存在しない手足が痛む?幻肢痛を理解する
看護師国家試験 第111回 午前 第49問 / 成人看護学 / 感覚器・運動器系
国試問題にチャレンジ
幻肢痛について正しいのはどれか。
- 1.術前から発症する。
- 2.抗うつ薬は禁忌である。
- 3.細菌感染が原因である。
- 4.切断し喪失した部位に生じる。
対話形式の解説
博士
今日は幻肢痛じゃ。四肢切断後に特有の神経障害性疼痛で、看護では見逃せないテーマじゃよ。
サクラ
幻肢痛って、実際には存在しない部分が痛むんですよね?
博士
そうじゃ。切断された手や足の部位に、灼熱感や電撃痛、締め付け感を感じる。患者にとっては実在する痛みなのじゃ。
サクラ
どうしてそんなことが起こるんですか?
博士
末梢神経の断端に神経腫が形成されることや、脊髄後角の感作、そして脳の体性感覚野が再構築される中枢性可塑性などが関与すると考えられておる。
サクラ
どれくらいの頻度で起こるんですか?
博士
切断患者の5~8割にみられるといわれ、決して稀ではない。
サクラ
正解はどれですか?
博士
4の『切断し喪失した部位に生じる』じゃ。幻肢痛の定義そのものじゃな。
サクラ
選択肢1の『術前から発症』は?
博士
誤りじゃ。幻肢痛はあくまで切断後に出現する。術前に存在する痛みは原疾患の痛みであって幻肢痛ではない。
サクラ
選択肢2の『抗うつ薬は禁忌』は?
博士
これも誤り。三環系抗うつ薬アミトリプチリンやSNRIのデュロキセチンは神経障害性疼痛の第一選択薬で、幻肢痛にも使われる。
サクラ
他の薬はありますか?
博士
ガバペンチンやプレガバリンなどのガバペンチノイド、場合によってはオピオイドも用いる。
サクラ
薬以外の治療は?
博士
ミラーセラピーが有名じゃ。鏡に健側を映し、切断側がまだあるように脳に錯覚させて痛みを和らげる方法じゃよ。
サクラ
選択肢3の『細菌感染が原因』は?
博士
誤りじゃ。感染は断端部の炎症痛を起こすが、それは幻肢痛とは別物じゃ。感染兆候があれば区別して対処する。
サクラ
幻肢痛と混同されやすい概念はありますか?
博士
『断端痛』は残った断端そのものの痛み、『幻肢覚』は切断肢がまだあるように感じるが痛みは伴わない感覚じゃ。三者は合併することもあるから評価時に整理するのじゃ。
サクラ
看護のポイントは?
博士
疼痛スケールでの経時評価、薬効モニタリング、ミラーセラピーなど非薬物療法の導入、心理的サポート、義肢装着への適応支援じゃ。
POINT
幻肢痛は四肢切断後に失われた部位に生じる神経障害性疼痛で、中枢・末梢両方の可塑性変化が関与します。治療には三環系抗うつ薬・SNRI・ガバペンチノイドなどの薬物療法、ミラーセラピー、神経ブロック、心理的支援が用いられます。術前鎮痛や早期義肢装着が予防に有効とされ、断端痛や幻肢覚との区別と総合的ケアが看護の鍵です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:幻肢痛について正しいのはどれか。
解説:正解は 4 です。幻肢痛は四肢切断後に、失われて存在しないはずの部位に灼熱感・電撃痛・締め付け感などの痛みを知覚する現象です。切断後の末梢神経断端形成(神経腫)、脊髄後角の感作、脳の体性感覚野の再構築(可塑性変化)など中枢・末梢両方の機序が関与するとされ、切断患者の5~8割に認められます。治療には薬物療法(ガバペンチノイド、三環系抗うつ薬、SNRI、オピオイドなど)、ミラーセラピー、神経ブロック、認知行動療法などが用いられます。
選択肢考察
-
× 1. 術前から発症する。
幻肢痛は四肢を失った後に、失われた部位に生じる痛みです。切断術前には存在しないため誤りです。
-
× 2. 抗うつ薬は禁忌である。
三環系抗うつ薬(アミトリプチリン等)やSNRI(デュロキセチン)は神経障害性疼痛に対する第一選択薬の一つで、幻肢痛にも有効性が示されています。禁忌ではありません。
-
× 3. 細菌感染が原因である。
幻肢痛は神経系の可塑性変化に基づく神経障害性疼痛で、感染は直接の原因ではありません。感染があれば断端部の炎症痛として区別します。
-
○ 4. 切断し喪失した部位に生じる。
存在しないはずの切断部位に痛みを感じるのが幻肢痛の定義です。灼熱感や電撃痛、締め付け感などと表現され、これが正解です。
類似概念として、切断部位の断端そのものが痛む『断端痛』、切断肢がまだあるように感じる『幻肢覚』があります。三者は並存することも多く、区別して評価します。術前の疼痛コントロール(preemptive analgesia)、断端ケア、早期義肢装着、ミラーセラピー、社会的・心理的サポートが予防と軽減に寄与します。
幻肢痛の定義(切断後に喪失部位に生じる神経障害性疼痛)と、抗うつ薬が治療に用いられることを理解しているかを問う問題です。
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