゃから、大腿から足先まで覆われている。膝窩動脈はギプスの中にあって触知できんぞ。
アユム
確かに…触れないですよね。じゃあ足背動脈か後脛骨動脈ですね。
博士
正解。ギプスから露出している部分で評価する。
アユム
4のフォルクマン拘縮は?
博士
これは上腕骨顆上骨折などの上肢外傷で起こる、前腕屈筋群コンパートメント症候群の後遺症なんじゃ。下腿の骨折ではなく上肢の問題。
アユム
5のギプスを数cmカットするというのは?
博士
状況によってはギプス割りが必要になるが、看護師が独断で行うものではなく医師の判断で実施する。まずは観察が先じゃよ。
アユム
浮腫は他に見る方法は?
博士
足背や足趾、大腿など露出部で視診・触診で十分評価できる。爪の色やCRT(capillary refill time、2秒以内が正常)も有用じゃ。
アユム
しびれが出ても「しばらく様子を見る」ではダメなんですね。
博士
その通り。発症から6〜8時間の治療が転帰を決める。筋膜切開が必要になるから、看護師の迅速な報告が患者の予後を左右するのじゃ。
アユム
5Pをしっかり覚えます!
POINT
ギプス固定後の末梢循環・神経障害の観察は臨床現場で頻出のテーマであり、看護師の観察力が患者の予後を左右する。コンパートメント症候群は筋区画内圧上昇により筋・神経が虚血に陥る緊急疾患で、5P(疼痛・蒼白・しびれ・麻痺・脈拍消失)を指標に早期発見することが重要である。長下肢ギプスでは露出部の足背・足趾の皮膚色、足趾の自動運動、足背動脈触知が基本の観察項目となる。フォルクマン拘縮は上肢のコンパートメント症候群後の阻血性拘縮であり本事例とは部位が異なる。看護師は5Pを軸にアセスメントし、異常を感知したら直ちに医師へ報告する姿勢が求められる。
解答・解説
正解は 2 ・ 3 です
問題文:Aさん(25歳、男性)は、オートバイの単独事故による交通外傷で救急病院に入院した。外傷部位は左上下肢で、左脛骨骨折( left tibial fracture )に対しては長下肢ギプス固定をした。左前腕部は不全切断で、再接着術が行われた。 入院後3日、左足趾のしびれと足背の疼痛を訴えた。看護師の観察で適切なのはどれか。2つ選べ。
解説:正解は 2 と 5 です。ギプス固定後に末梢のしびれや疼痛が出現した場合は、ギプス内圧上昇による循環障害や神経圧迫、さらには区画(コンパートメント)症候群を強く疑わなければならない。観察すべきは末梢循環と神経機能であり、古典的に「5P」あるいは「6P」として知られる。Pain(疼痛)、Pallor(蒼白)、Paresthesia(知覚異常)、Paralysis(運動麻痺)、Pulselessness(脈拍消失)が重要で、足背の皮膚色(選択肢2)と足趾の屈伸運動(選択肢3)を確認することは末梢循環と神経・運動機能の評価として適切である。放置すれば不可逆的な阻血性壊死や神経障害に至るため、早期発見が鍵となる。
選択肢考察
-
× 1. 膝窩動脈を触知する。
長下肢ギプスは大腿から足趾までを覆うため、膝窩動脈はギプス内にあり触知できない。末梢循環の評価は足背動脈や後脛骨動脈など、ギプスから露出している部位の動脈で行う。
-
○ 2. 足背の皮膚色を観察する。
ギプス末端の足背や足趾は皮膚色で末梢循環を評価できる。蒼白やチアノーゼは動脈血流障害を、暗赤色は静脈還流障害を示唆する。5Pの一つで、簡便かつ重要な観察項目である。
-
○ 3. 足趾の屈伸運動が可能か確認する。
足趾の自動運動ができるかは運動神経・末梢循環の評価となる。屈伸時の激痛や運動麻痺はコンパートメント症候群や神経圧迫の重要なサイン。しびれ訴えのあるAさんでは必須の観察。
-
× 4. Volkmann〈フォルクマン〉拘縮の有無を確認する。
フォルクマン拘縮は上腕骨顆上骨折など上肢の外傷後、前腕屈筋群のコンパートメント症候群が遷延化して生じる特有の阻血性拘縮である。Aさんの下腿骨折の合併症評価としては対象が異なる。
-
× 5. ギプスを数cmカットして浮腫の有無を確認する。
ギプスをカットすること自体は必要時に医師の判断で行うギプスカット(ウィンドウ/スプリット)だが、看護師が独断で判断することではない。浮腫の有無は露出部の足背・足趾で視診・触診すれば評価できるため、まずはそこを観察する。
ギプス固定後の観察は「5P」で覚える。Pain(不釣合いな強い疼痛)、Pallor(蒼白)、Paresthesia(しびれ)、Paralysis(麻痺)、Pulselessness(脈拍消失)。これらはコンパートメント症候群(区画症候群)の徴候であり、特に受傷後数時間〜数日で発症しやすい。下腿では前方区画(深腓骨神経支配)の障害が多く、足趾背屈障害や第1・2趾間のしびれが早期サインとなる。発症を疑えば直ちに医師に報告し、ギプス割り(スプリッティング)や筋膜切開を検討する。
ギプス固定後に末梢のしびれ・疼痛が出現した際の観察ポイントを問う問題。末梢循環・神経機能評価の基本(5P)と、看護師の裁量範囲を理解しているかがカギ。
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