球麻痺のあるALS患者への食事指導、頸部前屈位がカギ
看護師国家試験 第103回 午前 第75問 / 地域・在宅看護論 / 症状・疾患・治療に応じた看護
国試問題にチャレンジ
Aさん(45歳、女性)は、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)〈ALS〉のため自宅で療養中である。Aさんは球麻痺症状が出現したため、経口摂取に加え、胃瘻による経管経腸栄養管理が開始された。 訪問看護師が行うAさんとAさんの家族への指導で適切なのはどれか。
- 1.水分は経口による摂取を勧める。
- 2.注入時間に生活パターンを合わせる。
- 3.経口摂取中の体位は頸部前屈位とする。
- 4.胃瘻からの半固形化栄養剤の使用は禁止する。
対話形式の解説
博士
今日は45歳女性のALS患者Aさんじゃ。球麻痺症状が出現して胃瘻による経管栄養が始まった事例じゃな。
サクラ
球麻痺ってよく聞きますが、具体的には何が起こっているんですか?
博士
延髄にある舌咽神経・迷走神経・舌下神経の運動核が障害される状態じゃ。延髄が球状なので「球麻痺」と呼ばれる。舌・咽頭・喉頭の運動が障害されて嚥下障害と構音障害が中心症状になる。
サクラ
胃瘻が入っても経口摂取は続けるんですね。
博士
そう、QOLの観点で「口から食べる楽しみ」は重要じゃ。安全に食べる工夫が看護の腕の見せ所じゃな。
サクラ
選択肢1の水分は経口で、というのはどうですか?
博士
水分は最も誤嚥しやすい形態で、球麻痺患者には危険じゃ。とろみを付けるか胃瘻からの注水が原則じゃの。
サクラ
2の注入時間に生活パターンを合わせる、は逆ですよね?
博士
その通り、逆じゃ。生活リズムに注入時間を合わせるのが基本で、本人のQOLを尊重するんじゃ。
サクラ
じゃあ3の頸部前屈位が正解ですね。
博士
ええ。顎を引くと喉頭口が狭まり、嚥下時に喉頭蓋が喉頭口を覆いやすくなって誤嚥が物理的に防げる。逆に顎を上げると喉頭口が開いて気道に流れやすくなる。
サクラ
頸部前屈位=喉頭蓋が気道に蓋をしやすくなる、と覚えればいいんですね。
博士
その通りじゃ。プラスして「とろみ調整」「一口量を少なく」「食後の座位保持」も基本セットじゃぞ。
サクラ
選択肢4の半固形化栄養剤の禁止、というのは?
博士
誤りじゃ。半固形化栄養剤は胃食道逆流予防、漏れ防止、下痢予防、注入時間短縮など利点が多く、標準的に使われておる。
サクラ
ALS療養者の食事ケアは「安全第一+QOL維持」のバランスなんですね。
博士
見事に要約じゃ。頸部前屈位を基軸に、家族にも姿勢の作り方を丁寧に指導することがポイントじゃよ。
POINT
球麻痺症状のあるALS患者では誤嚥リスクが高く、経口摂取時の頸部前屈位が誤嚥予防の基本です。顎を引く姿勢は喉頭口を狭め、喉頭蓋が気道を覆いやすくして食塊の気道侵入を防ぎます。水分はとろみ付与か胃瘻注水とし、注入時間は生活パターンに合わせ、半固形化栄養剤も標準的に使用されます。安全とQOL維持を両立する指導が看護のポイントです。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:Aさん(45歳、女性)は、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)〈ALS〉のため自宅で療養中である。Aさんは球麻痺症状が出現したため、経口摂取に加え、胃瘻による経管経腸栄養管理が開始された。 訪問看護師が行うAさんとAさんの家族への指導で適切なのはどれか。
解説:正解は 3 です。球麻痺は延髄の運動神経核(舌咽神経・迷走神経・舌下神経)の障害により、舌・咽頭・喉頭の運動が障害される状態で、嚥下障害・構音障害が中心症状です。球麻痺症状のあるALS患者の経口摂取では誤嚥リスクが高いため、頸部前屈位(顎を引いた姿勢)が基本となります。この体位では喉頭口が狭くなり、嚥下時に喉頭蓋が喉頭口を覆いやすく、食塊の気道侵入が物理的に防がれます。逆に顎を上げると喉頭口が開いて誤嚥しやすくなります。胃瘻併用下でも経口摂取はQOL維持の観点で重要であり、姿勢調整・とろみ付与・少量ずつの摂取で安全に楽しんでもらう指導が看護のポイントです。
選択肢考察
-
× 1. 水分は経口による摂取を勧める。
誤り。水分はサラサラで気道に流れ込みやすく、球麻痺患者では最も誤嚥しやすい形態です。経口摂取するならとろみを付け、原則は胃瘻からの注水を中心とします。
-
× 2. 注入時間に生活パターンを合わせる。
誤り。逆で、生活パターンに合わせて注入時間を設定するのが原則です。本人のリズム・QOLを尊重して食事時間に合わせる方が望ましいです。
-
○ 3. 経口摂取中の体位は頸部前屈位とする。
正しい。頸部前屈位は喉頭口を狭め、喉頭蓋による気道閉鎖を助けるため誤嚥予防に有効です。球麻痺症状のあるAさんの経口摂取では基本姿勢となります。
-
× 4. 胃瘻からの半固形化栄養剤の使用は禁止する。
誤り。半固形化栄養剤は胃食道逆流予防、漏れ防止、下痢予防、注入時間短縮などの利点があり、胃瘻からの投与は標準的に行われています。禁止すべきものではありません。
球麻痺の「球」は延髄を指し、外観が球状であることに由来します。ALSの嚥下障害ケアでは、頸部前屈位+とろみ調整+一口量を少なく+食後の口腔ケアと座位保持が基本セットです。半固形化栄養剤は短時間注入が可能で、長時間の体位制限を避けられるため褥瘡予防にも寄与します。
ALSの球麻痺による嚥下障害患者への安全な経口摂取と胃瘻栄養管理の知識を問う問題です。
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